第22話
地竜との戦いで怪我1つしなかったので万能薬の効果を確かめる事が出来なかった。
高価な薬らしいので適当な人に試す訳にもいかない。万能薬は有名らしく、そんな物を配ってるのがバレたらトラブルの元だ。
しばらく考えたが良い案が浮かばないので、あの社長に言ってみることにした。
佐倉木コンツェルンには薬学研究をする人もいたようで、後日会える事になった。
「ご無沙汰しております、佐倉木さん。こちらの方が?」
「ああ、紹介しよう。千秋院千秋君だ」
紹介されたのは、見るからに赤渕メガネが似合いそうな30代くらいの女性だった。
てか、凄い名前だ。命名した親の顔が見たみたい。
「私は薬学研究をしている千秋院だ。万能薬を持っていると聞いたんだが、本当かね?」
「はい。まだ試していませんが本当です」
「はぁ?まだ試していない?馬鹿にしてるのか?」
うーん。彼女に一番似合う言葉は“高飛車”かな。試してもいない薬を万能薬だと言い張る人間が現れたら当然の反応かもな。
「じゃあ、これを渡しておきます。現代医学が匙を投げた患者なら人体実験にも応じるでしょう?」
「・・・あんたも良い性格してるね。それが、私の妹よ」
俺が万能薬を2粒入れたピルケースを渡すと、千秋院さんは退出して行った。
「悪いね。彼女は優秀だが個人的感情が入りやすいんだ」
「構いません。これで効能がわかります。協力には感謝します」
俺は佐倉木さんと暫く世間話をして、佐倉木さんにも2粒入りのピルケースを渡した。
「これは保険と感謝のしるしです。必要だと思ったら佐倉木さんの判断で好きに使って下さい。まだ効能は証明されてませんけど」
俺が帰ろうとした所で、ドアが開き千秋院が駆け込んできた。
「あれは何なんだ!死にかけてた妹が完全に回復したぞ!」
「だからあれは万能薬です。研究して欲しいからお持ちしたんです」
「そういう意味じゃない。あぁいや、研究はしてやる。私の全てを賭けて研究する。だからあれはもう無いのか?残りはいくつある」
妹さんが助かったようで良かったよ。でもテンション爆上がりで彼女が何を言いたいのか良くわからないが、この様子なら科学的な研究も進むかもしれないな。
「残りは100粒です」
俺も手元には残したかったが研究用に提供する事にした。
「100粒も!これが、この薬が大量に作れるようになれば・・・」
「えぇ。病気で苦しむ人が激減するでしょう」
「・・・その代わり製薬会社は倒産し、医療そのものが衰退するわ」
「俺は医療の衰退も終焉も望んでません。ただ効能が知りたかっただけです。その辺は巧くやって下さい」
「わかった、研究は極秘に進めるわ」
「千秋院君。研究結果は会社にも学会にも報告するな。私にだけに報告するように。これは佐倉木コンツェルン代表としての命令だ」
佐倉木さんが仕切るなら医療が崩壊するような事はさせないだろう。
この件は2人に任せておけば良いかな。
でも、死にかけの人が回復したならヒールと同等かそれ以上の可能性もあるかな。
☆
万能薬の在庫が13粒になってしまった。地竜の血液はまだ大量にあるので異世界で作って貰う事にした。
「あぁ、あんたかい。あの後ギルドからの依頼で万能薬を作る事になったんだが、血以外の素材が足りないくらいなんだよ。たぶんこの街の在庫はほぼカラだろうね」
マジですか。ギルドに渡す前に相当な量をゴミ袋に詰めて確保したのに、そんなに血液が残ってたのか。
もしかして、普通の人が地竜を倒してもアイテムボックスが無かったらギルドに持ち帰る前に流れ出て殆ど残らないのか?だから今回は他の素材が足りなくなったのか。
「素材を自分で集めたら、俺でも万能薬は作れるのかい?」
「そりゃあ、錬金術を取得してないと無理だね。それに血以外の素材は採取される場所が限られてるから1人で集めるなら半年は必要だよ」
仕方が無い。素材を買い取って自分で作るか、作って貰うかは別として素材だけは確保するようにお願いをした。
魔法球で錬金術が見つかれば良いんだけど、望み薄だからなぁ。
☆
俺は日本に戻って、ゴロゴロしている。
俺が日本に居ないと日本の時間が進まない。リフォームをサッサと進める為に日本に滞在する必要あるのだ。
折角アパート全部が俺の物になったので、俺以外の住人は退去して貰うようにした。
他の部屋もまとめてリフォームして、アパート丸々俺の家に改装する予定だ。元々の俺の部屋だけそのままなので、奇妙な豪邸が完成する事だろう。
設計を含めて完成には3カ月必要らしい。費用の見積も当初の800万円から2000万円に爆上がりだ。
以前、探偵事務所に大金を払ってるので、そろそろまた金貨を売却する必要がある。
税金の事を考えると恐ろしくて夜も眠れない、ので昼間からゴロゴロして惰眠を貪っているのだ。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。




