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魔法絶対主義の世界を成り上がる  作者: 猫屋敷
0章目 始まりはここから
9/20

07話 新しい家族 元メイド

「さぁ、始めるぞ」


ハーヴィさんは余裕のある笑みを浮かべていた。周りが勝ち格であると言う雰囲気になるのは、どのくらい時間が進んだ先か——。


「これでも喰らいやがれ!!」


手のひらから炎の魔法を放ち、それを俺に向けて来る。

咄嗟に回避をし、様子見することこの上なしだ。

俺が避けたため、地面には炎が燃えたぎっており、徐々に雲に隠れていた月が、顔出す。


地上を照らし、さっきまで吹いていた風が弱くなり、最終的には風なんて起きていなかった。


「ふん、ならこれならどうだ?」


腰を下げて、地面を手に置き、ぶつぶつと言っているのがわかる。

その隙に俺は木の近くにある木の棒を拾い、ある能力を使う。


その前に俺の下元には明るい真っ赤に燃えた光が、足元を照らし、一心で光を浴びる。

術式の完成の儀式だった。のんびり見てるわけでなく、颯爽と魔法陣から降りる。

なんの驚きも見せなったが、実際心臓音はうるさい。


「くそ、ダメか」


詠唱を唱え終わっていた、ハーヴィさんは先程の余裕そうな笑みは無くなっていた。

どうやら本気で来るそうだ。だが、向こうがその気であれば、俺もそれ相応の実力行使をするまでだ。


「『植物操作プラント・コントロール』」


持っていた木の棒が、みるみるうちにでかくなっていく。その瞬間、いくつもの視線を感じる。それはおそらく皆が見ている………訳だ。


その顔はポカーン、としているものもいれば、間抜け顔もあった。


「な、なんだそれは……!?魔法なのか?いや、術式そのものが違う」


頭を唸らせながら、“最後のトドメだ!”なんで揚々と発し、今度は自慢表情となり、ナイフを直接投げつけてきた。


(え、いや。脳筋かよ)


なぜナイフを投げたのかは、意味不明だったこの状況。語る見込みが高まってきているのは、確かである。


「———なっ!?」


ナイフを避け、地面に刺さるナイフ。だが、甘かった。


銀色に光るそのナイフから、展開される魔法陣。四つ投げられたナイフは、それぞれ魔法陣が展開されていた。


胎児ゴーレムよ!行け!!」


禍々しいオーラを纏いつく、胎児ゴーレム。俺よりも巨大な見た目をしており、影だけで一心を覆い隠すほどだった。


「なら、喰らえ!!」


持っていたでかい木の棒を投げ、『植物操作プラント・コントロール』を即座に発動させる。



俺の手と共鳴し、近くにある植物が唸りをあげる。そこから、手のひらに集まる木の葉っぱ。それがたくさん集まり、そこから『植物操作プラント・コントロール』にて、一人でに動く葉っぱになるように、刃生えさせ、それは相手を包み込む。そして、切り裂く。


頬、足、腕、胴体。かすり傷程度ではあるが、それは確実にダメージを与える。


「ぐわぁ!くそっ……」


(一体、何がどうなってんだ……)


初めて見る技に皆は驚愕の顔を見せているのは、確かだ。もちろん、こうやって能力を行使することができている俺自身にも。


「さぁ、どうする。まだやるか?」


「ぐぬぬ!」


地面に膝をついて、俺を睨むその人は“ふっ…”と笑みを浮かべているのが、分かった。


疑問符を浮かばせるわけには行かない。


「クソが、なぜ俺がお前なんぞに負ける」


「…………」


「その力はなんなんだ!?」


形相な顔で睨みつけて来るその人に対し、なんも答えることができずにいた。


「…………超能力ですよ。魔法使いであるあんたらに毎日、毎日蔑まれた目をされ、食事もろくに食べれず……。そのため、俺はあんたら魔法使いと対等に戦える力を………。魔法だけが全てじゃないと言う世界を、作るために……。修行したんですよ」


「超能力だと!?魔法だけじゃないだと!?はっ、そんなの生まれたやつの決められた人生なんだよ……。俺は王家に生まれた………。そしてこいつやお前は魔法使いの家系に生まれられなかった。もう決まってんだよ?人生なんぞ」


「………………だから何?」


「あ?」


「だから、何?じゃあ、魔法使いじゃなかったら、生きる資格なし?………………そもそも、俺は魔法使いの家系です」


「………………は?」


鳩が豆鉄砲を食ったような、顔となった。目が点となり、“何言ってんだこいつ”と言う目で見てきている。


「………………俺はまだ14です。あなたにとやかく言える年齢でもありません。だけど、それでも俺は、あー言う子が生きやすい世の中を、作れるためなら、喧嘩売りますよ。相手がたとえ、王家だろうと。神だろうと。地獄の鬼さえも。もう決めたんです。魔法の適性がなしでも、魔法使いと一緒に生きられる…………そんな世界を。変えてみせるんですよ。世の中の腐った常識を」


この人の奴隷である、赤髪の三つ編みの女の子を、手で差しながら、俺の理想論を語った。


そう。これはただの理想論に過ぎない。


「はっ!そんなのただの理想論だ!」


「はい、知ってます。ですから、そうなった暁には文句なんて言わせません」


そう笑みを浮かべ、その子の元へ行く。完全に怯えているが、俺はその子の肩を叩き、ハーヴィさんにこう伝えた。


「この子………貰っていいですか?」


と。二人は見開く顔をしていたが、一人だけ。そう。アルフィーさんだけは、“やれやれ………”と言った、なんとも浮かばない顔をしていた。


「ふん!好きにしろ、そんな役立たずが欲しければな」


「んじゃ、そうします」


アルフィーさんの元へと行き、帰ろうとするが、その子に止められる。


「あの、アレはいいんですか?」


(元主人をアレ扱い……。この子、見た目とは裏腹に強そうだ……!)


元主人となったその人を指さしながら、そう言うが俺はそれを手で抑える。なぜなら、指を刺しちゃいけないからだ。


(まぁ、あのまま返すと後々大変そうだし。これを置いていくか)


バッグに入れていた瓶を取り出し、それをハーヴィさんの元へと持っていく。無言でそれを置きながら、再びアルフィーさんの元へと行った。




馬車に乗り、ローセンバリ家の敷地内に入る。ローズさんからは心配な顔で、問い詰められたが、事情を説明すると、納得と安堵の表情を浮かばせていた。


「あ、あの、私がいいんですか?」


「もちろんよ!あなたも今日から家族……。よろしくね!私はローズ・ローセンバリ。あなたの家族となる人物よ。そして、そこにいる人は私の婚約者。アルフィー・オルダイト。一応、あーでも第一王子だけど……。で、あの子が………」


そう簡単な説明をするローズさんを前に、アルフィーさんは“一応ってなんだよ、一応って”とぶつぶつ呟いていた。


そして今、俺の紹介をしているのは確かである。


ローズさんの書斎にて自己紹介が始まったのは、帰って速攻だった。


「俺は、アーロ・ローセンバリ。元々、君と似たような境遇……だったから、よろしくね」


簡単な説明をしてから、手を差し出した。相手からあまり警戒心を感じられず、良好な関係じゃないか?と言う喜びが現れて来る。


「私はクロエ………です」


緊張強いのか、弱々しい声で言う。


「クロエ……。いい名前じゃん。よろしく、クロエ」


「は、はい。よろしく………お願いします。あ、アーロ……さん」


まだ良好な関係ではなかったが、これでもだいぶマシな方だと思っている。

また新たな家族が増えた。賑やかになりそうだった。






その日の夜、俺の部屋にクロエがやってきた。何やら、今日のお礼がしたいだとか。パジャマ姿となっている彼女は、新鮮そのものだった。

もうそろそろ寝ようとしていたため、明かりを消し、部屋は月の明かり以外の光はなし。

それに三つ編みの解いた状態の彼女の髪は、きちんと風呂に入ったからなのか、艶々さが分かる。


「それより、お礼って…?」


「あの、アーロさんはどう言うのがお召し物ですか?」


「———と言うと?」


「な、何か私に出来ることが有れば………。その………」


何故か顔を赤らめていて、ベットに腰掛ける。


(うん、あかんやつだ)


「はい、ストップ。そう言うのはいいから」


「で、でも———。ハーヴィさんはこうしろ……と」


(あの人何教えてんの?意外と自分より幼い子が好きなのか?)


そして何故顔が赤くなっていたのかは、理由が分かった。

夜這い……のやつじゃないかと。


(だが、そんなのは今はいい。とにかく、別のにしないと)


「もうクロエは、あそこの子じゃないんだから。郷に入っては郷に従えって言うでしょ?」


「は、はい…」


「なら、この家のルールに従おう。お召し物……って言ったら、明日甘いものが食べたい。あ、でも君はもうメイドじゃなくなってるから…………。明日、甘いものを一緒に食べよう」


と、“名案!”という感じで言う。本来は回答はもう一つあったが、やめにした。あんなセリフ、俺には臭すぎるから。


(誰が『もっと君のこと知りたい』なんて言えるか)


と内心では心臓が、早い鼓動を打っていた。


「そ、そんなのでよかったんですか?」


「うん、それがいい」


そう言うと、クロエは安心した表情をした。それはいい笑顔で。

今までの扱いが、なんとなく見えてきた。さっきまで自分で夜這いのような行動に移していたが、体は強張っていた。


「す、すみません。私、ハーヴィさんの家では、よくそんな事をやらされていて……。でも、アーロさんはそんな人じゃないって言うことが、分かりました。ありがとうございます!では、おやすみなさい!」


と、慌てて人の部屋を出る。その笑顔は本当に、いい笑顔で。


(…………やっぱ、ハーヴィさんで性犯罪者?そんな人の兄をしてるアルフィーさんも大変そう………)


自分のベットの中に入りながら、いろんなことが思考される。

寝るときはアレよこれよと考えてしまうため、布団の中に潜り、目を閉じる。


一日が終わり、新たな家族をゲットした。


そう。新たな家族を———。

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