十四話 ~宵闇の力、そしてマテリア~
お待たせしました! 十四話です。どうぞ(*´ω`*)
穢れの森、その奥地にて凄まじい爆音が響いた。
轟轟と燃える一人の妖怪が立っていた木は、その形を無残に失い、墨色に焼け焦げていた。
そして、それと同時にすぐ傍の影に潜み窺っていた妖怪が諸手を上げて狂喜した。
「ヤった。殺ったぞ!! 宵闇を倒した!!!!」
そう、ルーミアを飲み込んだ爆発はこの妖怪――フレイによるものだった。
その力は触れた物を爆発させるという凶悪極まりない能力で、視界内にさえ収めていれば先ほどのように任意のタイミングで起爆することが出来る。つまり、丁度ルーミアが足を付けた瞬間に爆発した木には、フレイの能力が掛けられていたというわけだ。
そうしてフレイが下卑た笑みを浮かべながら歓喜に打ち震えていた時だった。
「楽しそうね。何か良いことでもあったのかしら?」
「ッ!?」
本来聴こえてきてはいけない声が降ってきたのは。
バッ、とフレイが無防備に振り返った先には、確かに自分が起こした爆発に飲み込まれていた筈のルーミアが、傷一つ無く中空で何やらその背中から黒い翼のようなものを噴き出してこちらを見下ろしていた。
「な、んで」
「あらぁ? 仮にもこの私に喧嘩を売っておいてそれは無いんじゃないかしら? あなたがどこの誰かは知らないけど、最強に挑んだんだもの。相応の覚悟は有ったのでしょう?」
そう言って冷たい笑みを見せるこの妖怪は、どこまでも恐ろしく、
「さあ――」
「なっ!?(背後にッ!!)」
そして――
『お仕置きの時間よ』
どこまでも美しかった。
「『闇喰』」
振り向いた時にはもう遅く、フレイの意識は闇へと消えた。
――。
ルーミアside
「んー。まあまあね」
私は今さっきまで目の前に居た妖怪へ刺していた漆黒の大剣、ストームブリンガーを担ぐようにして一人ごちた。
狩って楽しいのは人間だけど、やっぱり味わい深いのは能力持ちね。
ていうか、真正面からじゃあなかったけどこの森の妖怪に挑まれたのなんて久しぶりじゃないかしら? 今回で言えば、まあ好都合だったけど。
本当なら能力持ちの人間を食べられたら良いのだけれど、残念ながらそんな人間は滅多に現れない。
少しでも早くあの男、綺堂魔琴と再戦するためにはこの森に住む能力持ちの妖怪を狩って食べる方が効率が良い。
「と、次の獲物を探さなくちゃね」
と、今しがた食べた妖怪のことなど忘れ、私は珍しく楽しめそうな男のことを想うのだった。
side out
魔琴side
「ん?」
ルーミアとかいう妖怪を退けてから森を抜け、街が見えるところまできた俺はその入り口近くへ如何にも怪しげな黒ずくめの集団を見つけた。
そいつらとの距離は開いているため向こうはこちらに気付いてないが俺はどうもそれが気になりその集団を見ていると、そいつらはまるで何かを囲んで隠すようにしながら街の門へ……行くことはなく、何故かその裏手の方に向かって行った。
黒ずくめの集団が街の中へ消えた後、俺はそれに少しだけ遅れるようにしてその集団が消えた門の裏手に来たのだがそこは一見何の変哲もない穴どころかスキマすらない外壁があるだけであった。
先ほどの集団がここをすり抜けるように消えていくのを確認していなければ、自分が見失ったのだと勘違いしていたろう。まあそれも検索をかければ済む話だったため一手間省ける程度のものだったが。
「ナビ」
『ん』
俺が呼びかけるとすぐさまナビは応え、俺の身体を抜け件の壁に手を添え検索を発動させた。何か仕掛けがあればこれで何かが出るはずだ。
「ここに霊力を流せばいいみたい」
「よし来た」
ナビからの検索結果を聞き、俺は早速その壁面に手を添えて霊力を――
「と、ちょっと待て。流すのはプラスか? マイナスか?」
「……どっちでもいいけど、さっき使ってたのは人間だし、一応プラスにしといた方がいいと思う」
「そうか。それもそうだな」
改めて、プラスの霊力を流した。
すると、その手の中心から先に駆けて薄水色の靄のようなものが扉を形作るように広がっていき強く眩い光を発したかと思うと、気づけば俺とすぐ近くに居たナビは街の中へと入っていた。
「まさかこんな裏口が在るなんてな」
だがまああの黒ずくめ達と同じように入れたはいいが、肝心の奴らはどこに居るのか。ってか、なんかここ結界で隔絶されてんだが益々もって怪しいな。
と、そうして俺が首を傾げている間にもナビは何か気づいたようで声をかけてきた。
「マスター、あそこ」
「ん?」
ナビが指した方を見てみると、そこにはさっきの集団が皆同時に入っていけそうなほど大きな口を開いたドーム状の黒い建物が一つ建っていた。おそらく黒ずくめ達はあそこに入って行ったんだろう。
「行ってみるか」
「ん」
ナビと並んで中に入ると、そこには一切の明かりがなく奥まで見通すことは出来なかった。
「んー。このまま進んでも問題ないとは思うんだが……術式でも組まれてたらメンドイな。ナビ、検索いけるか?」
ナビはコクリと頷くとすぐ目の前に手をかざし目を瞑り、その能力を発動させた。
「中央に地下へ降りる階段がある。トラップ、術式の仕掛けも無い」
「よし、それじゃあ行くか」
「ん」
そうして進んだ先、そこにはナビの言っていた通り地下へと続く階段があった。光源のない場所で何故それが確認出来たかといえば目に霊力を込めて暗視のようなことをして来たからである(なんか試したら出来た)。
俺たちはそのまま階段を降りて行った。
???side
……暗い。ここは、どこ? あたいは……
「…備は……か……?」
「ぁぁ…始……う」
バチィ!
「うぐぅッ?!!」
船を漕ぐように微睡んでいたあたいの意識は、まるで落雷に撃たれたような衝撃で半ば無理やり覚まされてしまった。
そうして覚醒したあたいの意識は、近くで人が話してるような気配を感じ取った。
「フ。上手く連結したようだな」
その気配を確かめるように顔ごと視線を上げると、黒い外套のようなものを目深にかぶった怪しげな人間たちが目に映った。
「(そうだ。あたい、確かこいつらに捕まって……)」
朦朧としていた意識が覚醒して、あたいはようやく現状に至るまでのことを思い出した。
あたいがいつものように森の奥の湖で過ごしていたとき、突然この黒ずくめたちが現れたんだ。
顔は隠れていて見えなかったけど、気配というか、臭いでこいつらが人間だということはすぐに判った。
あたいの居た湖は木々に囲まれた森の奥に位置する関係からか、森に多く潜む妖怪たちならともかく、人間が来るというのは至極珍しいことだった。……だからだろうか。あたいは迂闊にもその人間たちが来た目的を考えることすらせず、自分の姿を晒してしまった。
人間たちはあたいの姿を認めるとすぐさまわたしにおそらくは魔法を発動するための片手杖を向けてきて、その次の瞬間に気絶させられたのだ。
「っ……」
あたいはいまだうっすらする意識の中、しびれる身体を動かしつつ、なんとか自身の置かれた状況を確認する。
腕を動かそうとすればガチャガチャと金属音が響き、左右に伸ばされた状態から抜けることは出来ない。両の足を動かそうとしても何やら身体ごとピッタリと留め金で留められているようで、どうやら五体全ての自由が奪われているらしい。
あたいは仕方なく身体の方は諦め目線だけを動かし、今の自分の姿を流し見た。そうしてあたいの目に捉えられたのは、自身が黒い十字架のようなものに囚われているという何とも奇妙な現実だった。
部屋には十字架に磔にされた自分と黒ずくめの人間たちしか存在せず、光源は石畳の床に描かれた中央に五芒星が組み込まれた光り輝く魔方陣だけだった。
ああ……いまになってわかった。こいつらの目的が。少し考えればわかっただろうに、あの時のあたいは本当に迂闊だったようだ。
リーダー格と思わしき人物が一人前に出て、両腕を大仰に広げながら高らかに宣言する。
『調査隊観察記 四章 妖精の生態 第127項 報告』
「悲願達成の時だ」
リーダーのその宣言で部下らしき黒ずくめたちが無言で片手杖を一斉に掲げ、構える。
――マテリア
それはありとあらゆるものの核、霊力を精製する根源――即ち、魂を抽出し、物質化する魔法だった。
『妖精、その中でも絶大な力を持つ大妖精の魂を手にした者は、永遠の命を得られるであろう -総合研究室 第二資料より抜粋』
あたいがこの後の展開に覚悟なり色々きめていたときだった。
かつん、と今まで黒ずくめたちがたてていたものとはまた別の足音がこの部屋に居る全員の耳を叩いた。
「どういう状況? これ」
「……」
そこには、蒼い和服を着た一人の男と、赤い洋服を纏った小さな女の子が立っていた。
ルーミア「さて糞作者。――な・に・か・言・い・残・す・こ・と・は・あ・る?」
作者「いえ、あの、その(;^ω^)」
ルーミア「それで良いのね?」
作者「すみません。遅れました キリッ(`・ω ――ピチューン




