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九話 ~二人の秘密~

執筆スピードに伸び悩む今日このごろです。

永琳side



「はぁ」


 私は自分の研究所にて、何度目かになるかわからない溜息をついていた。


「(あのとき魔琴に助けられていなければ間違いなく私は死んでいたのでしょうし、あの秘密を知られた以上は彼の要求を聞く以外に選択肢なんて無いんだけど……)」


 やはり姫様も居るうちを拠点として提供するのは迂闊だったか? げんに魔琴自身も拠点としての役割が機能するならどこでもいいって感じだったし。

 これから一緒に生活していくことになる以上、必ず魔琴は姫様と顔を合わせる。

 姫様にはだいたいの説明はしてあるし、人見知りをするかたでもないから さほど大きな問題は起きないと思うけど、不安はある。

 そのために魔琴が姫様とバッタリ遭遇するなんてことがないよう、釘を刺して街の散策を許したのだから。


「帰ったらすぐ話し合いの場を設けましょうか」


 だからせめて自分が帰るまでは二人がバッタリ会ってしまうなどということがありませんように、と願う永琳なのであった。





 その頃、綺堂魔琴は――。



「あなたが知った私たちの秘密を、どう思ったかです」


 永琳の希望空しく、姫様と二人公園のベンチにて並んで会話していた。



魔琴side



「姫さんたちの秘密か……」


 隣に腰かけていた姫様が魔琴の方へ身体を向け訊いてきたのに対し、魔琴は姫様の方に向くことなくその視線を空に向け腕を組んだ状態にして考えた。


「(姫さんたちの秘密ってーと、やっぱアレか? あのときナビが見つけた髪の毛への術式)」


 魔琴が永琳を助けたあのとき、永琳は自分の毛髪に髪色を黒く見せるというだけの誤認術式をかけていた。

 ただ単純に髪を染めるのではなくわざわざ術式で隠さなければならなかったのだとすると、どうしてもその髪色を知られるわけにはいかなかった相応の理由なにかがあると思ったんだが……。


「(はっきり言って、それがなにかはわかってねえんだよなぁ)」


 だから永琳に拠点を提供させる交渉に持ち出したこちらのカードは正直なところ、相手の心理に付け込んだだけのハッタリだったのだ。


「(まあ、現時点でアレがハッタリだったのがバレたらせっかく手に入れた拠点を追い出されるかもしれねえし)」


 どうしたものか。と魔琴は頭を悩ませていたのだが、以外にも言葉を繋げたのは質問を投げかけた本人だった。


「恐い、とは思わなかったの?」

「(いや、そう言われても)」


 この通り、表には出てないが事情を正確に把握出来ていない魔琴は内心困惑状態である。


「(ここは話を合わせるしかないな)」

「どうなの?」

「え? ああ……思わないよ。てか、そんなこと思ってたら拠点の提供なんて頼まねえだろ」


 いろいろと情報不足の魔琴でも姫様の口調が変化したことで多少は驚いたもののそれが姫様の最終確認であるとなんとか気づき、すぐ返答することが出来た。


「……そう」


 その魔琴の答えに姫様も多少不満は残ったものの、一応納得はしてくれたようだ。


「じゃあ……魔琴は私たちの秘密を守ってくれる人、そう認識していいのね?」

「そうだな。少なくとも永琳が、いや。永琳と姫さんが約束を守ってくれる内は、こっちから裏切るこたねえよ」

「……わかったわ。では私も、魔琴を家族として受け入れます」

「ああ。よろしく頼む」


 こうして、魔琴は姫様の了解を得た。



 その後、魔琴は当初の予定通り姫様の案内のもと街を散策した。

 そこでわかったのは、この街が超科学都市でありながらも根っこは魔琴が元いた世界と似通っているということだった。

 右を向けば数人の子どもたちが声を上げながら笑顔で駆け回っているし、左を向けば街の見回りをしている警備兵や店の飲食店のショーケースを眺める成人女性の姿が見える。

 判りやすい市場のようなものこそ無いが、どうやら貨幣と引き換えに品物を得る経済システムは完成されているようだ。

 街を歩き、少し足を止めるだけで様々な生活の色が見えて来る。

 皆それぞれが今という時を生きているのだと思うと、自然と笑みが浮かぶ魔琴だった。


 姫様による一通りの街案内が終わる頃には、空高く上がっていた日もすっかり落ちてきてしまっていた。

 スペースシャトルのようなロケットらしきものが見えた立ち入り禁止施設には入れなかったが生活上で必要になる施設は全て周れたし、なかなか有意義な一日だったろう。


「(姫さんたちの秘密も知れたしな)」


 そう、魔琴は姫様と永琳の秘密を知った。

 家に帰り着く前、街の案内が終了した帰路の途中でナビに検索をかけてもらったのだ。


「不老不死? あの姫さんがか?」

「うん」


 姫様が自室に戻るのを見送った魔琴は、リビングにてナビを膝に乗せて椅子に坐りその情報を確認していた。

 そうして判ったのが、姫様たちの秘密――不老不死という体質であった。


「まさか姫さんの体調べただけでそんなことがわかっちまうとはな。具体的にはどんなものだったんだ?」


 魔琴は姫様本人が聞いたら顔から火が出る勢いで卒倒していたであろう言葉でナビに問うた。

 しかし、訊かれたナビはまだ生まれたばかりで人格形成が不完全だからなのか特に魔琴の言い回しを気にかけることもなく平然と答えた。


「あの姫の不死身は八意永琳の力によって作られた万能薬、蓬莱の薬による作用。本来は髪が白くなる副作用がある筈なんだけど、何故かあの女は変わらないみたい」

「なるほどな。その原因はわからなかったのか?」

「『永遠と須臾をあやつる程度の能力』があったから多分その能力によるものだと思うけど、断言は出来ない。私の検索では予測が限界だから」

「どんな能力があるかは調べられても、それを使われた後の事象は検索不可能か」

「ごめんなさい」

「なに言ってんだ。お前は十分仕事はしたろう? 謝る必要なんかねえよ」


 そう言って、魔琴は膝の上のナビの頭に手を乗せた。

 実際、ナビは本当によくやってくれたのだ。特に蓬莱の薬の情報に関しては魔琴が疑っていたある可能性に確信をもたらした。


「ありがとな」

「あ……」


 魔琴が膝の上のナビに微笑み頭を撫で、それにナビが恍惚とした表情をしていた時だった。


「ただいまー。魔琴ー、ナビー、帰ってきてるー?」


 この家の主が帰ってきたのは。

 目と目が合う。


「魔琴……」

「ハイ」

「説明」


 この後の必死の弁明により、魔琴の容疑は晴れたことをここに記す。

かぐや「あれ? 居ない。どこ行ったあの糞作者」

???「姫様」

かぐや「きゃっ!! 永琳!? おどかさないでよ!!」

永琳「ごめんなさい。時に姫様」

かぐや「何よ」

永琳「以前、私にどうすれば人気が出るのかという相談をしてくださいましたよね」

かぐや「ええ、確かお嬢様口調だったわね。その説はありがとう。今もバッチリ「あれは嘘です」続けて……え?」

永琳「……」

かぐや「永琳。いま、何て?」

永琳「あれは嘘です」

かぐや「……」

――ピチューン!

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