095.大金と黄金
救出したリルラを、エレナに治療してもらっている間に、兵士に事情を聞いてみた。
どうやら、こんな流れだったらしい。
1.街の入り口に、1匹のオークが現れた。
2.リルラが突撃するも、オークは逃げ出す。
3.リルラが一人でオークを追って行き、見失う。
4.リルラ捜索中に、オークの大群と交戦になる。
5.オークの別働隊が街を攻撃しているとの知らせ。
6.街の入り口まで退却して、防衛戦に。
リルラは、オークの作戦に、まんまと乗せられたわけか。
部隊を指揮する者として、行動が軽率すぎませんか?
俺もそろそろ参戦しようか、と思っていた丁度その時!
最前線の兵士から、声が上がった。
「オークの増援だ!!」
まだ増えるのかよ!
「エレナ、俺はちょっと行ってくる。ここは任せた」
「はいセイジ様、お気をつけて」
「おうよ!」
最前線に到着すると―
200匹近いオークが、森から出て街に向かって来ていた。中にはハイオークの姿もちらほら見える。
流石にこれは無理だな。
俺は、さっさと諦めることにした。
何を諦めるかって? それは、能力を隠しておくことをだ。
「【魔力強化】、【雷精霊召喚】!」
そう叫ぶと、俺の体の中から、精霊が勢い良く飛び出してきた。
「やっと、あたいの出番か、待ちくたびれたよ。って、あれ? 何だかいつもより、魔力が強くなってる感じがする」
やはり、【魔力強化】は召喚にも影響があるようだ。
「またせたな」
「獲物はアレかい? 全部やっつけていいのか?」
「ああ、ヤッちまいな」
「おう!!」
精霊が勢い良く飛び出すのを確認した俺は、エレナの所まで戻って。
雷属性と音を遮断するバリアを、兵士たち全員を囲むように張った。
それは、バリアを張り終えたと同時だった。
辺りが真っ白になり、遅れて鼓膜を破りそうな爆音が鳴り響いた。音を遮断してたのに、音がバリアの外を迂回したのだろう。
オークの増援部隊は、全てこんがり焼きあがっていて、森の一部も燃えてしまっていた。
兵士と戦闘中だったオークも、爆心地から少し離れていたにも関わらず、気絶したり、しびれて動けなくなったりしていた。
『レベルが31に上がりました』
流石にアレだけ倒せば、レベルも上がるか。
味方の兵士達には、被害は出ていないものの、全員、唖然と立ち尽くしていた。
「いやー、スッとしたぜー」
精霊は、スッキリさわやかな笑顔で、俺の体の中に戻っていった。
「セイジ様! やるなら先に言って下さい」
「ご、ごめん」
エレナに怒られちゃった。(てへぺろ)
どうやら一瞬のこと過ぎて、何が起きたか兵士たちは誰も理解できなかったようだ。
森がメラメラと燃え始めてしまっていたので、【水の魔法】で消火活動をしていたら―
硬直から復活した兵士たちによって、残っていたオークは、キレイに退治されていた。
この隙に俺は、ハイオークと、あまり焦げていないオークを見繕って、インベントリに仕舞いこんでおいた。
ハイオーク×20匹と、オーク×100匹にもなったので、売れば結構な金額になるはず。
戦闘の音が止んで、しばらくして。街の人達が恐る恐る、様子を見に出てきていた。
そこで街の人達が見た光景は―
150匹近いオークの死体と、ボロボロになりながらも街を守りぬいた、『鉄壁のリルラ』と兵士たちだった。
特にリルラは、貴族連合騎士団長の娘という高貴な立場にありながら、最前線で戦い、ボロボロになりながらも、身を挺して街を守り切ったのだ。(ホントは違うけど)
やっと意識を取り戻したリルラと兵士たちは、街の人々に拍手と大喝采で迎えられた。
当のリルラはと言うと―
わけが分からず、目が点になりながら、パレード行進の歩を進めていた。
倒されたオークは、街の人々によって解体され、調理されて、そのまま戦勝パーティーが開催された。
俺とエレナは、ちょっとだけお相伴に預かり、腹ごしらえを済ませて―
人知れず、シンジュの街へ向かった。
~~~~~~~~~~
シンジュの街について俺達は、最初に商人ギルドに訪れた。
受付に行き、状況を確認してみると―
昨日の夜、また食料が盗まれ、食糧危機が更に深刻なものとなっているとのことだった。
そして、3倍だった食料品の買取価格は、5倍にまで膨れ上がっていた。
マッチポンプっぽくって気がひけるのだが、どうせ金を出すのは貴族達なので、新たに仕入れてきた食料品を売ってしまうことにした。
ギルド裏の倉庫に行くと、倉庫番のマッチョマンが、また暇そうにしていた。
「お、この前の兄ちゃん、今日は何のようだい? 今日も倉庫は空っぽで、食料は無いよ」
「また食料の納品に来たんですよ」
「マジか! 品物はまた魔法で運んで来たのか?」
俺は、インベントリから【小麦粉】25kg×10袋、【オーク】×100匹、【ハイオーク】×20匹を取り出し、倉庫に収めた。
倉庫番のマッチョマンに、また驚かれてしまった。
結局、小麦粉は12,500G×10袋で、125,000G
オークは10,000G×100匹で、1000,000G
ハイオークは20,000×20匹で、400,000G
合計1,525,000Gにもなった。
日本円に換算すると1億5250万円。
前回の分も足すと、2億円を超えてしまう……
こんな大金、何に使えばいいんだよ!
しかし、お金を支払ってもらえるのは、やっぱり後日だそうだ。
大金の使い道を考えながら。俺達は、冒険者ギルドにやってきた。
食料泥棒の情報を報告するためだ。
「食料泥棒を目撃したので、報告に来ました」
受付にそう告げ、追跡ビーコンで見た事を、自分で見たかのように話すと、受付嬢は―
「今話した事を、依頼者に直接、報告しに行っていただきたいのですが、よろしいですか?」
「直接ですか? まあ、いいですけど」
紹介状と、地図をもらい。
依頼主のところへ、行ってみることにした。
「ここか」
そこは、何処かの街の貴族が連れてきた、兵士たちのキャンプだった。
入り口を守っていた兵士に、紹介状を渡すと。
中央のテントに案内された。
「お前か、食料を盗んだ奴を見たというのは…… って! お前はセイジ! それに、エレナ様まで!」
「え? だれだっけ??」
背の高い、キザったらしい顔の男だが、見覚えがない。
「セイジ様、あの鎧を見てください」
エレナの指差す方には、悪趣味な金色の鎧が飾られていた。はて、どこかで見たことがあるような……
「あ! 『黄金鎧のロンド』か!!」
自分も、お金欲しい……
ご感想お待ちしております。




