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八話 ~お世話になります~

お久しぶりです!

なんとか間に合った( ;∀;)

「だそうだよ? 黒峰一佐」

「……はい」


 スーツの男が声を掛けた迷彩服の男こそが妖怪に食い殺されたことになっていた、永琳が引き継いだ弓の元々の使い手――黒峰大樹だった。


「あの心優しい永琳ちゃんでも……いや。あんな永琳ちゃんだからこそ、戦闘の稽古をつけてやっていたキミが妖怪に殺されたとなれば、僕の能力も合わせてあのお方の思惑通り妖怪へ憎しみを持つようになると思ってたんだけどね」


 スーツの男は黒峰に対し、「そこのところ、キミはどう思う?」と訊き、当の本人は表情を動かさずに応える。


「そうですね。私からすれば永琳に認識阻害による思考誘導を施していた貴方の方が、正確な見解をお持ちかと愚考いたしますが」


 そのように自身の上司へ語る大樹の目は、無意識か力が入ってしまっていた。

 組織に身を置く一員として上司と共謀はしたものの、やはり自分が目をかけた愛弟子の自由意志を奪ってしまう行為を良しとした己とそれを躊躇い無く行った目の前の男には思うところがあるのだ。

 だが、当然そんな様子はその目を向けられた上司が一番に解るのだが本人はそれを気にした様子も無くむしろ楽しんでいる気配すらあった。


「仕方ないよね。永琳はキミの弟子だったんだから、師が殺されたことに憤りはしてもそれを成した妖怪の退治なんて普通には引受けてもらえないしさ」


 そう、永琳が冷静に考えられていれば自分が犬人妖怪に敵わないことは判った筈なのだ。

 にも関わらず任務内容を疑うことなく、用意された部下と向かってしまったのは街の上層部の暗躍によるものだった。

 では何故、街の上層部はこのような計画を企てたのか。

 その訳は何者にも優しさを持つ永琳の性格と、スーツの男からして「あの方」と呼ばせる街の最高権力者にあった。


「何か無い? これはこれから月で暮らすようになる永琳のためでもあるんだ。何でも良いから言ってみてよ」


 大樹はしばし上司を睨んだ後「……はぁ」と諦めたように溜息をつき、自分の考えを話し始めた。


「敢えて申し上げるのなら、やはりあの男が原因かと」

「並よりちょっと上の霊力を持つ人間、綺堂魔琴。『治す程度の能力』を発現した極めて稀有な能力者スキルホルダー。だって言ってたけど、どうだかね~。戸籍資料なんかも確認出来たし疑うことでも無いんだろうけど……何だかなぁ~」


 パサっ、とスーツの男は何かの紙束を机の隅へと放り投げ、自身の椅子に深く腰を沈めた。

 実際のところ、この上司の懸念はそう的外れなものでもない。

 魔琴が使った能力は『治す程度の能力』ではなく『なおす程度の能力』であり、戸籍資料も魔琴に自分の秘密を掴まれていると現在進行形で勘違いしている永琳が必死に用意したものだからだ。


「状況証拠と永琳の説明には矛盾は見られませんでしたが、永琳の助手を任せるには不安がある。といったところでしょうか?」

「正にそこ。そうなんだよねー」


 大樹は自身の上司が「ふぅ」と肩で一息ついたのを確認した後、改めて口火を切った。


「何にせよ、自分はもう死人です。表だって動くことは不可能でしょう」

「形式上はね。で?」

「自分が暗部として、綺堂魔琴を調査します。……よろしいですか?」

「うーん、……はぁ。いいよ、うん。その男が人間にしろそうでないにしろ、永琳ちゃんの心に何か影響を与える人物だってことには違い無いし。それが最善でしょ」

「ありがとうございます」

「そのかわり、しっかり調査たのむよぉ? 万一にでも永琳ちゃんが妖怪側につくようなことになっちゃ、僕があの方に怒られるんだから」

「それでは、どうしますか?」

「そうだねぇ……」


 安楽椅子に座す男は「うーん」と腕を組んでしばらく天井を仰いでから大樹に向き直り、命令を出した。


「最後にもう一度仕掛けてみようか」





 暖かな昼下がり、うず高くそびえたつ人工ビル群が並ぶ街中に二人の人物は歩いていた。

 鼻歌混じりに笑顔で前を歩くのは黒髪長髪の着物少女。それに続くように歩いているのが和服にブーツを合わせた銀髪の青年、田舎から出てきたおのぼりさんよろしくキョロキョロと辺りを見回している綺堂魔琴だった。

 街を一歩出れば自然の荒野が広がっているというのに、ここはもう別世界だと魔琴は思う。

 前世でもビル群程度なら珍しくも無かったのだが、どうやらこの街の技術は元の世界よりも進んでいるらしく建物の一つ一つが大気中の霊力をエネルギーに変換して吸収する仕組みとなっているようなのだ。おのぼりさんにもなる。

 閑話休題それはともかく


 なぜこのような状況なのか。

 それは数刻前まで遡る。



「なるほどな。じゃあお前が永琳の言ってた姫さんって奴か」

「ええ。それじゃあ貴方が永琳の助手になる人ですね」


 あの後、同時に疑問詞を口に出した魔琴と少女はお互いがこれから共に生活していくことになった同居人であることを認知した。

 それと言うのも少女には永琳から仕事の助手という名の居候が来ることが説明済みであったこと、魔琴が永琳との会話で他にも住人が居ることを予想済みだったことが助けとなった。


「んじゃ改めて。今日からここで世話になる、綺堂魔琴だ。よろしくな」

「ええ、よろしくお願いします。あいにく私の名前は特殊ですので、呼び名は先ほどのもので結構ですよ」

「特殊?」

「あら、聴いたことありませんか? この街の領主は空に浮かぶ聖なる月の創造者であり、地上の者は名を呼ことの出来ない存在であると」

「初耳だが……つまり、どういうことだ?」

「はぁ。つまり領主は月神であり、その娘である私も呼ぶことの出来ない存在ということです。私の名は父にしか呼ぶことは出来ませんし、父の名は私にしか呼ぶことが出来ません。理解も出来ません」

「ふーん……ん? さっき『地上の者は』って言ってたな。ってことはそれこそ地上を離れれば誰でも解るようになるのか」

「まぁ、そうですね。そもそも私たちの名を地上人が呼べないようになってるのは、いま私たちが立っているこの地が穢れに犯されているからです」

「穢れ? 何だそれは」

「えーと、この地上が+(プラス)と-(マイナス)の霊気で満たされてることは知っていますか?」

「ああ」


 +(プラス)の霊気は人間が使える霊力の元であり、-(マイナス)の霊気は妖怪が使える妖力の元である。


「穢れは-の霊気が強い負の感情で変異してしまったもので、生き物に制限を掛ける特性があるんです。私たちの名前は圧縮言語というもので出来ているのですが、地上の穢れに汚染された脳ではそれを正しく処理出来ない仕組みになっているんです。だから地上を離れれば必然的にその制限も無くなるので魔琴さんの考えは正解ですよ」

「なるほど」


 圧縮言語というのがどういうものかはわからなかったが魔琴はとりあえず納得しておくことにした。平常運転、面倒臭くなったのだ。


「ところで、魔琴さん」

「ん?」

「先ほどまであなたは出かけようとしてらしたように見えたのですが、どこかに行かれるのですか?」

「ああ、ここは割と興味深い街だからな。ちょっと散歩してこようかと」

「あ、でしたら魔琴さん。良ければ私が案内しましょうか?」

「案内? そりゃありがたいけど」


 街の姫様を勝手に連れ出して良いものだろうかと不安になる魔琴だったが、パっと見では自分もどのような場所を周れば良いかわからず適当に散策しようというプランしか無かったので街の住人である姫様に案内をしてもらえるというのはありがたかった。

 そこまで考えた魔琴は本人が良いと言っているのなら良いのだろうという結論を出し、姫様の申し出を受けることにした。


 で。

 それからしばらく歩いた俺たちだったのだが唐突に姫様の方から「話があります」と言いだされた為それではどこかに腰を落ち着けてからにしようと遊具がブランコとジャングルジムだけという簡素な児童公園のベンチに身を移したのだが、姫さんは休む間も無く切り出してきた。


「ある程度の事情は永琳から聴いたのですが、改めて直接聞かせてもらえませんか?」

「俺がここに住むようになった理由か」

「いえ、それもあるのですが」

「じゃあ何だ?」


 そう訊くと、少女――姫様はコホンと咳払いして口を開いた。


「あなたが知った私たちの秘密を、どう思ったかです」

かぐや「さて皆様ごきげんよう、あなた方のアイドル姫ちゃんです。ところで作者様」

作者「はい(´・ω・`)?」

かぐや「前回言いましたよね? 『次回はちゃんと出します』って」

作者「え、だいぶお出になられましたよね(; ・`д・´)?」

かぐや「ええ確かに、前回と比べるとだいぶ出た方でしょう。名前以外は!!」

作者「……はっ( ゜Д゜)!!」

かぐや「どういうことですの? 説明してくださいますよね」

作者「いや、それはその……貴女様が公式の名前を頂いていたのは奈良時代だったと記憶しておりますので……」

かぐや「だからと言って!! ポンポンっポンポンオリジナル設定を入れて誤魔化すなんて何を考えてますの!! これじゃあいつまでたっても私の人気が出ないじゃない!! メインヒロイン狙えないじゃない!!」

作者「あの、すいません。今のところあなたをヒロインにする予定は無いんですが」

かぐや「……はい?」

作者「それではまた二週間後に(^^)/」

かぐや「ちょっ! 待ちなさい!! 話はまだ終わってな「ピチュン!!」」

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