ダルマ・アダルマ
遺影がツボだった。僕は全然世代じゃないけれど、子供のころにミスターブーシリーズのDVDを見ていた。親のDVDケースに入っていた。完全にそのせいだ。遺影がツボで、その一点だけがすこぶる不謹慎な子供だった。だから今すぐミスターブーを規制するべきだ。それによって僕の人生が少しでも好転するわけでもないけれど、僕はこうやって現代節の使い心地を確かめてみることがある。たまの休みを乗っ取って行く犬猫動画の傍ら、僕はこうやって現代節の素振りに励むことがある。ニュースで交通事故の話を流していた。昔から遺影がツボだった。
一族のあいだで美徳は義務化され、美徳の絶えた一族には不徳が蔓延るであろう。不徳が蔓延ればまず婦女が堕落し、婦女が堕落すれば血筋の混乱が生まれる。血筋の混乱は一族の破壊者と一族とを地獄へ導く。それは、それはそれは、それは。それは永遠なるジャーティの達磨。
急に変になったというより、急に入れ込むことで変がってみた。最近読みだしたんだ。バガヴァッド・ギーター。面白くはないけど、こういう面白くないものに対して価値を見出しにくいような環境で、僕は長く暮らしすぎた。きっと他の人もそうだ。バガヴァッド・ギーターはすごい。名前が長くて知らない奴らがずっと戦争かセックスをしている。うーんでも、神話って大体そういうもんだ。なんで僕はこんなものを読んでるんだろう。時々急に、冷めることがある。熱するより冷めたい、冷めたがりなのかもしれない。頭の中、映画の西部の酒のみに「ひでえ女だ。」って言われた。正確には思い出した、だ。
新しく開発され、三日前に完成したアザラシ発電機。ついに夢のアザラシ発電機だ。駅に行ってもコンビニに行っても、貼られている広告はアザラシ発電機ばかり。カラフルな虹の下に、ポップでかわいいアザラシの絵が描いてあるんだ。アザラシ発電の広告が可愛くても逆につらいと思うけれど、これでも案は会議を通ったんだ。言いたいことがあるならまず会議に参加することだ。そのためには前もって入社面接を受けて採用してもらうことだ。そんなムダ話はいい。なんせ僕は、アザラシ発電で使用される最新タービンを昨日盗んできたところだ。すごいぞ。発電って技術はどこまで行ってもタービン頼りだ。いや太陽光は違うんだっけ。まあいい。回すか回さないかの違いに見えて、回路には電流がいつだってグルグル回っている。そして本当に大事なのは、アザラシ発電用タービンが今僕の手元にあるってことだ。これで何しよう。うちで野良犬発電を始めてもいいし、売ったっていい。売ったっていいにピアノと木琴の音が追加されたのは僕の頭の中の出来事だ。ニュースになってる。『アザ発タービン 盗難か』だって。『タービンはでか過ぎて人の手では運べないから人の仕業ではない方向で捜査を続けている』だって。何の脈絡もない、遺影がツボだった。