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最強武闘家一族の最硬者  作者: まるまるくまぐま
学園生活の始まり
25/35

芽生え

「こ、こいつ、化け物の新入生だ…」

 宙を舞い、地面に突き刺さる剣先。

 致命傷となる一撃を放たれたにも関わらず、傷や流血の跡さえなく、無傷でノーダメージな姿で平然としながら、フランセットを庇う様に立つ新入生の姿に、攻撃を加えた筈の上級は、剣を落とす。

「気が済む迄、僕が相手になります。だから、フランセットさんを虐めないで下さい。」

 そう頭を下げる新入生。

 上級生たちに動揺が広がる。

「どうする…?」

「どうするって…こいつ、理事長の息子でしょ…勝てるわけないって!!」

「そもそも無いこいつ経津主でしょ!?マジでヤバいって!!」

 上級生たちが、鬼気迫る様子でヒソヒソと話す。


「テ、テメェこ女なら、先に言っとけよ!!」

 そんな捨て台詞を残し去って行く上級生たち。

 彼女たちは、虎千代の言った『大切な人』という言葉を、恋人という意味で受け取った。

 しかし、虎千代としては『(初めて出来た)大切な(友達である)人』であり、フランセットにとっての虎千代は、恐怖の対象であり、三者三様、皆致命的な勘違いをしていた。


 この勘違いが、これからの虎千代の学園生活に大きな影響を与えるのだった…



−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−



「うわぁ…なんだこれ…」

 教室棟内を歩く虎千代は、死屍累々と倒れる一年生たちをむ見ながらそう言葉を漏らす。

 若干怯えながら虎千代の後ろを歩くフランセットは、警戒を怠らずに緊張感の欠片も無い虎千代に恐怖と呆れを感じながら虎千代に問う。

「アナタ、経津主でしょ。経津主の者にとっては、この程度じゃ大したこと無いってことかしら?それとも、本当に何も知らないの?」

 彼女の問いに対し、虎千代は自虐的な笑みを浮かべ答える。

「なんにも知らないよ。僕は経津主失格だから。」

 

 虎千代の言葉に、フランセットは恐怖を感じた。

 達人級の腕を持つ武人による、即死の攻撃をモロに受け、無傷でいられる彼が失格なら、経津主の一族は、全員人の域を超えた超人でさえ存在を許さない超人を超越した何かということになる。

 虎千代が、史上最強の天才であり天災たる寅華という母によるスパルタ教育で、人知を超えた耐久力を持ったことを知らない(虎千代本人も知らない)フランセットは、また一つ勘違いをしたのだった。


「経津主学園恒例行事、『新入生歓迎会』という名のリンチよ。」

 周囲に警戒の目を向けながら、虎千代に対しても警戒しつつフランセットはそう言って続ける。

「上級生による新入生に対する一対複数や、奇襲、強襲といった状況を思い知らせるという名目の元行われる伝統行事で、実態は、上級生による新入生に上下関係を叩き込みつつ、気に入らない新入生を痛めつける行事よ。」

 さっきみたいにね。そう呟きながら、背中合わせに廊下を進んでいたフランセットは、虎千代の進行方向を向く。

「ちょうど私の教室ね…」

 それは彼女にとって、砂漠で見つけたオアシスだった。


「改めて言うわ、剣術部門細剣科、フランセット・ラ・フォンテーヌ。留学生だけど、アナタと同じ一年生よ。」

 教室の前迄来て、恐る恐る手を差し出すフランセットは、

「無法地帯と化す『新入生歓迎会』だけど、教室だけは別なのよ。」

 そう僅かだが安心した表情を見せる。

「僕は、えっと…なんだったけ…?ず組?ごめんなさい、よく分からないけど…経津主虎千代です。よろしくお願いします。」

 女の子の手を握って良いのだろうか?そう思いながら、虎千代も恐る恐ると手を差し出し握手した。

 記憶の限り、母と妹の手(拳)以外の、女性の手に触れた虎千代は、握られた手の感触に驚き、手から目を離す。

 目を離した視線の先にフランセットの美しい波打つ金髪と、碧眼の美貌に一瞬目を奪われ、こそばゆさと恥ずかしさ、照れ臭さと、今まで感じたことのない不可思議な感情が彼を襲った。

「えっ…!ず組…?」

 ぱっと手を離したフランセット。

 その手が離されたことに残念さを感じながらも、虎千代は照れ隠しの様に勢いよく手を引っ込めた。


「ず組は別よ!!今は教室に近寄らない方がいいわ!!」

 彼の耳には、彼女の手の感触や表情だけが残り、彼女の言葉は耳には入っていなかった。

「ありがとう、フランセットさん。僕は戻るね。」

 フワフワとした足取りで虎千代は、戻るなと言われた教室に向かっていったのであった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−



 突如降り注ぐ雨は、スラムの路上に突如として出来た血の海を洗い流す様に激しく降り注いでいた。


「し、死神だ…」

 辺り一面を血の海に変えながらも、返り血一つ付かずに歩く女に、たった一人の生き残りは、恐怖と絶望、涙と鼻水でグシャグシャに潰れた喉から絞り出す様に言った。

 それもその筈。

 たった一人の女が、一方的な虐殺、そんな言葉でさえ生温い程の速度、それこそ、瞬きする間よりも速く数十人の男を肉片と変えたのだから。


「血の匂い…結局、私はこの匂いの中でしか生きられんのだろうな…」

 雨に濡れた女は、天を見つめながらそう言った。

 彼女の瞳から流れる雫が雨なのか、涙なのか、知るものは彼女しかいなかった。

 

 







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