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3話


『ばぁ〜☆』



「うわぁ!!」



梅が目を覚ますと、目の前にタレ目気味なエメラルドグリーンの瞳の男の顔があった。



『あっはぁ〜ぶさいくぅ〜』



梅の驚いた顔を見て楽しそうに笑う男。



瞳と同じ色の綺麗な髪は、左下がりのアシンメトリーに切りそろえられ、楽しそうな声を上げる口からはギザギザとした牙のような鋭い歯が垣間見える。



『でぇ〜?梅ちゃんは誰となにを切りたいってぇ?』



細められたエメラルドグリーンの瞳は一見、上機嫌そうに見えるが、鋭く光り、梅を捕える。



男の瞳に見つめられ、梅の脳裏に一瞬、なにか衝撃と映像がよぎった。



身体中が凍り付くような寒気と、耳の裏からはまるで自分に対して向けられているような怒号、



更に耳をすませるとその背後で延々と呪文のような念仏のようなものも聞こえてくる。



そして梅の意識がだんだんと呪文のような声に吸い込まれていくと、唐突にブチブチという肉の千切れる音と共に腹部に激しい痛みが走った。



「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」



ジタバタと痛みに悶え、転がる梅を、男は『お〜よしよし♡俺はここだよぉ〜』と抱き込む。



男に抱き上げられた梅の体は、それまで冷えきっていたのが嘘のようにポッと体温が戻り、腹部の痛みも消え失せてしまう。



「あ、れ…?」



『もぅ痛くないでしょ?♡』



「あ…はい…」



男に抱かれながら、片手でさすさすと腹部を撫でられる梅。



もうなにが起こっているのか分からず、男の問いに呆然と頷くしかなかった。



『梅ちゃんさぁ〜??こぉーんなに俺が必要なのに、なんでいつも俺から逃げようとするわけぇ〜??』



「"いつも"??」



男の言葉に梅は首を傾げた。



こんなエメラルドグリーンの髪に、宝石みたいな瞳をしたタレ目の美形など、梅は知らない。



『あ〜あ、酷い子〜。まぁた俺のこと忘れてるぅ〜、だからいつも変な奴に誘惑されちゃうんだよね??梅ちゃん??』



男は梅をからかいながらカクンッと首を傾げる様にして梅の顔を覗きこむ。



全く言っている意味が分からない。



あたかも自分のことを知った風に喋る男に、梅は眉を寄せた。



しかし梅が顔を顰めた途端、男はニヤリと笑みを浮かべる。



その妖しい瞳に、どこか見覚えがある気がして、梅は一瞬固まった。



記憶の奥底に追いやっていたものが一瞬垣間見えたような気がして、なんとか思い出そうと、黒目がちな大きな瞳を細めて男を見つめる。



すると男は『なぁ〜にぃ?そんなに見つめて♡』と言いながら色白の顔を近付けてくる。



「え、ちょっと」



戸惑い、腕で男の胸を押して抵抗する梅を無視し、男は更に顔を近付け、梅の耳に唇を寄せる。



『それとも俺に何かして欲しいことでもあるの??♡』



ふざけた口調で甘い声を出す男に、梅は自分の顔が熱を持つのを感じた。



「〜〜〜〜〜/////////!!!!!!」



生まれてこのかた一度も異性との交際経験のない梅は、至近距離で密着しているという状況というだけでいっぱいいっぱいだった。



「うわぁあああ〜〜!!お願いだから一旦離れてぇ〜〜〜!!!!」



顔を真っ赤にした梅は、堪らずバタバタと男から逃れようと抵抗する。



しかし、男の体はビクともせず、皿に妖しい笑顔を浮かべる。



『なに?梅ちゃん、俺に"お願い"するの?』



「はい…?」



『聞いてあげても良いよ?だけどその代わり、梅ちゃんも俺の"お願い"聞いてね??』



妖しく光るエメラルドグリーンの瞳に見つめられ、梅は震える唇を噛んだ。



「"お願い"って…例えば…?」



『うん♪梅ちゃんのだぁ〜い好きなその先輩?を諦めること☆』



「なっ!なんで!絶対嫌だ!絶対無理!なんでアンタなんかにそんなこと言われなきゃいけないの!?おかしいよ!」



【はぁ〜〜???????】



梅の反論に、男の表情と口調が一変した。



【なぁ〜にさっきから調子のってんのぉ??お前は俺のなんだから"無理"とか"嫌"とかないから】



男の陰った表情が恐ろしくて、梅は息をするのも忘れていた。



【マジで馬鹿すぎ。そんな馬鹿なお前でも分かるようにしてやるよ♥】



男は狂気に満ちた暗い微笑みを浮かべると、梅の首筋に唇を這わせ、まるで首輪でもなぞるかのように首の後ろまで滑らせていく。


そして首の後ろにギザギザの歯を立て、噛み付くと、痛みで悲鳴を漏らした梅を見て満足気に微笑んだ。



【もうこれで大丈夫だからね、梅♥】

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