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最強武闘家一族の最硬者  作者: まるまるくまぐま
プロローグ
1/35

頑丈なのは良いこと

 21XX年、世界は核の炎に包まれなかった。

 しかし、社会は変貌を遂げていた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−


 格差社会、そんな言葉が無意味になる程に、世界は明白に線引された。

 富める者は益々肥え、搾取される者たちは、乾いた雑巾を絞る様に奪われ、痩せ細っていく。

 富める者が政治、権力、財を独占し、貧者・弱者は虐げられる。

 そんな世界に変貌し、弱者の人権など消え去った様な世界が始まった。

 

 最初の内は反抗、反対する者たちがいたが、それも力によって捻じ伏せるられ、気が付けば、皆、生きる為に奪われるだけの労働に勤しみ始めた。

 それが当たり前となった21XX年、世界は、正しく金と権力が支配する世界と化していた。

 金持ち、有力者、権力者、彼らは全てを思うがままに支配し始めていた。

 彼らが何を行おうと、咎める術が無くなっていく。

 彼らが人を殺そうと、非人道的なことを行おうと、彼らは咎められず、全てが正義とされていた。


 そんな世界で、それらの当て嵌まらずに、唯一力を持つ者たちがいた。

 金や権力、そんなものは無縁な、純粋な己の力だけで闘う者たち。

 失われ始めた武術、それを受継ぎ、継承し続けた者たちであった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



 如何に金や権力といった力を持とうと、自身の肉体の持つ力は知れたもの。

 それとは異なり、唯、己を鍛え、鍛え抜き、人を超えた者たちが表れた。

 純粋な力は、時に金も権力も超越する。圧倒的な力で、全てを支配することさえある。

 それを体現した一族が誕生した。


 経津主(ふつぬし)一族である。

 (いにしえ)より、あらゆる武門、武術、武闘家の血を取り込み、一騎当千どころか、一騎当億を目指した、最強の武闘家一族。

 最低でも、一人で一個師団と言われる戦闘力を誇る一族は、唯純粋な力だけで、狂気の時代で絶大な力を得た。



−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−



 2XXX年、富裕層のみが住むことを許される区画以外、あらゆる犯罪が蔓延っているが、それらが裁かれることは無い。

 力こそが正義。

 そんな世界になっていた。


 力とは何か?

 この時代、力とは、権力と金である。

 だが、力は力。純粋な力、要するに暴力も力であった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



 何故こうなった?

 

「持ってるもん全部出しな。そうすりゃ、命だけは助けてやるよ。」

 貧民街で囲まれた学生服の少年は、強面の厳つい男たちに囲まれ、脅されていた。


 学生服の少年の名は、経津主(ふつぬし)虎千代。

 武力のみで世界に君臨する経津主一族の一人であった。

 

 経津主の一族と知っていれば、虎千代を囲む強面たちも、手を出さなった…いや、出せなかっただろう。

 如何にストリートで力を誇ろうと、経津主は別格。

 百数十年前、経津主は当時最強を誇った某国の正規軍の複数師団と精鋭部隊、格下の大国なら滅ぼせる程の戦力を相手に、一族だけで勝利した異常な一族である。

 それにより、本来国家間で結ばれる筈の同盟、友好条約を、一族で複数の大国相手に結ぶことになった規格外の怪物一族。


 小国一つなら、一人で滅ぼす。

 当時を知る者は、現在存命していないが、それが周知の事実なって久しい中、経津主一族に喧嘩を売る者など、滅多に存在しなくなっていた。

 そんな最中、カツアゲされている経津主虎千代は、ダラダラと冷や汗を流していた。


 どうしよう、妹の誕生日プレゼントを買いに来ただけなのに、怖そうな人たちに囲まれてしまった!

 妹のプレゼントを買う(買わされる)為に、大切に貯めた小遣いの入った財布をギュッと握りながら、虎千代は目を強く瞑る。

「さっさと出せって言ってんだよ!!」

 強面の一人が、虎千代に拳を振るい、虎千代の体が宙を舞う。

「ッぁアアッー!!」

 悲鳴が路地裏に響く。


「手が…手が…」

 悲鳴を上げたのは、虎千代を殴った男の方であった。

 殴った拳が砕け、指が力無くダランと垂れ、激しい内出血をおこしている。

「ァッ…ァァ…」

 痛みに涙を流す男に、虎千代を囲む男たちに動揺が広がる。


「テメェッ!!何しやがった!!」

 男たちの中でも一番体格の良い男が、虎千代に襲い掛かる。

「僕、何もしてません!!」

 涙目で叫び、しゃがみ込む虎千代を容赦なく男の蹴りが直撃する。

「…ァァァッ!!」

 ダメージを負ったのは、男の方であった。

 グニャリと折れた脚と痛みにのたうち回る。

 そんな姿に恐怖を感じた男たちは、

「ば、化物んだぁーっ!!」

 と、蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。


「だ、大丈夫ですか?」

 そんな風に逃げて行った男たちにポカンとしながら、虎千代は自身に手を出し、負傷した男たちに駆け寄る。

 呻く男たちに、どうしようかと戸惑っていた虎千代の後頭部に、痛烈な一撃が直撃する。


「そこまでよ!!このゴミ虫!!」

 貧民街に不釣り合いな出で立ち路地裏に現れた金髪碧眼の美少女。

 

 彼女に蹴り飛ばされたのか…

 振り抜いた脚の軌道を見ながら、虎千代は強烈な速度で壁に激突した。




 



 




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