第15話
数日間の護衛で疲れていた俺は、日本で爆睡した。
朝起きてテレビのニュースを見ると、不景気とか、デフレとかの話題が中心だ。異世界には景気とかデフレとか関係無いだろうな。でも、俺が金貨を日本で売却しまくったらデフレになる可能性はあるかな?
そんなどうでも良い事を考えなながら、今日の予定も考える。
まずはバーガー屋を3軒廻って合計300食購入した。もう店員に白い目で見られるのにも慣れたものだ。
ホームセンターやアウトレットに寄ってみた。大量生産されているサバイバルナイフを鑑定してみると、空きスロットのあるナイフが数本あったので購入した。スコップやバールにも空きスロットのある商品を見つけたが、そっちは購入しなかった。
100均に寄って、次に売れそうな商品を検討する。今回は爪切りと爪ヤスリを購入した。ヘアブラシほど化学素材を使ってないので高くは売れないかもしれない。ついでに、バーベキュー用の網や串も購入した。販売用ではなく護衛中の焼き肉用だ。
焼肉で思い出したが“かけるだけで美味しくなる万能焼肉調味料”も購入した。
大量の物資を購入して、俺は異世界へと戻った。
異世界で1日買い物に付き合った事はあるけど、自分の買い物を1日中したのは初めてだ。
疲れを取るつもりで帰った日本で、更に疲れてしまった俺は、宿のベットで爆睡した。
翌朝、宿の食堂へ行くとテーブラもクロッチも居なかった。
珍しいなと思いつつ宿の朝食をとっていると、外からテーブラが入って来た。
「テーブラ、どこへ行ってたんだ?」
「実は、夜も護衛をしろと言われて今帰って来たところだ」
「そうだったのか。ん?夜もって事は昼もか?」
「あぁその通りだ」
「街の中で、それも一番偉い人の屋敷にいるのに、俺たちが護衛する意味有るのか?」
「護衛で雇われてるんだ。意味が有るか考えても仕方が無いだろ」
「で、俺はイツ何処へ行けば良いんだ?」
「エイジは今日の夜だ。日が落ちる前にあたしが案内するよ」
☆
「ここで、朝まで?交代が来るまで?見張りをしてれば良いんだな」
「そうだな。困った事が有れば、あそこに見える領主の護衛に訊くように言われているわ」
これじゃあ、護衛とは名ばかりに門番じゃねぇか。それも近くに領主お抱えの警備兵までいる。ここを見張る意味が全く解んないな。
「そう言えば、ベンピィとベンツゥの盗賊団の事だけど、3兄弟だった」
「え?もしかして、残り1人も」
「盗賊団だ。ベンジョオというらしい。一応気を付けてくれよ。じゃっ、あたしは宿に戻るから」
まったく。3兄弟そろってクソみたいな奴らだな。絶対に仇討ちに来るな!兄弟って事は巨人族だろうから見たら解るだろう。
護衛、というよりも見張りってヒマだな。夜の貴族の家の前を歩く奴なんて誰も居ないよな。
ん?領主の護衛が俺に近付いてきたぞ。何か有るのか?
「エイジ、で良いか?中に案内するように言われている。ついて来い」
あれ?俺って何かやっちゃった?心当たりは無いんだが、断ったら強制的に連行されるのが想像できる。
門を潜った所に執事が待っており、剣を預けて更に奥へ進む。
大きな男が警備している部屋に入ると、ちんまりと座る女の子と向かい側に立派な髭を蓄えた男性と奥さん?がいた。
「お待たせして申し訳ありません。エイジと申します」
「そうか、商売もやっていたと聞く、最低限の礼儀は持ってるようだな」
「いえ、元々平民のため作法を全く知りませんのでお許しください」
「良い、そこに座られよ」
「はっ!失礼します」
「妾の隣に座るのじゃ」
この声。馬車の中に居た“お嬢様”だろうな。
「呼んだのは他でもない、商売人として何か面白いものはないか?」
「面白いものでございますか?ではコレなどいかがでしょうか」
俺は爪切りを1つ、マジックバックから取り出したように見せかけて、アイテムボックスから出した。
「これはなんだ?」
「コレは爪を切るものです」
「爪を切るだけなのか?どのように使うのだ」
「ここをこのようにして、パチンと」
「おお!これは良いではないか!」
よしよし。つかみはOKかな。
「更に、ここがヤスリになっており、このように使うと綺麗に整える事が出来ます」
「ほう!良く考えられておる」
「これとは別に、ご婦人にはこちらの方が喜ばれるかと」
「これはなんだ?」
「コレは爪を綺麗に見せる道具にございます」
俺は爪ヤスリで中指の爪だけを磨いて見せた。
「まぁ!すごいわ!貴方!コレは売れるわよ」
「これらの品はいくつ持っておるのだ」
「それぞれ100個でございます」
「ふむ。今後、他の街や商会で売る予定はあるのか」
あれ?この聞き方、言い回し方。もしかして自分で複製して売るつもりなのか?構造は簡単だけど作れるかなぁ?
「いえ、ございません」
「この商品の作り方は知っているか」
ああ、絶対にパクリ物を作るつもりだ。作れるなら作っても良いけど、作れるのだろうか。
「いえ、作った者は高齢の為に既に亡くなっております。私は商売上その場に居合わせただけで作り方は知りません」
「そうか、そうか。では全部で金貨1500枚で買取ろう」
コップよりは安いけど、複製出来そうな技術だから妥当な金額だろうな。
「わかりました。金貨1500枚でお売りいたします」
「それではの、下がって良いのじゃ」
「はい。失礼いたしました」
ヤスリの構造を理解するには顕微鏡クラスの拡大鏡が必要だと思うけど、レンズもない異世界で複製が出来るのだろうか。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。




