107.戦争の行方
仮眠から目が覚めると、もう昼だった。
リルラとエレナは、なぜか俺の部屋で、仲良くお茶をしていた。
ゴブリンキングに付けておいた追跡用ビーコンを確認すると、キングは更に南下していた。どこまで行くんだ?
「あ、セイジ様、おはようございます」
「セイジ、やっと起きたか、おはよう」
「ああ、おはよう」
なぜ俺の部屋に居るのかのという疑問はさておき。
俺は、二人にゴブリンキングの動向について、説明した。
「……というわけで。
ゴブリンキングは、イケブの街の西の森を、ぜっさん南下中なのだ。
二人はこの動きについて、どう思う?」
「もしかして、イケブの街を、西から襲うつもりでは!?」
「いや、それは無いだろう。
もうイケブの街を通り越してしまっている」
「セイジ様、もしかしてゴブリンキングは、魔族の街を目指しているのでは?」
「魔族の街?
確か、シンジュの街の西にあるんだっけ?
そうか、なるほど。
人族と魔族を戦わせて、その隙に両方の街を占領する作戦か」
「セイジ様、その事を魔族の方々に教えて差し上げれば、戦争は回避できるかもしれませんね」
それほど甘くはないとは思うけど、俺はエレナに頷いてみせた。
「よし、それじゃあ、俺達は戦争を止めに行くか」
「はい、セイジ様!」
俺は、エレナの手をとって【瞬間移動】を使用としたのだが。
「ま、待ってくれ。私も、連れて行ってくれ」
リルラは、真剣な目でそう言ってきた。
「だめだ」
「な、なぜだ、私が弱いからか?」
「リルラ、お前は十分強くなった。
だからこそ、この街を守っていてくれ」
「だがしかし、この街には兵士たちも居る。
私が居なくても十分街を守れる」
「リルラ。
街を守るというのは、魔物を退治することだけではない。
お前が居て、守ってくれているということが、この街の人々の心の支えになるんだ」
「街の者達などどうでもいい、私はお前を……
お前や、エレナ様やお父様を、守りたいんだ」
「いいか、よく聞け。
魔族やゴブリンキングとの戦いに出向いた時、『帰るべき街が、占領されるかもしれない』などと心配していたのでは、思う存分動くことが出来なくなってしまう。
しかし、リルラが守ってくれている。
その事が、この戦争に参加する全ての人たちにとって、心の支えになるんだ」
「私が、心の支え……」
「そうだ、街の人達だけじゃない、お前の父や他の貴族、兵士たち、冒険者たち、俺やエレナだって」「はい」
エレナも俺の話に頷いている。
「セイジやエレナ様も……」
「そうだ。守ってくれるか?」
「……分かった、私は、この街を守る」
「ありがとう」
リルラと、しっかり握手を交わし。
俺は、エレナと共に、シンジュの街へ【瞬間移動】した。
~~~~~~~~~~
シンジュの街に到着すると、街全体がピリピリしていた。
もうすぐ戦争が始まるのを、兵士たちが肌で感じているのだろう。
俺は、ゴブリンキングの動向を報告しに、ロンドの所へ向かった。
ロンドのキャンプに到着すると、顔パスでロンドの所へ案内してくれた。
ここでも、兵士たちが慌ただしく準備をしている。
「ロンド様、エレナ姫様とセイジ殿がお見えです」
「なに! よく来た、入ってくれ」
「ようロンド、ずいぶん慌ただしいな。そろそろ戦争が始まるのか?」
「ああ、もう出陣している所もある。俺達の所は、明日出陣だ」
「もうそんな状況なのか」
「ああ、お前は今まで何をしていたのだ?」
「スガとイケブの街を、守りに行っていた」
「守りに!? そ、それでどうなったんだ?」
俺は、スガとイケブの状況をロンドに説明した。
「リルラってあの、鉄壁のリルラか?」
「ああ、今じゃすっかりイケブの街の英雄だ」
「なるほど、あの街を鉄壁のリルラが守っているのなら、安心できるな」
「それで、本題なのだが?」
「本題? 今の話が本題ではなかったのか?」
「本題は、ゴブリンキングを見つけたので、その報告だ」
「なに!? ゴブリンキングを見つけただと!? その情報は、ライルゲバルト殿にも聞いていただかなければ!」
俺は、ロンドに急かされながら、ライルゲバルトの所へ案内された。
ライルゲバルトは、エイゾスの屋敷を徴収し、臨時の軍本部を設置していた。
「なに!? リルラがイケブの街を守った!?」
ライルゲバルトは、リルラが街を捨てて逃げてくるものと思っていたらしい。
「てか、本題はそれじゃなくて、ゴブリンキングの動向なのだが」
「なに!? ゴブリンキングだと!?」
何度も驚きすぎだよ。
「ゴブリンキングは、イケブの街の西の森を、南に向かって移動中だ。
エレナの話では、魔族の街に向かっているのではないか。と言う事らしい」
「なるほど、魔族が街を守りに後退した所を一気に攻めれば、かなりの戦力を削ることが出来そうだな」
「おいおい、魔族と本気で戦争するつもりなのか?」
「この好機を逃す手はないだろう?」
このオッサン、戦いのことしか考えていないらしい。
「ゴブリンキングが魔族の街を襲うと、決まったわけじゃない。
もし、ゴブリンキングと魔族が手を組んでいたら、どうするつもりだ?」
「そ、それはまずいな」
判断はライルゲバルトに任せることにして、俺達は軍本部を後にした。
「なあ、セイジ、お前はこの後どうするつもりだ?」
軍本部を出た所で、ロンドが話しかけてきた。
「冒険者ギルドに行って、志願兵になるつもりだ」
「なに? なぜわざわざ志願兵になるんだ?」
「土のマナ結晶を参拝したかったのだが、志願兵にならないと参拝できないと聞いてな」
「マナ結晶参拝は、俺の方で手配してやるから、俺の部隊に入らないか?」
なんか男に誘われるのは、若干嫌ではあるが…
俺は、少し考えて―
「場合によっては、勝手に動かせて貰う場合もあるが、それでもいいか?」
「ああ、それでいい」
「分かった、それじゃあ、よろしく頼む」
俺とロンドが握手をしていると、エレナが急に割り込んできた。
「私も、参加させて下さい!」
「え!?
エレナ様が戦争に参加するなど、とんでも無い!
エレナ様は、この街でお待ちになっていて下さい」
まあ、普通はそうだよな。
「いいえ!
今回、戦争に至った責任は、王族にあります。
私だけ安全な所で見ているなど、出来ません!」
ロンドの奴、エレナの真剣さに面食らっていやがる。
「……わかりました、エレナ様は私の側にいて下さい」
「俺は?」
「セイジは、魔法使い部隊に参加してくれ。
あそこなら、ある程度自由に動けるだろう」
「魔法使い部隊!?」
台詞の途中で改行を入れる事を、今回から、またやることにしました。
改行を入れないと、長いセリフが分かりづらすぎるので……
ご感想お待ちしております。




