表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

覚醒

7/12 表現修正

頬を撫ぜるおだやかな風と、瞼を透かす日差し。

草のにおい。近く遠くさえずる鳥の声。

覚醒しつつある意識。いや、もう少し寝ていたい。こんなに心地良いのだから。

ひなたぼっこでお昼寝、いいよね。

ひなた……

……


「はぁっ!?」

がばっと上半身を起こす。

そしてあたりを見渡して……



「…………はぁ?」






目が覚めると、知らない草原だった。

いや、この場合、知ってるとか知らないとかそういう問題じゃない。

そもそもなんで外で寝てんだ俺。

思考が追いついてこない。


確か昨日は、今日が翌日なのかもよくわからないが、とにかく最後の記憶は『MaU』のサービス最終日で、カウントダウンから鯖落ちまで見届けて、気が抜けて机に突っ伏したのだ。

多分そのまま寝落ちして……それから……



(はぁ?なにこれ?意味わかんないわ。まじで)



自分の体を見下ろす。

黒無地のTシャツに濃紺のジーンズ。靴下は履いていない。

伸びた足のつめと、昔の怪我の傷跡が見えている。


昨日と変わらない服装だ。

汚れや傷んだ様子もないし、記憶喪失という線はなさそうだ。

念のため頭をぺたぺたと触り、こぶがないか確認する。

頭だけでなく、体にも傷や痛みなどはない。

何か持ち物がないかジーンズのポケットをまさぐっているとき、ふと、気づいた。


眼鏡がない。

ないのによく見える。

あれコンタクトしたっけなと思いつつ目を数度強く瞑るが、ズレる素振りはない。

裸眼視力は0.02と0.04のはずだ。



(……これは、やっぱ夢かね?)



立ちあがり、なぜか良くなっている視力を確認するように遠くを見渡す。

今いるのは緩やかな斜面で、膝ほどの背丈の青草が一面に靡いている。

近くに木はないが、右手下方のほうに黒く見えているのが、おそらく森だろう。

後ろを振り返り、高くなっているほうを見ると、遠くに雪を冠した峰があるようだ。



(日本のようにも見えるし、ちょっと違う気もするな……)



そもそも夢なら自分の記憶から構成されるから、だいたい日本っぽくなるはずだ。

そんなことを考えつつ、今度は空を見上げる。

雲一つない、快晴。

太陽は真上からは少しずれた位置にある。

特に違和感は感じられなかった。




少し歩いてみることにした。

どちらへ進むべきか。そもそも道がないのだ。

しばしの逡巡ののち、とりあえず森へ向かうことにした。

青草がひんやりと足の裏に気持ちいい。

そう、今の俺は裸足なのである。

おっかなびっくりそろそろと慎重に歩き出す。草の下の尖った石など踏んでしまったら目も当てられない。

幸い土は目が細かく、草葉でも足を痛める様子はないようだ。

振り返ると一面の緑で、自分がどこから歩き出したのかさっぱり分からない。

これはもう後ろを気にしてもしょうがない。

踏み出す足元に次第に気をつかわなくなり、安定する足音のリズムに鼻歌も混じりだす。

口ずさむのは今期一番の声も高いアニメのオープニング曲だ。

実は内容は知らないが、曲だけは気に入って覚えている。

それが7、8回ループした頃には、目の前に森が広がっていた。




森と草原の境界は明瞭だった。

草原と同じように、森もただ一種類の木からできているようだ。

空はこんなに晴れているのに内部はかなりの暗さで、目を凝らしても奥のほうは見通せない。

あまりの落差と薄気味悪さを噛み殺し何歩か踏み込んでみると、とたんに草原の爽やかさは消えて失せた。

上を見上げると、密に葉が生い茂っていて光が全く差し込んでいないのがわかる。

何も生えていない地面は黒い土がむき出しになっていて、僅かな湿気と足に感じる冷たさは草原と大差はない。

暗さに目が慣れてくると、いくつかの木の根元には草原とは違う草が生えているようだ。

しかしそこまで踏み込むのも躊躇われる雰囲気で、俺は早々と太陽の下へ戻った。

そのまま森の外周に沿って進んでみることにする。



(ちょっとこれは入っていけないな……迷子になるかも、とか以前の問題だ。うん)



森の雰囲気の陰鬱さは現実感がなく、これは夢かも、という俺の予想を後押しした。



頭上では、太陽がその位置を僅か地平線へと進めていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ