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【get a second chance】~イケメンに生まれ変わったら見える景色が鮮やかになった~  作者: にんじん


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訪問者

 俺は気付くとパソコンチェアーに座って自身のYチューブのコメント欄を眺めていた。いつから見ていたのか記憶にはないが、目は充血し、口からはゲロを垂れ流し、さらには下着は糞尿にまみれていた。

 しかし、今の俺にはその状態ですら何も違和感を感じない。コメント欄のヘイトはおさまることなく膨大に増えていて、俺はそのヘイトコメントを一字一句に目を通していたようだ。


 口舌バトルのコメントは、参加者のみしか見れないので、使徒の言霊の天啓は当事者にしか影響を及ぼさない。しかし、Yチューブのコメント欄は誰でも閲覧できる。使徒の言霊の天啓は、この世界の住人には悪影響を及ぼす事は無いが、言霊の天啓を見た一般の視聴者は、ヘイトコメントに感銘を受けて、使徒に賛同するようにヘイトコメントを投稿する。言霊の天啓によって心を蝕まれ、精神が破壊されつつある俺が冷静を保つ事は出来ない。俺は使徒だけでなく使徒の信者になった一般視聴者からのヘイトによって、さらに心が蝕まれ崩壊寸前にまで陥っていた。


 俺はヘイトコメントの真相をしっている。だからこそ、ヘイトコメントに苦しんで死を選ぶ事はない。星夜が最終的に死を選んだ原因は嫌悪ポイントが0になったからである。俺は今のところは嫌悪ポイントは回収されていないので死ぬ事はない。雷鳴も嫌悪ポイントを最大現に引き出すために、すぐには俺を死に追い込まない。俺が【不屈の心 鋼】を手にするのが先か、それとも、雷鳴が嫌悪ポイントを最大限に引き出すのが先か、それが俺の運命の分かれ道である。

 しかし、ここで第3の勢力が現れる可能性のが高い。星夜の死の原因は雷鳴でなく、別の第3者が星夜の嫌悪ポイントを略奪したのが原因だ。もし、俺にも第3者の魔の手が伸びてくれば命を落とす危険性がある。俺はこの重大な事に気付いていない。


 心が崩壊寸前の状態で意識が朦朧としている俺だが、【不屈の心 銅】のスキルにより、強引に意識を回復させる。俺は徐々に我に返り自分の現状を把握する事ができた。


 「これが・・・使徒の力なのか。俺はこの地獄に耐える事ができるのか!」


 言霊の天啓に対抗できるのは【不屈の心 鋼】だけだが、【不屈の心 鋼】を手にする方法は、この地獄に打ち勝つことである。いつまで、この地獄に耐えれば良いのかわからない。ここで弱気になれば地獄に打ち勝つことが出来ずに死に逝くだけである。

 第2の人生を謳歌するはずが、奈落の底に落とされた気分である。


 『トントン・トントン』


 俺の部屋を扉をノックする音が聞こえた。今は深夜の2時。家には母親しかいないはずだ。誰が扉をノックしているのだろう。俺は背筋に悪寒が走る。


 「誰だ!」


 恐怖で大声が出ない。俺は震え声で小さく叫ぶ。


 『トントン・トントン』 


 返事はない。その代わりノックする音が大きくなった。


 「・・・」


 俺は恐怖で動けない・・・というよりも動きたくない。それは糞尿まみれのこの姿で、人と会うのは危険すぎる。たとえそれが誰であっても同じだ。俺はこのままやり過ごせないか淡い期待を抱く。


 『ガチャ!』


 俺の淡い期待はすぐに崩れ落ちる。部屋の扉にカギはない。開けようと思えば誰にでも開ける事は出来る。ノックした人物は自分で扉を開けた。


 「・・・」


 扉を開けて俺の前に姿を見せたのは笑さんだった。


 「笑さん・・・なぜ俺の部屋に?」

 「昴君が心配で来ちゃった」


 俺は笑さんの言葉に違和感を感じていた。もし、笑さんが俺の事が心配で家に訪れたのなら、最初に耳にするのは扉のノック音ではなく、家のインターホンの音である。しかし、俺はヘイトコメントの口撃で意識が朦朧としていたので聞き取れなかったのかもしれない。でも、それなら母親が対応して、最初に俺の部屋に訪れるのは笑さんでなく母親の方である。こんな深夜遅くに笑さんを1人で、俺の部屋に来させるようなことはしないはずだ。俺の心臓は張り裂けそうなくらいに激しく鼓動する。


 「俺は・・・大丈夫です」


 異常なほどの汗が額から流れ落ちてくる。


 「昴君、汗がすごいわよ。熱でもあるのかな?すぐにベットで休んだほうがいいわ」


 笑さんが俺に近寄って来る。俺は糞尿を漏らしているので汚臭が部屋に漂っているが、笑さんは汚臭を気にせずに俺の手を握りしめた。


 「ヘイトコメントを見て心が病んでいるのね。でも安心して、すぐに楽にしてあげる」


 笑さんは顔を俺の顔に近づける。ほのかにイチゴのような甘い匂いがしたと思うと俺は体の力が抜け落ちた。

 

 


 

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