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第12話

「こ、こんな綺麗な鏡見たことないですよ!」


「えぇ。これほど綺麗に映る鏡は作るのに非常に苦労をしてます」


「櫛もこんな形は初めてです。どうやって作ったものですか?」


「それは秘密です。ですが制作には非常に時間と手間が必要な物です」


 チョビ髭屋と同じくらいの商会を見つけたので飛び込みの営業をしてみた。今回売り付ける商品はコンパクトミラーとヘアブラシだ。当然両方とも100均で購入している。

 反射率が高く歪みの無い鏡を作るにはガラスを工業製品として作る技術が必要だ。だからコップ以上の金額が付くと思って用意した。

 鏡が有れば櫛も欲しくなるだろう。櫛は日本にも大昔から有ったけど直線状にスリットが付いた物だ。それを一変させたのが樹脂素材の登場だ。これで直線の櫛から平面のヘアブラシに進化した。

 どちらも、この異世界では作る事が出来ない商品だろう。


 売る商品を変えた理由は俺が移動した先で同じ商品が販売されれば俺が販売元だとバレるからだ。違う街の商会からそれぞれ珍しい商品が売り出される。これなら全部の販売元が俺だとは誰も思わないだろう。


「ハァ。この商品は1セットだけでしょうか?」


「いえ、両方とも100個用意してます」


「ひゃっ、100個も!・・・全て買い取らせて頂きたいと思います」


「で、いくらで買いますか」


「鏡を金貨20枚、櫛を金貨30枚・・・で買取らせて下さい」


 えっと、両方100個だから金貨5000枚になるのか。日本で金貨を売却したら5億円って事か。金銭感覚がマヒしそうだな。

 でも飛び入り営業に対して5億円払うって、この商会大丈夫か?


「す、すみません。鏡を金貨22枚、櫛を金貨33枚で全部買い取らせて下さい。お願いします、お願いします」


 あれ?黙っていたら勝手に値上げされたぞ。まぁ良いか。


「わかりました。支払いは出来るだけ金貨を多くして下さい」


 以前も黙ってたら勝手に値上げされた事が有ったけど、俺の顔ってそんなに不愉快そうな表情してるのかな?


 ☆


 翌朝、1階の食堂にはご機嫌な2人がいた。


「エイジ、今日は何か用事があるのか?」


「暇ならウチの買い物に付き合わせてあげるにゃ」


 なんだが随分と上から目線だな。特にやる事も無いから暇と言えば暇だな。


「2人とも護衛の仕事は良いのか?」


「新しい護衛が決まるまで出発出来ないにゃ」


「それに盗賊団の懸賞金と報奨金が決まるまでは出発を待って貰うようにお願いしてある」


 先に根回しは終わってるのか。護衛依頼も色々とやる事があって大変だな。


「では、今日1日お嬢様達に付き合いますよー」


 って、そんな約束するんじゃ無かった。

 女の買い物が長いのは異世界でも共通なのか!服屋だけで6件目だぞ。もう帰りたい。

 服屋が終わったと思ったら、次は武器屋だよ!商売道具だから念入りに選ぶのはわかるけど、同じ剣を30分見続けるのは勘弁して貰いたい。


 テーブラの武器は剣で、クロッチは短剣と投げナイフか?

 鑑定して空きスロットがあるのを選んで「これが似合うと思う」と言ってあげる。宿に帰ったら魔法を付与してあげよう。

 昼はランチをご馳走になった。

 そのまま午後の部へ突入!この街の店を全部制覇する勢いで店を廻った。殆どの店で何も買わずに見るだけなのは地球でも共通なのだろうか。

 日が沈む頃には、流石の2人もヘトヘトになっていた。俺はもう少しで悟りが開けそうな気分になっていた。


「久しぶりの買い物でテンション上がってしまった」


「ウチはヘトヘトにゃあ」


「今日は1日付き合ってくれてありがとう、エイジ」


「ありがとうにゃ、エイジ」


「いやー、2人が楽しそうで良かったよ」


 俺は待ってる間スマホで写真撮ってたけど、バッテリーが切れてからは苦行だったな。


「あ、今日買った武器貸してくれるかな。夕食の時に返すから」


 俺は2人の武器を預かり、テーブラの剣には風魔法を付与し、クロッチの短剣と投げナイフには雷魔法を付与した。2人とも喜んでくれれば良いな。


 ☆


 次の日は早朝にギルドからの連絡があった。報奨金などが決まったので来て欲しいという事だ。俺たち3人はギルドへ向かった。

 総額金貨300枚の支払いで、貢献度が一番大きい俺が150枚の分配だった。テーブラとクロッチは75枚づつ分けるようだ。俺だけ多く貰うのも気が引けるので、75枚を受け取り残り75枚を生き残った4人の女性の為に使うようギルドにお願いする。4人ともまだこの街にいるようなので強く生きて欲しい。

 アジトで回収した物は俺たちで好きにして良いと言われたが、俺は興味が無かったので全部テーブラとクロッチに譲った。


「エイジはお人好しが過ぎるのにゃ。あの4人に渡すお金にしては多過ぎるのにゃ」


「あたしも同感だ。それにアジトの物で目ぼしい物は特に無かったと思うが、それなりにお金も回収しているのだぞ。それも要らないのか?」


「あぁ、今はそこまで金に困って無いから良いよ。それにあの4人は全てを失ったんだ。少しくらい良い事が有ってもいいかな、ってね」


「やっぱり、お人好しにゃ」


「そんなエイジに助けられた事が、4人にとっての救いかもな」


 俺はお人好しではない。これはただの偽善だ。助けた彼女たちと同じ目をしていた後輩に俺は何もしてやれなかった。後輩に対しての心残りを彼女たちにブツけているだけだ。俺の自己満足の為に金を受け取って生き抜いてくれ!


この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無い訳が無い。


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