第8話
街に戻り、露天商が並ぶ通りに向かった。朝のような人混みは消えており、シャルティー母娘の姿は無かった。どうやら言いつけ通り、早めに店を終わらせて帰ったようだ。
「シャルティー、ライターは売れたかい?」
シャルティーの家に行くと、母娘が正座して俺を待っていた。
だ・か・ら、俺にはそんな性癖とか無いからね!
「これが今日の売上です」
そこには硬貨別に積み上げた凄い量の金貨と銀貨があった。
「・・・えっと、いくら売れたのかな?」
「金貨83枚、大銀貨952枚、銀貨10190枚です」
つまり・・・金貨280枚分って事か?日本円換算で2800万円相当??
売り過ぎだろ!! 2人でどんだけ頑張ったんだよ!
ライターの個数的には今日だけで5600個売った事になる。まだ6分の1しか売れて無いとも言えるけど、1日で売るような量じゃないだろう。
「そ、そうか。・・・そう言えば2人の取り分を決めて無かったな。売り上げの半分で良いか? 今日は金貨280枚分の売上だから、その半分が2人の取り分だ」
「っそ、そんなに貰えませんよ」
「勿論、俺が払った君たちの借金の分はそこから返してもらうよ。だから今日の取り分は金貨110枚分になるよ」
「それでも貰い過ぎです」
「ライターは今日渡した分しか無いんだ。売り終わったら2人に手伝って貰う事も無くなる。だから、それまでにお金を貯めて今後の事に使って欲しい」
今回用意したライターは全部で34500個だから、全部売ったら2人の手元には金貨800枚が残るはずだ。日本円にして8000万円相当、これだけあれば商売の元手としては充分だろう。そのまま食い潰すにしても30年は遊んで暮らせる金額だ。
こんなに人に親切にされたのは初めてだと、ケイティーさんは泣き崩れてしまったが慈善事業じゃないんだ。俺もラクして稼ぐ為に2人を使ってるから、そこまで感謝されても困る。
それに申し訳ないけど、俺は2人の人生まで背負う事は出来ないからこのお金で頑張って生きて欲しい。
☆
ライターの販売から10日が経った。予定通り金貨800枚を得たケイティーさんは少し若返ったように見える。経済状況が良くなって食事が改善されたからだろうか、見た目が30代から20代後半になっている。40歳の俺からしたら、どっちでも若い。
シャルティーは自分に自信が持てたようで少し大人びて見える。借金取りに囲まれて、小鹿のように震えていた面影はもう無い。
2人は店舗を構えて商売を始めるそうだ。シャルティーは雑貨屋をしたがってるようだがケイティーさんはパン屋をやりたいそうだ。何のお店でも良いが、上手く行くと良いな。
チョビ髭屋には、マジックバックに残っていた在庫の殆どを売り付けた。金貨13000枚になった。初めて白金貨を見たが鑑定するとプラチナのようだ。日本では金の半分の価値だったと思うから白金貨を日本で売るのは止めておこう。
魔法屋に珍しい魔法球が手に入ったら教えて欲しいと伝えてあったが、前回ゴネた事がまだ尾を引いているようで渋い顔をされた。
日本で購入していたドーナツをプレゼントしたら機嫌が直った。チョロイ!
ドーナツ効果で幾つかの魔法球を買えたので良かった。
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エイジ 40歳 レベル25
スキル 魔力循環 生活魔法 鑑定 身体強化
火魔法 風魔法 土魔法 水魔法
回復魔法 付与魔法
剣術 アイテムボックス テイム
槍術 索敵 気配遮断
称号 異世界人
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ウォーバッファローを狩りまくったのでレベルも上がった。索敵と気配遮断を使うと狩りの効率がグンと上がった。
それからは毎日ウォーバッファローを20匹以上狩っていたが、ギルドの解体場から「1日10匹までにしてくれ」と言われてアイテムボックスの肥やしとなっている。
ゴールデンウルフやヴィグベアーなどの強力なモンスターも倒せるほどになったが、これもアイテムボックスの肥やしになってる。
そろそろ旅に出ても大丈夫だろうか。
レベル的には一般的な兵士と同等だとは思う。魔法が使える分有利に戦えるだろう。
問題は移動手段だ。この世界の主流は徒歩か馬車だ。俺は馬に乗れないし、御車も出来ない。
乗合馬車も有るにはあるのだが、徒歩よりも少し早いくらいだ。そして乗合馬車の場合は、俺がイツも食べている日本製の弁当を1人だけ食べる訳にもいかない。
「はぁ。悩ましいな」
野営も必要だろうから、日本でキャンプ道具を一式購入してからの出発が良いかな。
☆
日本に戻った俺は旅支度の買い物をする。金貨1500枚を売却したお金はまだ振り込まれてないので、当然支払いはカードだ。買い物の途中、カードが限度額を超えて使えなくなった。ライターの仕入れに90万円以上使っていたから仕方が無い。
いつもの金の買取店に行き、店員には「蔵を掃除してたら、また5枚出て来た」と適当な事を言って現金を作った。
今回は以前よりも多くの食料を購入する予定だ。
バーガー屋では「この人頭がオカシイの?」という目で見られてしまった。まぁ持ち帰りで100食分買えばそうなるよな。
弁当屋では「50食分以上は前日からの予約でお願いします」と断られたので、明日受け取りに行く事にした。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。