十五話 ~目的達成、そして式封印~
プロットと今の現状を照らし合わせて見ていると、進行ペース亀どころの話じゃねえなコレと慄きながらの投稿です。
早く終わらせたい古代編、お待たせしました(´・ω・`)15話です。
魔琴side
「……何だ貴様らは」
「いや、お前らが何だよ」とツッコミを入れたい衝動をなんとか押さえ、俺は周囲を見回し状況の把握を図った。
辺りは地下深くのため、これだけならただ辛気臭い場所に感じるのみであっただろうが、それは中心で輝く地面に描かれた魔方陣が部屋全体を照らすことによってある種神秘的なものへと変貌していた。
そして黒装束の者たちは自分が追ってきた者以外にも居たのか、約50人程の数がその魔方陣の上で訝しげにこちらの様子を窺っていた。
と周囲を観察しているときに俺の死角、右前方から何やら攻撃的な力の流れを感じたためとりあえずそこに霊力で作った殺気『霊圧』を飛ばしてみる。
あ、なんか倒れた。
「キサマ!! なんてこと――ッ!!」
それに対し、何やらこちらに声を掛けてきていた者が、俺に怒りを向けてこようとした次の瞬間、バキンっ! と、何かが割れるような音が室内に響いた。
俺はその音が魔方陣内から発せられたことから警戒したのだが、後に現れる結果は肩透かしを食らうようなものだった。
ドサッドサドサ、と。
何が原因なのか、絶賛魔方陣内に居た者たちが次々に倒れていったのだ。
俺も余りの事態にしばし呆然としたが何とか気を取り直し、黒装束たちが倒れ伏している魔方陣を遠目に観察する。
見た限りもう発光も収まっているようで特筆すべきところは中心で同じく倒れ伏している背中から翼を生やした小さな女の子くらいなものだ。
隣に居たナビはいつのまにかその少女の元で、その背の翼を突いたり翡翠の色をした髪をペシペシと叩いたりしていた。
……うん。
――目的達成。
side out
ピョコっ、と。
魔琴たちが妖精の少女を連れて地上へ戻っていったすぐ後。どこから姿を現したのか50人以上の気絶した男たちの中、重なり合って倒れていた者たちの隙間から這い出してくるようにソレは姿を現した。
一見ソレはどこにでもいるような兎だった。
それも、この街の平均的な幼児ですら両手を使えば抱えきれる程に小さな白い兎。
兎は自身がその脚をのせている男を一瞥すると、後ろ足で蹴りつけるのように飛び跳ねた。
兎はそこからどんどんと近くに横たわる者たちの背に着地していき、やがてはその空間に居た全ての者に脚をつけて跳び終えると、如何なる手段によってかこの地下空間からは完全に消失した。
後には中身の無い50着以上の黒装束だけが残されていた。
『――ふむ、ではその者たちは始末できたのだな?』
とあるビルの一室。
そこは使用者がそれなりの地位に居る事を窺わせる豪華な部屋だったがその人物が椅子にも掛けず、直立しながら対応する電話口の相手はそれより更に上位の権力者であった。
「ええ。間違いなく」
そう言って受話器を握る男が視線を向けた先では地下で姿を眩ませた白い兎が、事務机の上に置かれたミニチュアサイズの安楽椅子で向日葵の種をカリカリと齧りながら頬張っていた。
『……また何かあれば報告しろ』
「畏まりました」
ガチャン、とスーツの男は部屋の家具と同じく西洋風の受話器を置くとようやく自らも自身の安楽椅子へ背を預けることが出来た。
「んー」
スーツの男は悩む。
一時監視を外したとはいえ、まさか例の男(綺堂魔琴)があの場に現れるとは予想だにしていなかった。
月面移住計画へ反抗する面倒な犯罪組織の連中があの大妖精を捕らえたと聞き、万が一の時は現場にやっていた白兎を自爆させ地下諸共崩壊させようと思っていたのだが。
優秀な式を一体失っていたことになるが、それだけ事態は切迫していたのだ。
これから月面に移動し穢れを払おうと動いている時に街で不死の力を得た者が出ようものなら先ほどの上位者、絶対神である主がこの地をお見捨てになってしまわれる可能性すら孕んでいたのだから。
だがこれは魔琴が連中を単独で沈め、大妖精を保護したことで杞憂に終わった。
それは現場に寄こした白兎の感覚を共有していたこのスーツの男にも確認出来た。
問題はあの男が連中の発動していた儀式の中心核であった人物を(敵の目がいかないようにあえて実力的にも儀式内の立ち位置的にも目立たない所に配置されていたにも関わらず)一瞬で見破り、50人にも及ぶ魔法師たちを同時に無力化してしまったことにある。
腐ってもあの場に居た者たちは一線級の魔法師たちだった。そうでもなければ下手な妖怪よりも力のある大妖精を捕らえて、その力を奪う術式を組み立てることなど出来はしない。
そしてそんな者たちが作り上げた術式をいとも簡単に破って見せた綺堂魔琴の力は脅威であるのと同時に、利用すればこの街の膿を一斉駆除することも出来るのではと。
それに綺堂魔琴と一緒に居た“あの赤毛の少女”も気になる。
「(当初は月面移住後の姫様および永琳神格化のため不安要素の綺堂魔琴はどこかで退場願おうと計画を立てていたが、役に立つ可能性が出てきたのなら見直すべきか?)」
はぁ、と一つ溜息が零れる。
「どうしよっかなー」
ピ、とスーツの男は内ポケットに入れていたリモコンのスイッチを入れ、クルクルと安楽椅子を回すのだった。
◆◆
「よっと!」
スタっ、と魔琴は地下の階段から一足飛びに、見事背中で眠る大妖精を起こすことなく地上へとドヤ顔で着地を決めた。本来なら武術の道に何年も身を置いた達人のような者でなければ困難な芸当であるが、その能力によって『力』というものを身体で理解している魔琴には造作も無いことであった。
「能力で空を飛べば良かったんじゃ?」、なんて指摘はしないであげてほしい。そして真っ暗やみなこの空間では(暗視能力でも使わない限り)誰も見ることはないため、画にするとただの厨二病患者にしか見えないとかも言わないであげてほしい。
と後ろから魔琴を見るナビは、眠気でうつらうつらしてきたからか、意味不明な思考をしていた。
「……ん」
「? どした。眠くなったか?」
ナビの様子にいち早く気づき、そう声をかけてくる魔琴。
生み出された方にあまり自覚は無いが、ナビは今のところ魔琴が唯一この世界で気を許せる相手だ。気にもかける。
なので魔琴のみたては正しく、確かにナビは眠くなっているのだが魔琴が心配したナビの反応はそれが原因ではない。
原因は、先ほど自分たちが後にした地下に一瞬だけ感じた気配だった。
それがこの街を統括する男の使い魔である白兎なのだが、魔琴たちがそれをしる由はない。
「うん……もどっていい?」
結局、ナビはその気配を鼠などの弱小生物と判断。その情報を魔琴に伝える事はなかった。
だがそれも仕方がない。ナビは生まれたばかりで正しい判断をするための経験も無ければ、感じた気配は一瞬霊力のようなものを感じた『かもしれない』という程度の、下手すれば気のせいと言っても差し支えないほどに小さな気配だったのだ。
こんなことで毎回報告していたら、霊気の強い土地に生息する蟲や鳥といったものも一々報告していかなければならなくなる。
「あー、一寸待て。行きに通って来た壁の結界があるだろ、帰りも同じ抜け方とは限らねえからもうちょい踏ん張ってくれるか?」
「わかった……踏ん張る」
「ああ。ありがとな」
と、こんなやりとりがあり結界前。
魔琴たちは再度、壁の結界を調べていた。
「『検索終了』……危なかった」
意外な検索結果に声こそ上げなかったものの内心で驚き、思わずナビの方を見る魔琴。まさか本当に妙な結果が出てくるとは思わなかったのだ。
そんな魔琴の様子をナビは詳しい説明を求められたんだと思い、魔琴の方へ体を向けて報告を始める。
「この結界の抜け方自体は入ったときとそう変わらない。プラスでもマイナスでも、霊力を込めれば簡単に出られる」
「だったら…… あ」
そうすればいいじゃないか、そう言いかけたところで魔琴は気づいた。
わざわざこそこそと隠れるようにして妖精を捕らえていたような連中が、それの逃亡に対して何の策も講じていないなんて事がありえるのか?
「まさか……」
「……うん」
壁の結界には一つの術式が付与されていた。
それは外から入る際には効果を発しないが、内部から外に出ようとする際に発動する。
しかしこれは穢れ無きもの、つまり人間にはさしたる問題は無い本来であれば街の外に居る妖怪や妖精といった存在に効力を持つ術式だ。
名を、『式封印』という。
これの効果は読んで字のごとく、外から捕まえた妖怪をその結界内から逃がさないようにするというものだ
この術式が用いられる主な目的は大抵、妖を使役したい術者が契約をする際にその妖を逃がさないようにするために張る、結界としての意味が強い。
――が、術者の目的が別にあったとすればその限りではない。
「連中が正規の入り口を使わず裏口から入ってきたことからも、今回の件が公にしたくなかったのが窺える」
「なるほど。無理に抜けてれば、コイツが危なかったってことか」
魔琴は後ろ目に自分の背中で眠る小さな妖精を捉えながら言う。
「ん、読み取れた結界強度からしてその大妖精が無事で抜けられたとは思えない」
「そっか~、じゃあどうすっかなー……」
当然、魔琴の能力で結界自体を壊してしまおうかという考えも浮かんだが結界外への影響も考えるとそれも難しかった。
魔琴たちが居るこの空間は結界の影響で外部からは認識できない状態になっているが、ここが街の内部に位置していることには変わりないのだ。
仮に今何の対策もぜず、この壁の結界を破壊してしまえばそれまで見向きもしなかった場所に突然巨大な建造物が現れることになる。そうなれば当然騒ぎになるだろう。魔琴の背で眠る妖精の存在が露見する事態にもなりかねない。
少なくとも、街の者たちが妖精に対してどのような認識を持っているのかも不確定な現状でそれは悪手だろう。
そうして魔琴はしばし悩んでいたのだが、こんなとき頼りになるのがパートナーというもの。
結界を見て黙考していたナビが光明を見出した。
「一つだけ、方法がある」
ナビは振向き様にそう言った。
作者「(´・ω・`)前の話を読み返してると、この頃思うのです」
魔琴「ズバリ、その心は?」
作者「(`・ω・´)散らかし過ぎだろ色々と」
魔琴「それやったのお前だからな」
作者「(-_-;)サーセン」
魔琴「で、今回も何か思わせぶりな切り方だったのは当然、後のことも考えてのことだろうな」
作者「('ω')ゞハイ! そこはもうバッチリ。予定通り進んでおります」
???「我もちゃんと出れるであろうな?」
作者「ハイ勿論で……って誰です貴方( ゜Д゜)?」
???「ん? あれ、我……じゃなくて俺……私、だったか?」
魔琴「いや俺に訊くなよ……つーか作者、テメェは知ってろよ」
作者「(-ω-)いやいや、こっちに手ぇつけるの久しぶりなんですからそこは大目にみましょうよ。というかあの今は謎の上司となっている人?と違って未だビジュアルのデザインすら決めてないんすよ(`・ω・´)記憶に留めておけというのが無茶なんです」
???「であれば早急に決めてほしいものだな。加えて言えば現在の世界で唯一神たるこの私がこれまでの全15話中未だ通話回線にしか登場していないというのも問題だ。というか貴様その反応、憶えていたな?」
作者「( ゜Д゜)……あっ」
魔琴「あ、俺急用思い出したから本編帰るわ。んじゃなー」
作者「(;^ω^)それじゃあボクも……」
――(^^)/ガシ(;^ω^)
■■「(^^)行かせると思うか?」
作者「(*´ω`*)デスヨネー」
――ピチューン!!




