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十三話 ~暗躍。そして邂逅のその後~

お待たせしましたッッ!

「じゃあ……報告を聴こうか」

「……はい」


 人間の街、その中でも一際大きな建物の一室に二人は居た。

 一人は街の元軍部隊一佐、黒峰大樹。

 現在は暗部に配属されたためかその顔には以前までしていなかった暗部全員に支給される白い仮面がついている。

 そしてその黒峰の正面にある執務机で何かの書類を捲り見ながら何かの報告を聞くスーツの人物こそ、今の街に居る中での最高責任者を務める上司だった。


「今回の調査で得られた情報はこちらのみになります」

「うん?」


 上司は黒峰が懐から差し出した一本の機械的なスティックを受け取った。


 ――ステータススティック。

 使用者の視界内に居る対象の大まかなスペックを図ることが出来る街の最先端技術が注ぎ込まれた記録機器だ。

 中央部に五分割されたメーターが付いており、これによって対象の脅威度を確かめられる。


「……意外だね。君ほど有能な人物が調査した結果がステータススティック一本とは」


 上司は本当に意外そうな声音でそう言った。それほどまでに上司は黒峰の実力を買っていたのだ。

 そんな黒峰が受けていた依頼はというと、ある一人の男の素性調査だった。

 綺堂魔琴きどう まこと、18歳。

 八意研究所の所長兼医療薬師である八意永琳が穢れの森での任務中に保護した治癒能力を持つ男。

 と、以前永琳自身から行われた報告ではそのようになっていたが上司はどうにも信用出来なかったため暗部となった黒峰に魔琴の再調査を頼んでいた。

 その為、上司の声音からは「もう少し探れなかったのか?」という意も汲み取れ たが、黒峰は目を伏せつつも堂々と答えた。


「はい。星は気配を消していた私の存在にも気づいていましたし、加えて警告までされてしまってはそちらだけで精一杯でした。申し訳ございません」


 そう。あの時妖精を探していた魔琴が穢れの森で捉えた気配の正体は魔琴の居る位置から約1キロメートル離れた後方から霊力を広範囲に巡らせた監視を行っていた黒峰のものだった。そういった力の流れすらも能力で感じとることが出来る魔琴には通用しなかったが。


「ふむ……」


 上司は受け取ったスティックの落ちていたスライド型式の起動スイッチを押し上げ電源を入れ直し、その計測結果を見た。


「……確かに、そのようだね」


 ステータススティックには五つのレベルが存在する。


 レベル1・対象者がスティック使用者にとって無害、もしくは脅威がそれほどでもないことを示している状態。メーターでは一番下、青色のランプが点く。


 レベル2・スティック使用者が対象者の無力化をする際、多少の危険と時間を要することを示す状態。下から二番目、緑色のランプが点く。


 レベル3・内容問わず、対象者が何かしらの能力スキルを所持していることを示している状態。三番目のランプ、黄色のランプが点く。


 レベル4・対象がスティック使用者と同等か、それ以上のスペックをことを示す状態。危険域、警戒対象。橙色のランプが点く。


 レベル5・能力スキルの有無関係無く、対象者のスペックがスティック使用者のそれを大きく超えていることを示している状態。脅威度レベルMAX、赤色のランプが点く。



 が、説明からもわかる通りこれはあくまでスティック使用者に比例するメーターのため待ち切っての実力者である黒峰のような者が使っても通常であればレベル3を超えるようなことは早々無い。

 それこそ、現存する妖怪の中でいま最も恐れられているというあの宵闇の妖怪ルーミアのような存在でもなければ。

 そのため、上司は黄色あたりで納得を見せるつもりであったのだが……。


「レベル5……超警戒対象か」


 ステータススティックは、赤色を示していた。


「はぁ……。これじゃあ明日の計画に支障でちゃうかな」

「そうですね。ですが、あまり先延ばしにするわけにもいきません」

「そうだよねー……。じゃあ、お願い出来る?」

「は」


 黒峰はそこで一礼し退室、その場を後にした。



 カツカツカツ、とリノリウムの床を黒峰は一人歩き、そして……。


「くそ……」


 ガン!!


「……永琳」


 黒峰の立ち止まった通路で響いた呟きと固く閉められた握り拳を横殴りに叩きつけられた壁の音は、誰にも聴かれぬまま闇へと消えた。





 時は遡り、夕刻。

「……逃げたな」

『逃げたね』

 魔琴はしばらくルーミアに逃げられてしまった森の奥を睨み付けていたが、気配が四方八方に散らばっていったことを確認したため追跡は断念(おそらくルーミアの能力によるものだろう)。

 見上げた空も最後の力を振り絞るかのような紅色あかいろに染まっていたため、そんな相手を探すのは面倒だ。

 であれば、魔琴のアクションもおのずと決まってくる。


「帰るか」

『ん』



ルーミアside



 タン!


 鬱蒼と茂った深い森の中、闇を纏ったルーミアは木々を踏みしめ獣のごとく飛び移り駆け抜けていた。

 ルーミアは木々を駆け抜けながら先ほどの男について考える。


「(綺堂……魔琴)」


 自慢ではないが、ルーミアは今まで自分と戦えるレベルで強い存在には遭ったことが無かった。

 だが、それもその筈。妖怪とは生きた年月とその身に集まる畏れの量で力を増す者たちだ。

 ルーミアはその妖怪達の中でも最古の妖怪であり、この大陸に限って言えば『宵闇』と聞いて知らぬ者は居ないほどの実力者なのだからそれも仕方がないと言えよう。

 だからこれまでのルーミアは、戦いとは単なる暇つぶしのようなもので人間は味わい深い餌でしかないと。

 そう思っていた。


 トン、とルーミアは飛び移った木で一度立ち止まり、逃走時に出した計11体の分身からその周りにある気配を探る。

 それから程なくして森の出口へと引き返す魔琴の気配が見つかった。どうやら追撃の意志は無いらしい。


 グ~。


「……はぁ」


 自らで鳴らした腹の虫につい溜息が漏れる。

 さっきは能力が破られるという不測の事態が起きたことで思わず引いてしまったが、こんなことならもう少し粘ってみるべきだったろうか?


「(ま、今更か)」


 ――解!


 方々に飛ばしていた全ての分身を解く。

 これで分散していた妖力はある程度回復出来た。

 と、その次の瞬間。


「ん?」


 ZUN!!


 ルーミアの立っていた木の幹は、突如として爆散した。

 そして、その爆破の衝撃で巻き上げられた土煙が立ち昇る中をすぐ近くで顔を喜色に染め窺っていた影が一つ。

 土煙が晴れたその先には、ただ何も無い空間が広がっていた。

どうも、岸田和魔です(´・ω・`)

すいません、だいぶ遅れましたね。

予告していた今月中という本当にギリギリでの完成だったのであとがき劇場は描けませんでした。……次回は描けるといいな。


それでは、次回もお会い出来ることを祈って。


――ピチュン

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