二話 ~教えて! ナビ先生!~
ナビちゃんかわゆい。
野鳥がさえずる昼の森。
木々は太陽の光を浴びて、美しい木漏れ日を作っていた。
「お空の、飛び方?」
「ああ」
その森のただなかで、ようやくナビの抱き付きから解放された魔琴は自身がどうやって飛んでいたのかを訊いていた。
理由としては『力を操る程度の能力』で『空を飛ぶ程度の能力』を発現出来たまでは良かったが、その原理を解っていなかったからというのが一つ。
「俺がどうやってたか、検索できるか?」
そして、『情報を検索出来る能力』そのものであるナビがどこまで出来るのか興味があったからだ。
「んー……」
ナビは少しだけ考え込むと、小さく頷いた。
「やってみる」
そう応えたナビは開いていた目を閉じて、そのキーワードを口にした。
「『検索』」
待つことおよそ数十秒。
ナビが目を開けると、その検索内容を口にした。
「『空を飛ぶ程度の能力』。霊気を霊力に変換することで発生する浮力を利用する能力」
――なるほど、俺はその霊気ってやつを霊力に変えていて、その瞬間に発生する浮力を留め身体に纏ってた感じなんだな。
「……わかった、じゃあ最後。霊気ってのは何だ?」
「本質的には、霊力と同じもの。霊気が、砂粒なら、霊力は、砂粒を集めて、固めた石」
「えっと、それじゃあこういうことか? 一つの空間に減らない霊気があったとする。その空間に居る間は永遠に飛び続けることが出来る、と。こんな感じか?」
「……ちょっと、違うの。というか、霊気は世界を形作る要素だから、無くなることは、無いの。あったら、世界は滅ぶの」
「そ、そうか。それじゃあ……どういうことだ?」
「砂を集め、石にする。これ、すごく疲れる」
「霊気を集めて霊力に変換すると精神力を消費するってことか」
ナビはコクリと頷く。
「ただでさえ、霊気はプラスとマイナスが入り混じっているから、プラスだけを集めるのはすごくたいへん」
「待て。そのプラスとマイナスってのは?」
「プラスの霊気は人間が、マイナスの霊気は妖怪が使うもの。プラスとマイナスじゃなくて、霊気と妖気と分けてもいい」
「なるほど、プラスは霊力に。マイナスは妖力になるわけか」
無言でサムズアップを決めるナビ。
こいつ生まれたばかりだよな? と魔琴は少し不安になった。
「マスター」
「む、なんだ?」
少々げんなりしていた魔琴であったがナビに声を掛けられすぐに復活する。
ナビに目を向けると、どこかソワソワしたように、何か言いたそうにしていた。
魔琴はしっかりナビに目を合わせ、次の言葉を待った。
そして、ナビは魔琴にある提案をした。
それはナビが出来る限りの『検索』をして、魔琴の能力に出来ることを調べつくさないか? というものだった。
それに対し魔琴は、
「要らん」
あっさり切り捨てた。
「な、なんで」
「いやな。そんなことしたら修行して強くなる楽しみ半減だろ? だから要らん」
「そう……」
ナビは顔を俯けて落ち込んだ。
「ふぅ」
ポフ、と魔琴はナビの頭に手を乗せた。
「……マスター?」
「ありがとな」
魔琴がそう言って頭を撫でると、沈んだ顔が一転。
にへら、とナビは相好を崩した。
「(こうしてると、こいつが人間じゃないってこと忘れそうになるな)」
「……?」
「……どうした?」
少し考え事をしている間に何かあったのか、俺に撫でられていたナビが後方(俺の前方)に目を向けていた。
「あっち。西の方角……いっぱい居る」
「人間か? それとも妖怪か?」
「はあ……ふう……」
ナビは俺の腕を離れ、その方角に体を向けた。
「『検索』」
ナビの検索を待つ間に魔琴自身も気配を探る。
そうして魔琴が大体の数と進行方向を探り終えたところで、ナビの検索も終了した。
「ここから右前方五百メートルに人間の雌が一人。13体の妖怪に追いかけられている」
「みたいだな。もう何人かも居たようだが、こいつが最後の生存者みたいだ」
「どうする?」
「はぁ……ちと面倒だが、ほっとけねえだろ」
「わかった」
「行くぞ」
「うん」
ナビは粒子となって魔琴の体内へ消えた。
――さぁて、いっちょ暴れるとしますか。
魔琴は西へと駆け出した。
次回、ついにあの方が登場。