エピソード2
「いやいやいやいや!!結んでない!!私結んでないですよ!!」
自分に向かって指を差してくる男に、梅は全力で首を左右に振った。
「いやだから、結ばれてるんだて。君がその気でなくても…自分の後ろ見てみ?」
「後ろ…?」
梅は男の言葉に怪訝そうな顔をしたまま恐る恐る後ろを振り返った。
するとそこには異常に背の高い黒い人影があり、梅が唯一ハッキリと認識できたのは宝石のようなエメラルドグリーンの瞳だけだった。
エメラルドグリーンの瞳と目が合った瞬間、梅は真っ黒な闇に
呑み込まれてしまう。
「!?」
声を上げる間もないまま闇に呑まれ、あっという間に自分の前から姿を消してしまった梅を目の当たりにし、取り残された白い着物の男は溜息をついた。
「ありゃー…もしかして煽っちゃったかな?今年の神議り…なんもないと良いけどなぁ…」
白い着物の男は深いため息をつくと、晴れ渡る冬の青空を見上げた。
見上げた空には微かに白い月がこちらを見下ろしている。
「はぁ〜…面倒事はほんと勘弁してくださいよ〜…ただでさえ忙しいんだから…」
男はまるで誰かと会話をしているかの様に真昼の月を見上げ、面倒くさそうに後頭部をかいた。