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第29話

 俺たち3人は王都を出て東へ進んでいる。特に目的地は無い。いや、俺だけ教えられてない可能性はある。

 兎に角、魔物が多い地方へ向かって進む。


「ウチがヤルにゃ!」


「あたしの方が早いわ」


 馬車の前に魔物が出る度に、2人そろって魔物を倒しに行く。

 俺はそんな光景を微笑ましく見ているだけだ。


 テーブラ レベル49

 クロッチ レベル47


 王都を出てから街も2つ過ぎた。2人のレベルはガンガン上がっている。

 怪我をしても俺が回復させるので、2人ともイケイケで魔物に突っ込んでいくのだ。見ている俺はハラハラしているが、当の本人たちは競うように強さを求めてる。

 女って結婚すると変わるんだなぁ・・・こっちが素だったのかな。


 夜の営みも、宿に泊まる度に大変だ。

 安宿では壁が薄いので結構な金額のする宿に泊まるし、毎晩毎晩搾り取られる。

 魔物の居る場所で野宿する方が安眠出来るのは俺だけのようだ。


 ☆


 王都を出て3つ目の街に昨日着いた。

 今朝も、テーブラはお肌の艶が良さそうだ。クロッチも毛並みが輝いて見える。俺の奥さんたちは美しいな。

 そして俺は干からびる寸前だ。


「エイジは今日、商売の予定よね?」


「そーだな」


「じゃあ、あたしとクロッチはギルドで討伐依頼を探してみるわ」


「そーだな。気を付けるんだぞ」


「わかってるにゃ!」


 2人は冒険者ギルドへ、俺は売り付ける商店を選びに宿をあとにした。

 今回俺が売り付けるのは大学ノートだ。初めて売る商品なので数は1万冊しか用意してない。売れるだろうか。


 心配は杞憂だった。1万冊のノートは金貨1万枚になった。日本円で10億円相当だ。もうそろそろ一生分の金は稼いだような気がする。

 今後は奥さんたちと定住する場所を探すのも良いな。


 早々に予定が終わってしまった俺は冒険者ギルドへ向かった。

 もう2人は依頼を受けて出発している頃とは思うが、俺も何か討伐依頼を受けてみようと思った。


 地竜の討伐があった。はぐれらしく1匹で草原をうろついてるらしい。

 草原へ向かう途中、街道から少し外れた場所で誰かが戦っていた。


「!!テーブラだ!」


 俺は全力で走りテーブラの元へ駆けた。

 急げ、急げ、急げ!、急げ!!、あと200メートル、あと100メートル・・・

 間に合っ・・・あ・・・テーブラの胸から入った剣が背中を突き抜けた。


「エリアヒール・・・エリアヒール・・・」


「ああ?また1匹増えた、お前はなんだ?」


「エリアヒール!」


 もう2人は動かない。な、なんで。どうして治らない。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 テーブラ 23歳  レベル--

 力  -

 体  -

 速  -

 知  -

 魔  -

 スキル 

 状態  死亡

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 クロッチ 19歳  レベル--

 力  -

 体  -

 速  -

 知  -

 魔  -

 スキル 

 状態  死亡

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 その重く、冷たく、無機質な2文字が、俺を現実に引き戻そうとする。


「聞こえてねぇのか?ついでだ、お前も」


「ウルセー。どうしてこんな事を・・・」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ??? ??歳  第4位階

 力  ?

 体  ?

 速  ?

 知  ?

 魔  ?

 スキル 

 称号  悪魔族

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お前は歩く時にアリを避けて歩くのか?」


 何を言ってるんだ?悪魔にとって人間はその程度の生き物だと言うのか?だからテーブラとクロッチを殺したのか?


「悪魔だからって偉そうにすんじゃねー」


 俺は激情に任せて剣を振る、振る、振る!

 悪魔はその全てをヒラリと躱して見せる。


「人間は遅いな」


「エアカッター」

「フレイムランス」

「ストーンスピア」

「ファイヤーストーム」


「な!人間のくせに」


「ウォータープレス」

「アイススピア」

「アイスフィールド」

「サンダーストーム」


「こ、この人間風情が!」


「アクセル、死ねーーー」


「グハッ!!」


 腕1本じゃ、まだだ、まだ斬り足りない。


「アクセル、スロー、死に晒せーー」


「ガハァッ!」


 まだだ、まだまだ斬って斬って斬り殺す。


「アクセル、アクセル、スロー、死ね!」


「あッ」


 悪魔の首が飛んだ。

 原形がわからないほど斬り刻まれたその体は、灰に変わった。。


「・・・2人を返せ!あぁ・・・テーブラ、クロッチ・・・」


 2人は心臓を一突きで殺されていた。

 何故・・・。幸せになろうって約束した所だったのに。


 俺は泣いた。涙で何も見えなくても泣いて泣いて嗚咽を繰り返す。


「どうして・・・」


 俺の涙を夕日が照らし始めた。

 俺は2人の遺体をアイテムボックスに入れて宿に戻った。


 無駄に広く豪華な部屋は、昨夜とは一変して静か過ぎる。

 奥の大きなベットを見ると涙が溢れて止まらなかった。


 ☆


 翌日、ギルドへ事の顛末を報告した。

 この世界での埋葬方法を知らなかったので訊くと、街の外に集団墓地が有ってアンデット対策に火葬するのが一般的らしい。


 ギルドの職員に案内された所で遺体を出すと、また涙が溢れる。


「ごめんな、約束守れなくて。ファイヤーストーム」





 俺は、その日の内に街を出た。



この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。


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