表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

~葉月~

お兄ちゃんは下を向いて廊下を歩いていた。お兄ちゃんとすれ違ったクラスの男子ふたりが振り返って指を差している。

すれ違う私の同級生たちは、面と向かっては見ないものの、気になっているようで、ほとんどの子がお兄ちゃんとすれ違うと振り返る。

私は足早にお兄ちゃんの横を通り過ぎたが、すれ違う瞬間に視線がお兄ちゃんに引き寄せられた。白い体操服のシャツと、その裾に隠れて白いパンツが見えた。お兄ちゃんは唇をぎゅっと噛み締めていた。

「ズボン履いてなかったよね…」

「どうしたんだろう…」

「あれ葉月のお兄ちゃんだよね…」

クラスの女子がヒソヒソ話すのが聞こえた。



校庭から笛の音が聞こえる。

どれがお兄ちゃんか、二階の私の教室から見ても一目で分かった。体操服に短パンの同級生に混じって、下着姿のお兄ちゃんは列に並び、体操をしている。

保健室の斉藤先生が笛を吹いている。

お兄ちゃんは下半身を手で隠すこともできず体操をしていた。

さっき授業がはじまってすぐ、お兄ちゃんはみんなの前で泣いているようだった。



次は私達が運動場で体育の授業。お兄ちゃんのクラスの教室の前を通る。

お兄ちゃんの教室の前は他の学年の人たちが、休み時間のたびにお兄ちゃんを覗きに来るので異様に人通りがある。

私と歩いている同級生も、歩調を緩めて教室を覗く。私は早く通り過ぎたいからそうしたつもりなのに、ゆっくりと私の目には下着姿のお兄ちゃんが写った。

お兄ちゃんは椅子に座り、教科書を開いて下を向いていた。体育の授業を終えたお兄ちゃんのパンツのお尻は、砂で汚れていた。周りにクラスの人はいない。ひとりだけ下着姿のお兄ちゃんに、友達も声をかけづらいのだろう。

「かわいそう・・・」教室を覗いた同級生がつぶやく声が聞こえた。



「お兄ちゃんのバカ・・・」

小さく呟き、私は足早に運動場へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ