124.どっちが上?
『3つ目の条件は……
セイジ! お前だ!!』
な、なんだってーー!!
『魔王様、それはどういう意味ですか?』
『俺の部下になれ、と言っているんだ』
『……お断りします』
『なぜ断るのだ!
それに、通訳のお前が勝手に返事をするな、ちゃんと王に聞け』
『お断りします』
もう、面倒見切れん。
『通訳しないと言うのであれば、もう良い、
俺が直接話すまでだ』
なら、最初からそうしろよ!
「王よ、セイジを寄越せ」
「は? 魔王様、それはどういう事ですか?」
「セイジを俺の部下にするから寄越せというのが、3つ目の条件だ」
「……わ、分かりました、こんな者で良ければ、幾らでも差し上げます」
「おい! 俺のことを、俺抜きで勝手にやりとりしてるんじゃないよ!」
「セイジ、良いのか?
お前が俺の部下にならなければ、戦争だぞ?」
せっかくここまで、戦争にならないように努力してきたけど……
もう我慢の限界だ。
「もういいや。
戦争したいなら、勝手にやればいいだろ!」
「なん、だと? 国が滅んでもいいのか?」
「魔王様の仰るとおりにしろ。
セイジよ、我が国の存亡のため、犠牲となってくれ」
「王様、あんたバカ?
そんな話で、俺が納得するとでも思っているのか?
話しにならないので、俺は帰る。
安心しろ、エレナは俺が面倒を見てやるから、
お前たちは、勝手に戦争でもして滅べ」
『セイジ待て!
俺の命令に逆らって、生きて帰れると思うなよ!』
『俺を殺すというのか?』
『そうだ、殺されたくなければ、命令に従え』
『暴力で他人に言うことを聞かせようとするなら―
魔王、お前自身も、
暴力に負けたら言うことを聞くということだな?』
『なん、だと!?』
「セイジ、わしにも分かる言葉で話せ」
「お前は黙ってろ!」
「ひい!」
『もし、こう言われたらどうする?
おい、魔王!
殺されたくなければ俺の部下になれ。
断れば、魔族は皆殺しだ!』
『お前は、本当に死にたいらしいな……』
『お前もな』
魔王は、その場で、ゆっくりと真っ黒な刀を抜いた。
「ひい!!」
王様が、その場で腰を抜かしてしまった。
うるさいぞ。
俺は、【瞬間移動】で魔王の後ろに回り込み、
魔王の背中をタッチして、
そのまま、別の場所へと【瞬間移動】した。
~~~~~~~~~~
「は!? なんだこれは!?
ここは何処だ!?」
俺と魔王は、森の中の開けた場所に来ていた。
ここは、ゴブリンプリンスと戦った場所だ。
「魔王の負ける姿を他人に見せるのは、
流石に可愛そうだと思ってな」
「ほう、ここがお前の死に場所ということか」
「お前が無様に負ける場所だ」
口喧嘩はほどほどにして、戦いの準備をしないとな。
俺は、【魔力強化・クイック】を掛け、
魔王に【魔力強化・スロウ】を掛けた。
「おのれ、また何か魔法を掛けおったな!」
ん?
どんな魔法かまでは、わからないのか?
じゃあ、ついでに【鑑定】も掛けちゃえ。
「……」
「どうした、変な顔をして、
かかってこないのならこちらから行くぞ!」
【鑑定】したら、変な情報を得てしまった……
【刀術】レベル5。
これは、予想していたが、レベル5か~
【土の魔法】レベル3。
これも、戦いの最中に使っていたのを見たから、知ってた。
そして【???】レベル4。
これは予想外だ!
まさか魔王が、こんなのを持っているとは……
【鑑定】をあそこまで嫌がったのは、これのせいか。
きっと、これが魔王の、『切り札』なんだろうな~
使ってきた時に、驚いてあげたほうがいいのかな?
いや、まてよ! と言うことは……
あの時聞いた話は……
「なにを考えこんでいる!」
業を煮やした魔王は、大地を蹴って襲いかかってきた。
魔王の刀を避けると、衝撃で大地が少し割れていた。
ひー、【スロウ】掛けてなかったら、もっと凄かったんだろうな。
「おのれ、妙な魔法のせいで、動きが阻害される」
俺は、インベントリから【摸造刀】を取り出して構えた。
「なんだ、その偽物の刀は。
そんな玩具で、この俺と戦おうというのか!」
折角の機会だから、刀同士で戦ってみたいじゃん。
沈む夕日の赤に森が染まる中、
俺と魔王は、刀を構えて睨み合い。
合図されたかのように、同時に大地を蹴って―
衝突した!
魔族語とドレアドス共通語が飛び交って、変な感じになってしまった。
ご感想お待ちしております。




