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第2話

 自宅へ戻った俺は、1人で黙々と生活魔法の練習をしている。店内で叫ぶ程興奮してしまい、自宅へ戻ってからも人生初の魔法を楽しんでいた。

 どうやら、トーチは最大でも5センチの炎しか出せないようだ。ライターやマッチが有る日本では活用する場面が無いだろう。

 ライトは頭上に5センチほどの光源を出現させる事が出来た。持続時間は30分くらいだ。体感的には60ワットの電球程度の明るさだろう。

 ウォーターは手のひらから水がチョロチョロと出て来た。トーチと同じで魔力を込め続けないと止まってしまう。ペットボトルで計測したが、毎分1リットル程度の水量だった。

 クリーンは汚れを分離する魔法だ。築50年のボロい部屋にクリーンを掛まくった。驚くほど部屋が綺麗になった。特に台所とトイレは新品同様だ。ただしウォシュレットは最初から付いて無い。


 魔法屋のお姉さんからは、生活魔法も使い過ぎたら魔力が枯渇すると訊いたが全く魔力が減った気がしない。謎だ。

 謎と言えば、異世界の文字が読めたし、言葉も通じた。どうしてだろう?

 それを言い出したら、押入れが異世界に通じている事の方が説明が付かないな。


 考えても答えが出ない事は、考えないようにしよう!


 今日の戦利品は生活魔法だけでは無い。冒険者ギルドにも登録してギルド証を手に入れた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 エイジ 40歳 

 スキル 魔力循環 生活魔法

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 基本的に冒険者にはランクは存在しないらしい。自信が有るなら初心者でも龍の討伐を受けても良いようだ。完全に自己責任の自由業のような感じだろう。

 ただし、護衛関係はギルドが認めた人しか受けれない。強さと信頼性の両方が必要らしい。俺は受ける気が無いので関係の無い話しだ。

 因みに、護衛依頼が受けれるようになると年齢の横に“〇”印が記載されるようだ。


 このギルド証が、魔法くらいファンタジーな性能を持っている。本人が触っている時だけスキルが表示される仕組みだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 エイジ 40歳 


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 床に置くと名前と年齢しか表示されない。布越しに触っても表示されない。どんな仕組みなんだろう?


「ファンタジーに理屈を求めるのは間違っているのかも知れない」


 うん。考えるのは止めよう。


 ギルド証の発行に大銀貨1枚使ったので、残りは金貨1枚と大銀貨9枚だ。明日は金貨と大銀貨が日本でどれだけの価値があるのか知らべに行こう。

 冒険者ギルドでは異世界の通貨も知る事が出来た。

 大金貨 100万円

 金貨   10万円

 大銀貨   1万円

 銀貨     千円

 鉄貨   100円

 銅貨    10円

 宿屋の料金を参考にすると、これくらいの価値のようだ。

 大金貨の上には白金貨も有るようだけど普通の人は一生見る事は無いらしい。

 このレートが正しければ、100均のコップが100万円相当で売れた事になる。錬金術というよりも詐欺に近いな。

 魔力循環と生活魔法を覚えるのに80万円相当を払った事になる。庶民が魔法を使うには結構ハードルが高い世界だな。


 ☆


 翌朝、金の買取店で調べて貰うと金貨は18Kだった。本日の金レートだと11万4300円と言われたので、その場で売った。

 銀貨も買い取れるか聞いてみると、買い取れるそうなので大銀貨も売却した。大銀貨は6200円だったので、少し損した気分だが17万円を受け取った。


「もう、働かなくても良くね?」


 ブラック企業で働いてた時の月収より多い金額を1日で稼いでしまった。それも100均のコップ1つで。

 正確にはコップ1つで金貨10枚なので、全部を換金したら114万円だ。税金をガッポリ取られそうなので税理士にお願いしようかな。


 俺は100均でコップを20個購入し、再び異世界へ向かった。

 俺が日本に居る間は異世界の時間は経過してないはずなので、今は冒険者ギルドに登録した直後だと思う。

 今回はコップ20個を売る予定なので、小さな雑貨屋では無く大きな店を探す。


「掘り出し物を持って来たんだが、買い取って貰えるかい?」


 コップを持って店員に声をかけると、俺が持っていたコップを見つめたまま店員は一瞬固まった。


「・・・っしょ、少々、お待ちください」


 再起動した店員は店の奥に駆け出して行った。

 奥から現れたのはチョビ髭を付けた恰幅の良い男性だ。


「初めまして。私が店主のチョビーノと申します。早速ですがお売り頂ける商品というのは、その手にお持ちのガラスのグラスでございますか?」


 俺は奥の個室に通されて商談開始だ。


「これいくらで買います?」


「・・・大金貨1枚、いやっ、2枚で」


「んじゃ20個あるから大金貨40枚で売ろう。それと、これも渡しておこう」


 俺はコップ20個とA4コピー用紙10枚を渡した。


「こっ、こんなに白くて均一な紙は見た事が有りません」


「今回だけは、紙は無料で良い。金額次第で今後は売ろうと思っている」


「うひょー。よろしいのでございますね?」


「まぁ、今後ともよろしくってことでいいよ」


「わかりました、勉強させてもらいますよ!」


 チョビ髭店主のテンションが途中からオカシかったが、商談は成立したので“良し”としよう。

 大金貨40枚を金貨400枚で受け取る事にした。日本でのレートを考えると、たぶん金貨が一番効率が良さそうだと思ったからだ。

 ただ、金貨400枚がクソほど重い! 推定で3Kg~4Kgだろう。ダンベルだと思えば軽いのだが、財布がこの重さというのはイカレてる。どこの世界にこんな重い財布を持ち歩く人がいるんだ。

 俺が金貨の量にウンザリしていると、店主からマジックバックを勧められた。手のひらサイズの巾着袋で中は1立方メートルくらいの広さらしい。このサイズは大量生産品で小容量、時間停止機能も無いから財布として使う人も多いそうだ。砂漠に住むカエルが素材で、雨期に1年分の水分を体内に取り込む魔物らしい。

 1つ金貨1枚だったので10個買う事にした。押入れが使えなくて困っていたから、荷物の整理には丁度良い。

 ただし、デザインが超ダサい。絵柄はそれぞれ袋毎に違うが、どれもこれも小学生が描いたような絵が描いて有る。これが異世界の流行なのだろうか? 

 日本で俺のようなオッサンが持ち歩いてたら、それだけで事件になりそうだ。


この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。


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