表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
時空魔法と情報魔法編
14/438

011.カブとベーコンのコンソメスープ

 エレナ姫の回復魔法のお陰で、しばらくしてシスターが目を覚ました。


「うーん……

 あれ? 私はどうして…あなた達はどなたですか?」


「ああ、まだ起き上がらないで下さい。

 魔法で病気を軽くしているだけで、まだ治ってはいないのですから」


「もしかして、魔法師さんなのですか。

 申し訳ありません、私達には、魔法師さんにお渡し出来るお金がありませんので……」

「気にしなくていいよ、俺とエレナは、好きでやってるだけだから」

「申し訳ありません」


 シスターさんは、謝ってばかりだった。


「アリア、パン買ってきたよ、食べて」

「ミーニャ、ありがとう」


 シスターの名前は『アリア』、ネコミミの女の子は『ミーニャ』というらしい。

 アリアさんはミーニャの買ってきたパンを食べようとしたのだが、一口食べた所で咳き込んでしまった。


「大丈夫かい?」


 俺は、インベントリから小さいペットボトルのミネラルウォーターを取り出し―

 キャップを開けて、アリアさんに飲ませてあげた。


「ありがとうございます。

 あれ? この瓶は、ずいぶん軽いのですね」

「まあな、俺の故郷の物なんだ」


「アリア、ごめんねパン硬かった?」

「ごめんね、喉が痛くって」


 どうやらアリアさんは、喉を痛めたせいで、パンが硬くて食べられないようだ。


「ちょっと待ちな、俺がなにか作って来てやる。台所はどこだ?」

「おじさんが作ってくれるの?」

「おいおい、微妙なお年頃なんだから『おじさん』はやめてくれよ」

「じゃあ、お兄さん」

「まあいいか、喉が痛いなら、スープとかのほうがいいか。ミーニャだっけ? 台所に案内してくれ」

「うん」

「それじゃ、俺はちょっと料理を作ってくるから、エレナはアリアさんの事を見ててくれ」

「はい、わかりました」


 俺はミーニャに案内されて、台所にやって来た。


「ここだよ、何を作るの?」

「そうだなー」


 台所を見渡してみたが、買い置きの食料などは無いみたいだ。そりゃあ、泥棒をしてまでパンを買わないといけないくらいだし、苦労をしているのだろう。

 俺はインベントリの中を調べて、スープの材料になりそうな物を探した。


「【カブ】のスープにするか」

「かぶ?」

「おいしいぞ~」


 【カブ】はスーパーで特売だったので、思わず買ってしまったものだ。調理器具も全部インベントリに入れておいたので、一通り揃っている。

 カブ、コンソメスープ、ベーコン、塩、コショウ、植物油と、なべ、まな板、包丁をインベントリから取り出して、テーブルに並べた。


「これが『かぶ』? 初めて見た」


 ミーニャが知らないってことは、この世界に【カブ】はないのかな?

 かまどを確認してみると、薪で火を付けないといけないらしい。俺は、インベントリからライターを取り出した。


「それなあに?」

「これか? これはライターって言って、火をつける道具だ」

「魔道具なの?」

「まどうぐ? まあそんなところだ」


 この世界には、魔法を使った道具もあるのかな?

 俺は、ライターで小枝に火をつけ、薪に燃え移らせていった。


 最初にカブとベーコンを刻んでおき、ナベに油を引いて刻んだベーコンを炒める。ある程度火が通ったら、炒めたベーコンの上から水、コンソメスープ、刻んだカブを投入し沸騰させる。アクを取りながら、カブが柔らかくなるまで煮込んだら、塩コショウで味を整えて完成だ。病人用なので、味は少し薄めにしておいた。

 ナベをアリアさんのいる部屋まで運んで、テーブルにスープ皿を出してスープを注ぐと、部屋にコンソメのいい香りが広がった。スープ皿は、この教会にあった木製の皿だ。


「美味しそうな香りですね」

「起きられそうか?」

「はい」


 俺はアリアさんに肩を貸して、テーブルまでエスコートした。


「なんて美味しそうな香りなんでしょう!

 こんな親切にしてもらって、何とお礼を言ったらいいか……」

「そんなのは後でいいから、冷めないうちに飲みな」

「はい」


 アリアさんは、スプーンでスープをひとすくいして口に運んだ。


「なんて美味しいんでしょう!」


 アリアさんは、なんか涙を流していた。


「おい、泣くことはないだろ」

「すいません、あまりに美味しくて」


 アリアさんは、スープをどんどん口に運んで行った。


ぐー


 何か音がしたかと思ったら、子どもたちのお腹の音だった。


「みんなも、スープを飲むか?」

「「いいの!?」」

「まだいっぱいあるからいいぞ。ほら、皿を持ってきな」

「「うん!」」


 子どもたちは、皿を持って俺の前に並んだ。学校の給食係になった気分だ。

 俺は、子供たちの皿にスープをよそっていった。

 子供たちは大事そうに皿をテーブルに持って行き、わき目もふらずスプーンでスープを飲み始めた。


「「おいしー!」」


 どうやら、子供たちにも好評のようだ。

 ふと見ると、エレナがチラチラとこちらを見ている。俺は、インベントリからパン祭りでもらった皿を取り出し、スープをよそいで、スプーンと一緒にテーブルに置くと、エレナを呼んだ。


「ほら、エレナも飲みな」

「いいんですか?」

「いいに決まってるだろ」

「ありがとうございます!」


 俺も、別の皿を取り出して、エレナの隣りに座って、みんなでスープを味わった。適当に作った割に、けっこういい味になったな。

 しかし、スープだけだと腹にたまらないな。何かなかったかな?

 俺は、インベントリを探して、いいものを見つけた。


「みんな、これを食べるか?」


 俺は8枚切りの食パンを、二斤取り出した。


「それはなんですか?」

「パンだよ」

「四角いパン?」


 全員に食パンを2枚ずつ渡し、ミーニャが買ってきたパンは硬くてアリアさんは食べられないので、子供たちに1個ずつ、俺とエレナで半分ずつもらって、アリアさんには余っていた食パンをもう1枚、最後の1枚は4等分して子供たちにあげた。


「このパン、すごく柔らかくて美味しい!」

「それしか無いからゆっくり食べるんだぞ」

「「はーい」」


 みんな美味しそうに食事をして、みんなでスープもパンも残らず平らげた。


「ありがとうございます、美味しかったです」

「「おいしかったー」」

「とっても美味しかったです」


 アリアさん、子供たち、エレナも満足してくれたようだった。


「アリアさん、食べたあとは、これを飲みな」

「これはなんですか?」

「これは【薬】だよ、エレナの魔法でだいぶ良くなってきてるけど、念には念を入れて飲んでおくといい」

「ありがとうございます」


 まあ、ただの風邪薬だが、飲まないよりはいいだろう。


ご感想お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 盗んだ事に対して何も言わないし謝罪もさせないのか。 何をしても女だったら許してハーレム入れる感じ?
[一言] オートバイでキャンプに行くアウトドアマンですが オートバイでは紙パックの牛乳は買えないので、 ペットボトルに500mLに摘めて持って行きます! マッシュポテトもね!片栗粉は200mLに入れて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ