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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
時空魔法と情報魔法編
10/438

007.囚われの姫君

 エレナ姫は……

 牢屋に入れられて、しくしく泣いていた……


 どうしてこうなった!?


 さっきまで何ともなかったのに、ちょっと目を離した間に、いったい何が起こったのか?

 俺は、ちょっと防御力が高そうなGジャンとGパンに身を包み、玄関でちゃんとスニーカーを履いて、覚悟を決めてから【瞬間移動】を使った。


「しくしく……」

「姫様、こんにちは」

「!?」


 牢屋の中央でしゃがみこんで泣いていたエレナ姫は―

 俺の声に驚いて振り返った。


 姫が振り返ると、瞳に溜まった涙がパラっと舞い散った。


「ゆ、勇者様!」

「セイジだろ」

「そうでした!セイジ様! 帰ったのではなかったのですか?」

「帰ったんだけど、君のピンチを感じて戻って来たんだ」


「セイジ様!」


 エレナ姫は、俺に駆け寄り抱きついてきた。

 思わず俺も、エレナを抱きしめようとしたのだが―

 流石にこれはマズイと思い直して、我慢した。


「エレナ、これは一体どういう訳なんだ?」

「それは、お、お父様が……」


 エレナは一所懸命話そうとしているが、えぐえぐしてしまって上手く言葉に出来ないでいた。

 俺は右手をギュッと握って力を込め、エレナの目の前に差し出し、パッと手を開くと同時にインベントリから【ハンカチ】を取り出した。


『今は、これが精一杯』と名台詞を心のなかだけでつぶやきつつ、エレナにハンカチを渡した。ちなみに万国旗なんか持っていないので無しだ。


「あ、ありがとうございます」


 エレナは俺から受け取ったハンカチで涙を拭くと、やっと落ち着いたのか、ニッコリ微笑んでくれた。


「落ち着いたかい?」

「はい、セイジ様ありがとうございます」


「では、何があったか話してくれるかい?」

「はい、私は、城のいろいろな人から【魔王】について聞いて回りました。新しい話は全然聞けなかったのですが、諦めて部屋に戻ってくると、お父様が何人もの兵士を連れてやって来たんです」


 やはり王様か。


「私はお父様に、村が滅ぼされた件は【魔王軍】の仕業じゃないかもしれないと話をしたんです。そしたらお父様は、急に怒りだして、私を牢屋に閉じ込めろと、兵士たちに命じて……」


「それで牢屋に閉じ込められてたのか」

「はい」


 なんて奴だ、実の娘だろうに!


「それでお父様は、【魔王軍】との戦争が終わるまで、お前をここから出す訳にはいかないって」

「それは、ひどいな」

「私はもう、どうしたらいいのか分からなくって」


「そうだ、俺が君を()()しちゃおう!」

「セイジ様が私を、誘拐しちゃうんですか?」

「うん、囚われの姫君を助けだすのは、勇者の役目だしね!」

「でも、お父様が……」

「気にしない気にしない。あ、そうだ、『姫を誘拐しました』って()()()()を残しておこう」


 俺は、インベントリにしまっておいた下敷き、メモ帳、ボールペンを取り出し、犯行声明を書こうとして、手が止まってしまった。


「考えてみたら、俺、この国の字を知らないや」


ピコン!


 俺の頭の上に、また電球が点灯した!


 そういえば、【情報魔法】に【言語習得】ってあったな。確か、沢山MPを消費すれば、習得の度合いが変化するって、説明文に書いてあったし、あれで字も書けるようになるのでは?

 俺は、早速【言語習得】を試してみた。


┌─<言語習得>─

│【ドレアドス共通語】を習得します

│ 習得レベルを選択して下さい

│・レベル1(消費MP:50)

│  片言で話が出来る

│・レベル2(消費MP:100)

│  日常会話程度は話ができる

│・レベル3(消費MP:200)

│  スラスラと会話ができ

│  簡単な文字のみ読める

│・レベル4(消費MP:500)

│  スラスラと会話ができ

│  日常使う文字が読み書き出来る

│・レベル5(消費MP:1000)

│  全ての言葉を使って会話ができ

│  全ての文字が読み書きできる

└─────────


 レベル4か5の二択だが、どっちにしよう。レベル5だとMPは1000も使うのか、まあ、今はMPがちょっとしか減ってなくて2000くらい残っているから、使っちゃってもいいか。

 俺は、MPを1000消費して、レベル5【ドレアドス共通語】を習得した。


┏━━━━━━━━━━

┃王様へ

┃ エレナ姫は誘拐させてもらいました

┃ 追ってくれば命の保証はありません

┃ もちろん、あなたの命の保証です

┃ では、ごきげんよう

┃      勇者より

┗━━━━━━━━━━


 俺は犯行声明文を書いて、牢屋の壁にセロテープで貼り付け、エレナ姫の手を取って【瞬間移動】を実行し、牢屋から脱出した。


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