009.城下町
俺は、エレナを連れて城下町の噴水広場に【瞬間移動】して来た。
「着いたよ」
「す、すごいです。もう、お城の外なんですね」
エレナは、周りをキョロキョロと見回していた。周りの人たちも、俺たちがいきなり現れたのに驚いて注目している。
俺はエレナの手をとって、大通りを歩き始めた。
「セイジ様、急にどうしたのですか?」
「だいぶ注目されてたみたいだったから」
「あ、私は誘拐されたんでした。目立っちゃダメなんですよね」
「そうそう」
エレナは何故か、クスクス笑い始めた。
「何がそんなにおかしいんだい?」
「だって、私がセイジ様に、誘拐されちゃうなんて。なんだか可笑しくって・・クスクス」
エレナがそんな風に笑ってるのを見て、俺もなんだか可笑しくなってきてしまった。
俺とエレナは、しばらくの間クスクス笑いながら、手を取り合って大通りを歩いていた。
大通りは大勢の人たちが行きかい、たまにネコミミの人なんかも混じっていた。やはり、そういう人も居るのか~
「おっといけない、宿屋を探さないと行けなかったんだ」
「そういえば、そうでした」
「エレナは宿屋が何処にあるか、知ってたりしない?」
「すいません、わかりません。あ、私、誰かに聞いてきますね」
エレナはそう言うと、屋台で野菜を売っていたおばさんに、宿屋の場所を聞いていた。屋台のおばさんは、エレナの気品あるしゃべり方や仕草に、面食らっている見たいだった。
「宿屋は、あちらにあるそうです」
俺はエレナに案内されて、宿屋に向かった。
「ここが宿屋みたいです」
二人で宿屋に着いたところで、俺は重大なことに気がついた。
「そういえば俺、この国のお金持ってないや。エレナは、お金どれくらい持ってる?」
「すいません、私もお金は持ってないです」
「困ったな、何か物を売ってお金に出来ないかな?」
「私、誰かに聞いてきます」
エレナは、近くを歩いていたおじさんに、いきなり話しかけ、何かを聞き出していた。
「あちらに、商人ギルドがあるそうです」
「エレナ、いろいろありがとね」
「いえいえ」
エレナはニッコリ微笑みながら、俺を商人ギルドまで案内してくれた。
「ここが、商人ギルドみたいです」
なんか木造の銀行みたいな感じの建物だった。取り敢えず入ってみるか。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件ですか?」
「こちらで、品物を買い取って貰えると聞いて、寄らせてもらいました」
「でしたら、まずは登録をお願いします」
俺達は、窓口に案内されて登録を行うことになった。
「いらっしいませ、ようこそ商人ギルドへ。ギルドへの登録手続きですね。こちらに記入をお願いします」
巨乳のお姉さんが、営業スマイルでお出迎えしてくれた。登録手続きを終わらせ、俺はどんなものを買い取ってくれるのか質問してみた。
「現在、【塩】が品不足ですので、もしお持ちでしたら高く買い取らせて頂いております」
「【塩】か、それならちょうど持ってる」
俺は、受付のお姉さんから見えないように、インベントリからスーパーで買った【塩】を取り出し、台の上に置いた。
「こ、これが【塩】ですか!?」
あれ? 何かまずかったかな?
「すいません、【鑑定士】を呼んでまいりますので、しばらくお待ちください」
お姉さんは、誰かを呼びに行ってしまった。
「この【塩】、何か変なのかな?」
俺は、エレナに聞いてみた。
「この【塩】は真っ白なんですね?」
「この国の【塩】は、白くないの?」
「私の見たことがある【塩】は、もうちょっと灰色っぽい感じで、もっとゴツゴツした感じでした」
「ああそうか、岩塩が普通なのか」
「あと、この袋は透明でキレイですね、何か魔法の術式のような物も描かれていますし、何の袋なんですか?」
「あ、そうか、ビニールなんて無いよね。あと、これは術式じゃなくて、俺の国の文字だよ」
「『びにーる』ですか…それはどんな生き物なんですか?」
「生き物じゃないよ、うーむ石油製品だってことは知ってるけど、どうやって作られているかまでは知らないや」
俺達がそんな会話をしていると、受付のお姉さんが上司らしき人を連れて戻ってきた。
「こ、これが【塩】!? し、失礼しました。それでは【鑑定】させていただきますので、こちらの小皿に少し出してもらえますか?」
俺はビニールの角に穴を開けて、【塩】を少しだけ小皿に出した。
「○△◇×…… 【鑑定】!」
あ、またこの魔法か。
「え、え、Sランク!?」
【鑑定士】さんは、驚いて後ろに倒れてしまった。俺とエレナは、何事かと顔を見合わせてしまった。
「し、失礼しました。え、Sランクの【塩】ですと、一度にこんな大量に買い取ることは出来ません」
【鑑定士】さんは、小さな小瓶を取り出し。
「この瓶に入る分でしたら、1万ゴールドで買い取りますが、どうなさいますか?」
「では、それでお願いします」
「わかりました。それでは失礼して、移し替えさせていただきます」
【鑑定士】さんはそう言うと、小さなスプーンを取り出し、【塩】をぷるぷる震える手で小瓶に移し替え始めた。
ものすごく慎重に移し替え作業が終わり、【鑑定士】さんは額に汗をびっしょりかいていた。
「それでは、こちらが1万ゴールドになります、お確かめ下さい」
差し出された袋の中には、金貨が100枚入っていた。金貨は、金メダルくらいの大きさがあり、『100』と書かれていた。1ゴールドがどれ位の価値か分からないけど、この100ゴールド金貨って、小さな商店でそのまま使えるのかな?
「すいません、この金貨を1枚だけ両替してもらえませんか?」
「はい、分かりました」
俺が100ゴールド金貨を1枚渡すと、『10』と書かれた銀貨を9枚、『1』と書かれた銅貨を10枚に交換してくれた。
【塩】をちょっと売っただけでお金も出来たし、俺はほくほく顔で商人ギルドを後にした。
商人ギルドを出るとき、ギルドの職員全員が並んでお見送りしてくれたけど、商人ギルドの接客って、だいぶやり過ぎなんじゃないだろうか?
商人ギルドを出て、今度こそ宿屋に向かおうとした時! なぜか【警戒】魔法が反応し、地図が表示されて、地図上に『黄色い点』が表示された。
ん? 『黄色い点』?
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