121.金貨の重さ
俺は王様を、ライルゲバルトが待つ控室用のテントへと連れてきた。
「王様!?」
「ライルゲバルト!?」
「こんな瞬時に。
まさか、これほどの魔法だったとは……」
「ライルゲバルト、これはどういう事だ!
ちゃんと説明しろ!」
ライルゲバルトが王様に事情を説明中……
「そ、そ、それでは、わしが、
そ、その、魔王と、会談するのか!?」
「はい、そうしなければ、我々は滅ぼされてしまいます」
「もしものときは、お前が、わしを守ってくれるのだよな?」
「ムリです」
「なぜじゃ!」
「もしものときは、みんな殺されてしまいます」
「そ、そんな……」
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なんとか王様を説得?し、
俺達は、魔王様のもとへ。
魔王様との会談は、少人数で行われ、
魔族側は魔王様のみ、人族側は王様と俺だけだった。
『魔王様、この方が、人族の王です』
『こんな弱そうな奴が、王なのか!?』
王様らしくない事は、俺も同意する。
「おい、セイジ」
「何ですか、王様。魔王様の前ですよ」
「一つ確認なのだが……
我々が、ゴブリンとオークに騙されて、魔族に戦争を仕掛けようとしていた事は、バレていないのだな?」
「なんだと!?」
あれ?
今、魔王様が……
「おい、人族の王よ、今の発言は本当なのか!?」
魔王様が……
「あの~ 魔王様、
もしかして、ドレアドス共通語を話せるんですか?」
「ああ、その通りだ」
王様は、顔が真っ青になってしまっている。
「それなら、俺の通訳も要らなかったんじゃ?」
「なぜ魔王たるこの俺が、人族の言葉に合わせてやる必要がある! お前はちゃんと通訳をしておけ」
「は、はい」
これはまずい事になった!
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※以下は、わざわざセイジが、通訳をしています。
『人族の王よ、改めて聞くぞ。
お前たちは、魔族に対して、戦争を仕掛けようとしていたのだな?』
「そ、それは……
ゴブリンとオークに騙されて……」
『騙されたかどうかは、こちらに関係ない。
お前たちは、戦争の為に兵を集めた。そうだな?』
「しかし、実際にはゴブリンと戦って……」
『くどい!』
「は、はい、魔王様の仰る通り…で、ございます……」
王様、口調がへりくだってきてるぞ。
『ならば戦争だ!』
「そこは、なんとか水に流していただきたい……」
『ほう、水に流せと言うか』
「結果として、ゴブリンキングの討伐に成功したわけですし……」
『そのゴブリンキングは、誰が倒した?』
「それは…… 魔王様です……」
『人族の冒険者は、魔物を倒すと報奨金がもらえるそうだな?』
「は、はい」
『では、こうしよう。
ゴブリンキングを倒した報奨金、
我々が出兵に要した資金や労力に対する賠償、
我々に戦争を仕掛けようとした詫び、
これから出す3つの条件をクリア出来れば、今回の件を不問に付してやろう』
「わ、分かりました」
条件の中身を聞かずに、安易に了承して大丈夫なんだろうか?
『では、第一の条件は……
ゴブリンキングの報奨金、百万ゴールド。
我々が出兵に要した資金、百万ゴールド。
合わせて、二百万ゴールドを要求する』
「二百万!?
わ、分かりました。
なるべく早く用意いたしますので、お待ちください」
『期限は、今日の日没までだ』
「ふぁ!?
そ、それは、いくらなんでもムリだ!」
『そうか、ならば戦争だ』
どうやら魔王様、許す気が全く無いようだ。
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俺と王様は、ライルゲバルトの待つ控室用のテントに戻ってきた。
「王様、会談はどうでしたか?」
心配そうなライルゲバルトに、
王様は、うなだれながら答える。
「今日中に、二百万ゴールドを支払えと言われた」
「二百万!? それを今日中に!?
出兵してきている貴族たちが持ってきているゴールドを集めて……
いや、それでも二百万なんてとても……
もし、集められなかったらどうなるのですか?」
「戦争だそうだ」
「そ、そんな……」
「まあ、魔王様は許す気がないんだろうな」
「セイジ、貴様! 無責任な事を言うな!
お前も、どうすればいいか考えろ!」
なんで、俺も考えなくちゃいけないんだよ。
めんどくさいなー
「えーと、二百万ゴールドなら持ってるぞ」
「は!? 持ってる? どういう事だ?」
俺は、レジャーシートを出して、地面に敷き、
インベントリから2万枚の100ゴールド金貨を取り出してみせた。
1枚200グラム程の金貨が2万枚なので、総重量4トンにもなる。
あまりの重量により、地面が凹みそうになったので、急いで土の魔法を使って地面を固めた。
「ど、どこから出した!?」
「魔法だ」
「そんな事より、これで戦争を回避できるぞ」
「ちょっと待てよ、これは俺の金だぞ!」
「国の危機だというのに何を言うか!」
「俺の国じゃないだろ!」
「そ、それは、そうだが……」
「この金で、俺が国を救ったら、
国は、俺に何をしてくれる?」
「そ、そうだな…… 貴族の称号を……」
「そんなの、いらん!」
「で、では、何が望みだ?」
「じゃあ、エレナでも貰うか」
「な、なんだと!?」
「冗談だ」
まあ、もう貰っちゃった様なもんだがな!
「後で2倍にして返してくれ。期限は30日で」
「わ、わかった……」
30日で200万ゴールドとは、ボロ儲けだ。
その後、ライルゲバルトに頼んで、200人の兵士に木箱を200箱ほど運んで来てもらい。
1箱に100枚ずつ金貨を入れて、魔王様の所へ運んでもらった。
1枚200gの金貨が100枚で、一箱20kg。
2リットルのペットボトル10本と同じ重さだ。
かなりの重労働になってしまった。
兵士の皆さんご苦労様でした。
しかし、この金貨、通貨として不便すぎないか?
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『魔王様、二百万ゴールド、確かに用意いたしました」
『ほう、本当に二百万ゴールドを持ってくるとはな……』
驚きとあきれ顔の混ざった表情で、俺達を見ていた魔王様だったが―
ニヤリと、意地悪そうな顔をして。
『次の条件は……』
魔王様は、また変な条件を突きつけてきた。
せっかく貯めた金が……
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