109.土のマナ結晶 ❏
翌日目が覚めると、アヤとエレナが、俺のベッドで抱き合って寝ていた。
アヤはそんなに人恋しかったのか?
まあ、慣れない東京で、数日とはいえ一人で過ごしたのだから、ある程度はしょうが無いか。
朝食の準備をしていると、アヤとエレナがやっと起き出してきた。
3人で朝食を食べながら、アヤが抜けた後の状況を説明した。
1.イケブの街へオーク襲来
今から考えてみると、これは後からくるゴブリンプリンス部隊の先遣隊だったと思われる。
戦力を分散させるとか、愚の骨頂だな。
2.シンジュの街で、スラム街の騒動
奴隷を助けた話をしたら、アヤに「なんで一人もらわなかったのか」と怒られてしまった。
人権擁護団体から抗議されるぞ!
3.スガの街に、ゴブリンとオークの混合部隊が襲来
今のところ、あの時のプリンスが一番手強かった。
ちゃんとオークも手なづけていたし、
隠し球に魔物玉まで使ってきたし。
4.イケブの街に、ゴブリン部隊が襲来
街の人達が安心できるように、街に駐留するリルラの部隊に、わざと活躍させた事が、面倒臭かったけど。
敵は、それほど強くなかった。
プリンスも力押しだけだったし。
最後に、ロンドがアヤに好意があるらしいと伝えたのだが……
「ロンドってだれだっけ?」
だそうだ。ロンド、どんまい。
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俺達は、準備を終え、【瞬間移動】でシンジュの街にやって来た。
ロンドのキャンプに着くと、すでにテントの片付けを始めていた。
「ようロンド、もう出陣するのか?」
「ああ、そうだ。お前も早く出陣の準備を……
あ、あ、アヤさん! こ、こんにちは」
ロンド、声が裏返っているぞ。
「あ、どうも」
おい、アヤ、もうちょっと何かあるだろう!
「ロンド、出発の前に『土のマナ結晶』に参拝したいのだが、いいか?」
「え、ああ、そうか。
急いで行って来てくれ」
~~~~~~~~~~
俺達は、ロンドの部下に案内されて、『土のマナ結晶』の所にやって来た。
ついに土魔法か、ネット小説とかだと土魔法はチートな事が多いから、楽しみだな。
俺達3人は、黄色く輝く土のマナ結晶に手を添えた。
マナ結晶から光が溢れだし、その光は、3人の体に入っていった。
やった! 3人共ゲットだ!
【鑑定】してみると―
アヤとエレナは、レベル1。
俺は、レベル3で【土の魔法】を習得していた。
「3人共、習得できたみたいだ」
「ほんと? 私はレベルいくつ?」
「アヤとエレナは、レベル1だ。
ちなみに俺は、レベル3だけどな」
「セイジ様すごいです!」
「なんで、兄ちゃんばっかり、いつもレベル高いの?」
「ちゃんと勉強してたからだよ」
「勉強か~」
「私も、もっと勉強したいです!」
土魔法の習得を大いに喜び。
俺は、魔法の詳細に関して確認した。
┌─<土の魔法>──
│【土コントロール】(レア度:★)
│ ・土をコントロール出来る。
│
│【石コントロール】(レア度:★★)
│ ・石をコントロール出来る。
│
│【鉱石コントロール】(レア度:★★★)
│ ・鉱石をコントロール出来る。
└─────────
なんじゃこりゃ!
コントロール系の魔法ばっかりじゃないか!
レベルが上がると、硬いものをコントロール出来るようになる感じか?
取り敢えず、今は魔法の試し撃ちをしている時間がないので、ロンドの所に戻ることにした。
~~~~~~~~~~
ロンドのキャンプに戻ると、兵士たちが慌ただしく荷造りをしていた。
ロンドは、それを見ながら、戻ってきた俺達に話しかけてきた。
「どうだった?」
「どうとは?」
「土の魔法は習得できたのか?」
「ああ、出来たよ」
「おお、それはおめでとう。
所で、誰が習得したんだ?」
「3人共習得できたよ」
「は? 3人共?」
こんなに驚かれるとは……
魔法を習得できる確率って、思ったより低いのかな?
ロンド部隊の出陣の準備が終わるまで、俺達は土魔法で色々と遊んでいた。
エレナは、キャンプの設営で出来ていた穴の埋め戻し作業を手伝い。
アヤは、土でダビデ像を作って遊んでいた。
「アヤさん、素晴らしいです!」
アヤのダビデ像を褒めちぎるロンドだったが、アヤはそんなロンドを鬱陶しそうに無視していた。
しばらくして、アヤがダビデ像の股間部分を作り始める前に、出陣の準備が完了した。
ロンドが、兵士たちに対して出陣の合図を出すと。
2000人ほどのロンド部隊は、少し急ぎ気味に進軍を開始した。
俺は、アヤ、エレナと別れて、魔法使い部隊の4人と一緒に歩いていた。
何故かロンドが、俺をアヤから遠ざけようとするのだ。なぜなんだろう?
魔法使い部隊は、奴隷の子に荷物を全部持たせて、手ぶらで歩いていた。
奴隷の子は、小さく痩せた体で、一所懸命に大きな荷物を運んでいた。
うーむ、見てられない……
「荷物半分持とうか?」
「い、いえ、これは、私の仕事ですので」
うーむ、どうしたものか。
ここは、リーダーのレイチェルに直談判してやる!
「おーい、レイチェルさん」
「なんだ、新入り」
「新入りか……
俺は、新入りなんだから、荷物を半分持とうか?」
「荷物なら、ヒルダが持ってるから気にするな」
そのヒルダが気になるから、持とうって言ってるんだけど?
「まあ、先輩方のお役に立ちたいな~と思って、持たせてくださいよ」
「まあ、別にいいぞ。変なやつだな」
俺は、ヒルダの持っていた荷物を8割方受け取ると、それを担いで歩き出した。
「ほう、新入りのくせに力持ちじゃないか」
「ういっす! お役に立つっす!」
俺が、元気よく歩いていると―
後ろから小さい声が聞こえた。
「あ、ありがとう、ございます」
地図を作ってみました。
大きすぎるようなら差し替えます。
ご感想お待ちしております。




