表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

1話 村娘で魔王の娘

初投稿です!!

よろしくお願いします!

「マオ、あなたは魔王の娘なのよ」


「は……?」


 口に咥えたパンがポロッと落ちる。

 ある日の朝、私が朝食を食べてる最中、母が突然そんなことを言ってきた。


 え? どういうこと?


「ごめんね。今まで内緒にしてて……」


「いやいやいや、内緒にしてたとかじゃなくてさ。私が魔王の娘ってどういうこと?」


 私、マオはこのサター村で今まですくすくと元気に育ってきた普通の村娘だ。

 毎日家畜の世話をしたり、森に出掛けて山菜を採取したり、時にはモンスターの群れを一人で追い払おうとしたり、そんな日々を過ごしてきた、ただの普通の村娘なのだ。


 断じて魔王の娘なんかじゃない。


 なのに、いきなり魔王の娘って?


 お母さん、ボケちゃったのかな……


 心配する私を放っておいて、お母さんは真剣な表情で言葉を続けた。


「実を言うとね。あなたは先代魔王に任されて預かってた娘なのよ」


「は……??」


 本日二度目の「は?」です。

 もうそう言うしかないです。

 うちの母は何言ってるんでしょうか。


 魔王というとアレだ。

 数年前、幾千を超える軍勢を率いて幾百の人間を虐殺し、幾十もの国を滅ぼしたとか言われてる冷酷無慈悲のヤバい奴だ。

 死んだとか噂で聞いてたけど、そんなヤバい魔王が本当に死んだなんて私は信じちゃいない。


 で、私がその娘だって?

 無い無い無い。ありえない。絶対に。


 キキーッ!


 私が首を横にブンブン振っていると、家の前で馬車が止まった音がした。

 お母さんは「ちょっと待ってね」と言って席を立ち、ドアを開ける。


 ──しかし、ドアを開けた途端、固まってしまった。

 お母さんが邪魔で家の前に何が居るのかはよく見えないが、一台の馬車が止まっているのは確認できる。


 なにがあったのだろう?


「……遂にこのときが来たわね」

「マオ、お迎えが来たわ」


 そう言ってお母さんは振り返りながら横に退く。

 すると馬車から降りてきたであろう何者かが家に入ってきた。


「失礼いたします」 


 入ってきたのは一人の少女。

 余計な装飾が一切無いシンプルなメイド服に身を包み、サラサラとした黒い長髪に光が灯っていない金色の眼。

 私よりも少しだけ背が低いため、どことなく幼い印象を感じる。

 けれど同時にただならぬ威圧感が伝わってくる、そんな不思議な少女だ。


「私は魔王城専属メイド隊副メイド長「ルシー」と申します。ご確認したいのですが、貴女は本当に魔王様のご息女でございますでしょうか」


 黒髪金眼の少女──ルシーは手を前にやって礼儀よく一礼してから、淡々とした喋り方で私が魔王の娘なのか確認を取ってきた。


「そ、そうらしいけど……」


 こくりと頷きつつ返答する。

 

 ごくり……。


 私はルシーから目が離せなかった。


 なぜなら。


 ルシーが物凄く可愛いから!


 美術品の絵画のように良く整った顔立ち。シワ一つ無い可愛らしいメイド服。思わず撫でたくなる衝動に駆られる小動物的なこじんまりとした体躯。

 それになんだか良い匂いもする……!


 最高の第一印象を与えたルシーは、小さな口をそっと開いて言葉を紡いだ。


──予想の斜め上を行く最悪な言葉を。


「……こんなのが魔王様の娘って本当ですか?」


 ……?


 ……はい???


 こ、こんなの……???

 

 呆気に取られているとルシーは嫌そうな顔でため息をついてから、続けてこう言った。


「貴女は魔王様のご息女になられますので、先代魔王様亡き今、貴女が次期魔王になります」

「……のですが、貴女のようなダメダメな村娘に魔王が務まるとは思えません。それに目つきも悪いですし」


 ダ、ダメダメ……!?


 今まで一度もそんなことを言われたことの無い私は大きなショックを受けた。

 自分自身がダメダメだなんて一度も思ったこと無いからだ。それにお母さんだって毎日褒めてくれるし!


 ……ってか、目つき悪いのは生まれつきだから仕方ないでしょ!

 うがー!!


「あ、あの……この子、そんなにダメダメなんですか?」


 お母さんが目尻に涙を浮かべて問いかける。

 泣いちゃったよ。どうしてくれるの。ってかあなた魔王のメイドとか言ってたけど、お母さんを泣かせた以上はタダじゃおかないよ?

 スヤスヤ寝てるアンタの綺麗な寝顔に落書きしてやるんだから!

 

 密かに殺気を送っていると、ルシーは再度溜息をついて


「ダメダメです」


 そう言った。


「そ、そんなにダメダメなんですか……?」


「そんなにダメダメです」


「そんなぁ……」


 よよよ~と崩れ落ちるお母さん。


 思わずムッ、と眉間にシワが寄ってしまう。

 何を根拠に人のことをダメダメ言ってるのかなぁ? この可愛いメイドさんは。


 言わずもがな、ルシーと会ったのは今日が始めてだ。だからルシーが私のことを知るわけがないのだ。


 だが、ルシーは私の心が読めているのかのように、そんな単純な疑問に答えた。


「……実のところ私は昨日から貴女を隠れて見ていました」


「えっ!?」


「ダメダメ、と言うのは昨日一日中貴女を見ていた結論です」


「ダ、ダメダメじゃないよ! なんで一日中見てたのにダメダメってなるのさ! もっと見て! ちゃんと!」


「ダメダメはいくら見てもダメダメです」


「なんで!?」


「はぁ……家畜の世話をすれば足を滑らせて肥溜めに落ち、山菜を採取すれば森の中で日が暮れるまで迷い、挙げ句の果てにはモンスターを追い払うはずが逆にモンスターに追われる始末。ダメダメと言わずなんと言うのですか」


 う、うぅっ……。


 ルシーの言葉が私の胸に突き刺さる。


 ルシーの言ったことに嘘は無い。

 本当だ。私が家畜の肥溜めに落ちたのも、山菜探しに夢中で森の中で迷ったのも、お母さんに助けられるまでモンスターに追われ続けたのも、全て本当だ。


 でもダメダメって言うのは酷くない?

 

 私だってミスする時くらいあるし!


 けれど弁明する暇も無く、ルシーは続ける。


「確かに貴女の薄白い紫の髪と薄暗い真紅の瞳からは魔王様の血を感じます」

「しかし本当の魔王様ならばあんなダメダメっぷりは披露しません。正直に言いますが、貴女が魔王の娘だなんて何かの間違いじゃないですか? 私は貴女のようなダメダメな村娘は魔王として認めませんし、貴女のような村娘に本当に魔王が務まるのですか? 私は務まらないと思いますね。貴女になんか」


 ルシーはそう言うと、馬鹿にするようにクスッと笑った。


 ……む。


 むかーっ!


 いきなり魔王の娘だなんだと言ってきた挙げ句、お前が魔王の娘なのが間違ってるって?

 だから魔王にはなれないって?


 私だって好きで魔王の娘になったわけじゃないんだけど!?

 ってかなんで私が魔王の娘なの!?

 なんで私が魔王になんかならなくちゃいけないの!?

 私はどこにでもいる普通の可愛い村娘として一生を終えたかったのに!


 ってか何その人を馬鹿にした言い方! 私だって魔王くらいなれるし!


 あーもう!

 ムカついた!


 そこまで言うなら本当に魔王になってやる!!


 私は今目の前にいるルシーという名のメイドっ娘に自分の感情をぶつけた。


「私だって魔王の娘だから魔王くらい務まるよ! アンタが認めるような魔王になってやる!」


「……貴女に魔王が務まるのですか? 家畜の世話をして肥溜めに落ち、山菜を採取しに行って森に迷い、モンスターを追い払えずにモンスターに追われる。そんなダメダメな貴女に」

「なによりこの私に貴女が魔王であることを認めさせられますか?」


「務まるし、認めさせる! だって私は魔王の娘マオだから!! アンタにムカついたから絶対に認めさせてやる!!」

「だからアンタは私の隣で私が立派な魔王になるのを見てて!!」


 ここまで言われると思ってなかったのか、ルシーは少し驚いてからすぐ元の表情に戻り


「そうですか。まぁ頑張ってください」


 やれるもんならやってみろ、とでも言いたげな口調で返答した。

 

 踵を返して馬車へと入るルシーを追って、私も早歩きで後を追う。


 今日でお母さんやこの家ともお別れだと思うと寂しいな……。

 

 ──実のところ私は怖かった。


 さっきまで村娘だった私が魔王になんてなれるのか。ルシーが認めるようなちゃんとした魔王になれるのか。


 あんな啖呵を切ったけど、本当はほんのちょびっと怖かった。


 足が止まる。


 その時だった。

 

 お母さんが私に駆け寄ってきたのは。


「マオ、向こうに行く前にこれを持っていきなさい」


 そして私の両手をギュッと掴んで何かを渡してきた。


 両手を開いて渡された物を見てみる。


 これは……。


「ネックレス……?」


 全体的に黒っぽい色合いをしている逆さまの星型ネックレス。

 所々錆びていて、アンティークさを感じる。


 暇な時は家中の掃除をしてた私だが、こんなネックレスは今まで一度も見たことがない。


 一体どこにあったんだろう……?


「それはお守りよ。先代魔王に「マオが魔王になる日に渡して」って言われててね。今までお母さんが預かってたの。不安になった時、勇気が欲しい時、それをギュッと握りしめなさい。そうしたらあなたを危機から救ってくれるはずよ」


 そう言うとお母さんは私をぎゅっと抱きしめた。

 暖かい。お母さんのぬくもりだ……。


 お母さん……。


「愛してるわ。マオ。あの小娘にギャフンと言わせるようなスゴい魔王に絶対なるのよ」


 チュッ。


 最後に頬にキスをしてから、お母さんは私から離れた。


 今のだけでも、少しだけ勇気がもらえた気がする。

 魔王の娘として立派な魔王になるための勇気が。


 私の足が馬車へと進む。

 再び歩き始めた。


 ──もう何も怖い物はない。


 ──だって勇気を貰ったから。

 お母さんとネックレスから。

 

 馬車に乗り込むと、ルシーとは反対の席へ座った。

 

「それでは参りましょうか」


「うん。あ、ルシー……ごめん。なんて呼べばいい? ルシー? ルシー……ちゃん?」


「ちゃん付けはやめてください。ルシー様、あるいは……そうですね。明けの明星で」


「ルシーちゃんね」


「ぶち殺しますよ」


 そんな会話をしながら、ルシーちゃんの合図と共に馬車が動き出す。


 ──絶対ルシーちゃんが認めるような魔王になってやる!

 

 こうして私──マオは魔王の娘として立派な魔王を目指すことになったのだった!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ