第19話
レベル上げを始めてから、そろそろ1カ月が経とうとしている。最初の頃は上がるのも早かったが、レベルが90を超えてからは上りが悪い。
既に1週間レベル95のままだ。たぶん、レッサードラゴンの経験値程度では効率が悪くてレベルが上がらないという事だろう。
この街でのレベル上げは諦めて、次の街を目指すのが良いかもしれない。
と、いうか。レッサードラゴンに飽きた。毎回毎回、ギルドの解体上限を超える数が襲って来るので、ギルドに出せない分がアイテムボックスの肥やしになっている。
ギルドでこの街よりも強い魔物が狩れる街が無いか訊いてみたら、1つだけ近くに狩場があるらしい。
街道から山へ向かって1日行くと、ダンジョンがあるようだ。で、ダンジョンにいるのがドラゴンだという。
この異世界にダンジョンが有る事にも驚いたが、“レッサー”で無いドラゴンにも興味が沸いた。
流石に勝てるとは思って無いけど、俺も男だから一度は夢を見たいよ“地上最強の男”ってのを。
山へ向かって進むと、所々に“この先ダンジョン危険”と書いた立札が立ってる。
あまりにも立札の数が多いので“押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ”というフリにしか思えない。誰が作ったのか知らないが、逆に道に迷わずに到着出来そうだ。
立札に従って進むと、山に祠というかデカい洞窟が口を開けていた。
「穴の中に入るのはダンジョンの定番なのか」
異世界にそんな定番が有るのか知らないが、洞窟の奥へと進んでみる。
洞窟の先には野球場のような広い空間があり、そこには多くのドラゴンがいた!
いや、多くのドラゴンが生活していた。
「ダンジョンじゃなくて竜の巣、竜の村じゃねーか」
『なんじゃ。また人間か?』
「え?喋れるのか?」
『!お、お前こそ我の言葉がわかるのか?』
「あ、あぁ。わかる。普通はわからないのか?」
『お前が初めてだ。それより腹が減った。何かもってないかのぉ』
「無い事も無いが・・・。レッサードラゴンなら有るぞ」
『おお、ご馳走じゃ!」
ガリボリグチャッと嫌な音をさせながらドラゴンの食事が始まった。
『うむ、満足じゃった』
「1匹で良かったのか?」
『ドラゴンは魔力さえ有れば飢え死にはせん。食事は贅沢品じゃな』
「なら、もう少し有るから皆と分けて食べると良い」
俺はアイテムボックスから50匹のレッサードラゴンを出して目の前に積み上げた。
『これほどあれば、若い連中にも喰わせてやれる。感謝する』
「それは良かった!」
『貰ってばっかりでは悪いからのぉ。これを持って行け』
そう言って渡されたのは赤い鱗が2枚。サイズ的に竜の鱗だろうな。
「良いのか?ありがとう」
『おう、我の方こそ世話になった』
ドラゴンも言葉が通じれば悪い奴らじゃないな。少なくとも、物々交換が可能なくらいの文化水準を持っているから、今後も取引出来るかもな。
一応ギルドにはダンジョンに行って、無事に戻った事は報告しておこう。
食事中のドラゴンをコッソリ鑑定したけどレベル423だったよ。正に“地上最強の生物”だった。
マジで、戦いにならなくて良かったよ。
☆
「あのドラゴンはムリだ」
「ですよねー。知る限り倒した人はいません」
ギルドに報告したら、軽く笑われた。このギルド職員は、俺がソロで戦いに行くのにワンチャンあるとでも思ったのか?
「で、他に強そうな魔物はいないのか?」
「数は少ないと思いますが、馬車で10日の街に地竜がいるらしいです。レッサードラゴンと違ってドラゴン種なので血液や内臓も高値で取引されてます」
取引されてるなら、誰か倒した人はいるのか。あのドラゴンより弱いなら俺でも倒せそうだな。
馬車で10日って事は500Kmか600Kmって感じか。自転車でも2日では厳しいかな。ゆっくりサイクリングしながら行くか。
「そうか。じゃあ、行って見るかな。ありがとう」
出発は明日にしよう。宿に戻る前に魔法屋に寄ってみる。この街で1カ月過ごしているが、この魔法屋では何も買ってない。店で在庫してる魔法球はもう取得済の物ばかりだ。なかなか新しい魔法球には出会えない。
魔法球で戦闘力を底上げしようと考える人はいても、実際にバンバン買える人は少ないのだろう。この街の魔法屋で「それも、それも、それも、それも、持ってる」と言って断ったが、なかなか信じて貰えず「買う気が無いなら来るな!」と言われてからは行き辛らかったのだ。
期待は出来ないが、最後だから寄ってよう。
「こんちわ。新しく入荷した魔法球はありますか?」
「あんたかい。帰りな」
辛辣!嫌われてしまったようだ。
「買う気は有るんだ。だから新しく入荷したのを教えて欲しいんだ」
「・・・以前あんたが持ってると言い張った玉しか入荷されてないよ」
「そ、そうか。じゃあ・・・帰るよ」
こりゃあ、次の街から魔法屋に寄る時は色々と気を付けないとな。
俺は宿へ戻ると、明日には街を出る事を伝えて、日本へ戻った。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。




