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wwwww

作者: りつりん
掲載日:2026/05/29

 今度の引越し先はどこだと思う?

 んー、あはは。

 違う違う。

 息子さんのじゃなくて、隣の越田さんのスマホの中だよ。

 今、私たちが住んでる飯島さん家のお母さんスマホ、そろそろ買い替え時みたいだし、かと言って息子さん、スマホ乱暴に扱ってすぐに壊すらしいから、ね。

 まあ、違う家族のスマホにネットを介して入り込むのは正直、怖いけど、そろそろ思い切ってそれもありかなって。

 これまではさ、この家のWi-Fiの回線経由して、お父さん、お母さんとスマホを移動してきたけど、さすがに息子さんのに入るのは怖いよね。

 かといって、またお父さんに戻るのも……。

 え、だって、飯島さんのお父さん、その、エッチな動画ばっかり見るんだもん。

 私、もう嫌。

 あなたにだって、そう言うの見てほしくないし……。

 まあ、とにかく。

 スマホ通したやり取り見る限りは、越田さん、同じスマホを大切に長く使うタイプの人らしいから、きっと今度は長く住むことできると思う。

 あ、ううん。

 いいの。

 私の方が先に見つけただけだよ。

 あなたも一生懸命次の引っ越し先、考えてくれてたの知ってるから。

 ふう。

 それにしても、私たち夫婦が電子生命体になって久しいね。

 悪の組織的な何かに襲われて、変な薬を飲まされて、気が付けば電子の海を漂っていたあの日のこと、今思い出しても震えちゃう。

 あの時、あなたが力強く「ってことはさ、人間の寿命で死ぬことはないわけだし、この世界《電子の世界》が終わるまでずっと一緒にいれるってことだね! 何百年単位とかじゃないかな? 嬉しいよ!」って言ってくれたからここまでやってこれたと思うの。

 うん。

 ありがとう。

 あなたの愛してるが一番好き。

 でね、次に引っ越すタイミングで離婚してほしいの。

 離婚って言うのかな?

 書類とか特にないし、社会的な人間としての離婚とはまた違う気もするけれど。

 まあとにかく、離れたいの。

 うん?

 どうしてって?

 ふふ、そんな驚いた顔しても駄目だよ。

 誤魔化しちゃ駄目だよ。 

 だって、私知ってるんだよ。

 あなたがネットを介して、別の電子生命体の女と浮気してること。

 あなた言ってたよね?

 ネットの海は広すぎて同じ場所に返って来れるかわからないから、絶対に二人一緒にいて、絶対に特定のスマホとかパソコンから引っ越しの時以外出ないようにしようって。

 私たち以外に電子生命体がいるかもしれないけど、そいつらが安全かはわからないし、接触も可能な限りやめようって。

 それこそ、ウイルスとか怖いしって。

 言ってたよね?

 なのに、なんであなたは夜な夜な出て行ってるの?

 私が知らないとでも思った?

 夜、スマホから出て行って、朝方、こっそりと私たちのいるストレージの隅に帰ってきてること知ってるんだよ?

 ていうか、私も電子生命体だから眠らないんだけど。

 本当に寝てると思った?

 思ってたの?

 いや、普通思わないでしょ。

 だって、あなた、寝たことある?

 この体、というか、この存在になって寝たことある?

 ないでしょ?

 うん、あなたもなら私もだよ。

 なのに、なんで私が寝るって思うかな。

 寝たふり以外の何物でもないでしょ。

 もし、『寝る』っていう感覚に近いものがあるとしたら、『シャットダウン』じゃない? 

 シャットダウンの時は半ば強制的に意識をなくすしね。

 まあ、人間の時の睡眠と違って、寝る直前は、次いつ起きれるんだろうっていう不安はあるけど。

 はぁ……。

 なんかもう嫌になっちゃった。

 なんであの時、襲われちゃったんだろ……。

 そうじゃなければ今頃、幸せに人間として暮らしてたのかな?

 もちろん、あなただって、浮気することもなかったよね。

 違う?

 何が?

 ……え? 

 ちょっと待って……。

 この写真や動画データって……。

 これ、私のインスタフォロワー10万人突破記念でアップした動画じゃない?

 うん、これは、私のtiktokアカ開設記念で投稿した写真だ。

 えー、これって私のFacebookのアイコンじゃん。

 あはは、私若いな。

 若いなって言うか、この世界に来てからは見た目も何もわからないけど、それなりに経つせいか、若く感じちゃう。

 ほんと懐かしい、って、どうしてこのデータ持ってるの?

 飯島さんのスマホの中にあったわけじゃないよね?

 君が人間だった頃の証をどうしても残したくて、ネットの海から集めてきた?

 今日は結婚10年目の記念日だから?

 嘘……。

 そんな……ご、ごめんなさい……。

 私、あなたを疑ってたのに。

 ごめんなさい……。

 気にするな?

 こんな場所にいればしんどくもなる?

 ……ありがとう。

 愛してる。

 ごめんね。

 えへへ、こういう時ハグできないのはもどかしいね。

 電子生命体として、こう、存在を重ね合わせるのはできるけど、それはハグじゃない気がするし。

 え、ていうか、こんなに拾って来たら、このスマホのストレージ圧迫しちゃうし、次のスマホへの移動も難しくないかな?

 というか、こんなに圧迫したらって、ほらー、早速飯島お母さん、消していってるし。

 んふふ。

 また拾ってくるから大丈夫って。

 もう、あんまり変なことすると、スマホすぐに買い換えられちゃうかもだし駄目だよ。

 まあ、私のことを危険侵しちゃうくらい愛してくれてるのはわかったけど。

 じゃあ、今度は私が君のを集めてくるって言いたいけど、君は写真とか動画、ほとんどネットに載せなかったもんね。

 まあでも、それもそれでいいか。

 君を独占できてるみたいで嬉しいしさ。

 ほら、じゃあ引っ越ししよ?

 ふふ、次はちょっとずつ集めてきてね。


―――――――――――――――――――――――


とある日のSNSでのやり取り①

『最近、急に知らない女性の画像がスマホのストレージに出現してこわたにえん。検索すると、10年以上前に行方不明になったインフルエンサーらしいけど、なんなん? 怖くて爆速で消しちゃったよ』

『それってもしかして、この人?』

『あ! その人です!』

『実は、私のスマホにも現れたことあります』

『怖いですね……。何かの呪いでしょうか? 怖くてたまりません』


とある日のSNSでのやり取り②

『色んな人のスマホとかに入り込んでくるこの女の人さ、確か、十数年前に失踪した人だよね?』

『たしかそーだったはず』

『じゃあこの男の人は?』

『誰これ?』


とある日のSNSでのやり取り③

『勝手にスマホ侵入女のアカ、まだあるやん。てか、この人、失踪ってみんな言ってるけど、ほんとに? 殺されたとかいう情報もあるけど。そもそも、失踪てのも別にニュースとかになったわけじゃないよね? そう噂されてるだけって話で』

『火がないところに煙はって言うし、ありえなくはいかも。こう、自身の非業の死に気づいて欲しくて画像とかを幽霊が流してるとか?』

『いや、そう言われると急にハイテク』


とある日のSNSでのやり取り④

『スマホ女、病死してたって噂もあるよね。そんで、夫の方がインフルエンサーだった妻のことをみんなに忘れてほしくなくて、妻の写真をネットを介してスマホにばらまいてるって』

『夫の愛、強すぎる』

『まあ、写真を入れられちゃう方としてはシンプルに怖いし、そもそも、夫の謎技術力前提の話だから、眉唾過ぎる話だけど』

『たしかに。そんなことするなら、シンプルに妻のアカウントを定期的に運用して忘れられないよう、発信すればいいだけだもんな』


とある日のSNSでのやり取り⑤

『俺の聞いた話だと、女の夫は天才科学者だったらしい。そんでもって、女はインフルエンサーで露出多かったゆえに交友関係広くて、多くの異性からも言い寄られてた。それで、嫉妬に狂った夫が妻の存在そのものを電子データに置き換えて、ネットの海に流したとか』

『それは突飛すぎでしょ。AIとかそう言うレベルのテクノロジーじゃない。オーパーツ感ありすぎて、嘘松も裸足で逃げ出すレベル』

『謝れよ……。俺の姉ちゃんに謝れよ!』

『おけ』

『ライトぉ』


とある日のSNSでのやり取り⑤

『うーん。あの女性の画像さ、ほとんどがSNSアカに載せられてるやつだけど、一つだけ、ネット探しても出てこない画像があるらしいんだよね』

『そんなんあんの? 初耳』

『あるんだよ。女性じゃなくて男性だけど』

『???』

『ああ、すまん。言葉足らずだった。女性の画像とかは基本的にネットの特定のアカからのやつなんだけど、たまに全然関係ない男の画像も紛れ込んでるらしい。そいつが彼女の夫じゃないかとか言われてるって話』

『ああ、そういうことか』

『そそ。んで、その男の画像だけは検索しても何も見つからんのよね』

『でも、そんな噂があるってことは、男の画像をアップする人もいたんやない?』

『いや、それもネットにアップすると消えるらしい。女の画像とは違って』

『???? なんじゃそりゃ。まあでもさ、ネットにないものがネットにある画像と混じってスマホに入り込んでくるってことは、どこかのスマホからわざわざ取り出してる? いや、それとも、この女の画像もそもそもネットにあるものじゃない?』

『後半、混乱』

『俺もよくわからんくなってきた』


とある日のSNSでのやり取り⑥

『うーん。この男の顔、どこかで見たことある気がする』

『ネットで?』

『いや、リアルで。どこだったかは覚えてないけど、ここ一年以内だったような』

『どこで見ましたか?』

『急に割り込んでくるやん。誰?』


とある日のSNSでのやり取り⑦

『で、結局、この女を巡る噂って何がほんとなのさ?』

『なんなんだろね。まあ、気にするだけ野暮ってもんだよ。二人は案外幸せかもしれないし』

『イミフ』


とある日のSNSでのやり取り⑧

『ちょっとずつだけどさ、あのスマホ女のXのアイコン、変化してる。こんな顔じゃなかった』

『モノより思い出だよ』


とある日のSNSでのやり取り⑨

『最近、スマホ女がスマホに出現したって話聞かないな。成仏した?』

『解釈違い』


とある日のSNSでのやり取り⑩

『赤ちゃん生まれた!』

『おめでとう!』

『ありがと! 写真、まだできてないから、また後でアップする』

『おけまる! どっち似?』

『どっちにも似るようにしたい』

『希望が謎過ぎwww』

『wwwww』

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