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…アルキアン side…
地に咲く黒の炎の花弁は風に舞い眼前の敵を燃やしながら苦しめそれを押し除けて僕達は前へと進む。
できるだけ前へと進む為敵軍のいる地より遠回りして外側より攻める。
僕達が妨害しないことでその狙いは全てライオット王に向けられるが僕の炎を喰らってなおその攻撃の手は止まらずに敵をモノともせずに進む。
だが敵も馬鹿ではないようで盾による攻撃でその巨体を押し込み行動阻害をしたり魔法による白い弾が着々と魔力を削る。
魔力がなくなればその王とたらしめんとする能力は無くなる…後は耐久性を上げつつ押し留めておけばライオット王も沈めることはできるだろう。
見れば王には魔法による鎖も絡みついているがその無尽蔵の体力で引きちぎっている姿も見れた。
あれだったら放置していても別に問題などなさそうだ。
「ハァァァァァッ!風より速きこの一撃を見よ…速剣流『瞬閃』続けて『一閃』」
横で走る当主様が走りながら納剣すると体勢を屈め目にも止まらぬ勢いで剣を引き抜くと目の前に迫っていた騎士の頭を切り落とす。
その勢いに乗り横薙ぎに剣を振うと両隣にいた騎士の胴体が宙を舞う。
速剣流は我らが母国で生まれた剣の流派だがその原型は極東のとある島国の居合という文化から生まれた流派だ。
その一撃はとある時代剣聖の祖はそれを光を超えゆる最高の絶技とまで言い示したほどだ。
だが我々とは違い薄く鋭い剣を使うからこそそれは輝いていた…我々の剣はその速度を出すには重厚で叩き潰す方が速い。
故に剣聖はその使う剣を真似て刃を反らせ素材を少し無くしてロングソードよりかは重厚ではないがその鋭さはそれとは比べないものになった。
遥か昔に剣聖が夢見た最速の剣を追い求める…それこそが速剣流の流儀にして特徴だ。
「ちッ…そろそろ来るとは思っていたがコレほど速くこちらへと向かわせてくるか」
「どうやらその伝令は上空の神官にも伝わっているようですよ」
当主様の速剣と僕の炎による攻撃をしていると奥の方より雄叫びを上げながら獣人族の小隊が進んでくる。
目測で三十人で一つの隊が7つほどこちらへと向かってくる。
四方を盾で守り隙間からは槍がチラついている…正に虫が動いているような兵の動かし方故に諸国の兵からは『甲虫陣形』と言われているやつだ。
だが当の本人達はその呼び名には不快感を表しているようでその陣形は獣人族の中では盾で守り迅速に雷のように制圧して去っていくことから『雷獣陣形』と言っているらしい。
まぁそんなことどうでもいいわけだがコレはちょっとまずいかも知れない。
ただでさえあの甲虫の陣形が邪魔だというのにも関わらず宇宙からはあの大声で落ちたはずの聖獣が僕らの上空を旋回している。
「あやつらがいつ我らに襲いかかってくるか分からぬか…それに囲まれたな」
獣人の小隊は僕らと同じような立ち回りで外側から移動して後ろを取りジリジリとこちらへと歩み寄る。
彼等は人族よりその体躯が屈強で脚が速いからこその芸当…感心こそするものの今はそれは見たくはなかったものだ。
「当主様…先陣を切らせていただきますッ!」
「うむ…仕方がないヘイトが獣王殿よりこちらへと向いた今激しい戦いは避けられぬゆえ…暴れるぞッ!」
昔より当主様、いや父上は獣人のその体躯による速さと野生の感による危機察知には惚れ惚れするものがあるとおっしゃってた。
いつかはその危機察知すら人族を超越する身体能力にすら追いつけぬほどの速剣を示し最速を目指すとも。
だからこそ今この時の戦いほど待ち望んだことはないのだろう…母上がコレを聞いたらどれほど自分の身を案じないと怒ることやら。
後からこの国のことを報告する僕の身にもなって欲しいものだ。
手から炎が噴き出てそれが剣に覆われて大剣となる。
いくら集まっていても僕の炎を食らえばいつかはその鉄の盾は燃えて溶けることとなるだろう。
幾ら槍で突かれようとも炎を凝縮して鎧としたこの身には槍先が着こうとする前に溶けてしまう。
だからこそ僕はただ前に立ち塞がる盾に向かって大剣を振り回し道を拓く…ただ敵将を討ち取る為に当主様に倣いただ速くその大剣を振う。
そうして大剣を振り回していると敵陣地の奥の方から何かが爆破するような音が聞こえた。
何度かの魔法による爆破に目も疑うような何処からともなく大きな岩や木、それに土が宇宙から降ってきている。
それら全ては敵軍の方へと降り注ぎ今僕と対峙していた獣人が敵将を心配してかその陣地の方を見始めた為その隙を見逃さず力一杯大剣を振り落とし盾ごと叩き潰した。
旋回していた聖獣がそちらを見たそして上に乗る神官が武器を握りしめている。
ライオット王に攻撃していた魔法使いもそちらを向いた全てが上空を仰ぎ見た。
そこには小さな体躯に白い美しい髪が映えていてここにいてはいけないし似合わない…そんな人がいた。
飛ぶ聖獣が口からは炎を吐き出して周りにいた獣人は矢や魔法を放つ。
「レナッ!」
一目その一瞬目があったから声を掛けその一声は届かず聖獣が接近して神官の槍が腹部を貫く。
悲鳴のような絶叫…否怒りの声が腹の奥から出されると共にそれに近づく為大剣を握りしめて振う。
「魔法部隊再びヨーイッ!…放てッ!」
その奥方からの声に「やめてくれッ!」と叫んだ…だがその声すらこの戦場には響くことはなく上空には飛翔する石が放たれてその小さな体躯を貫き…そして地に落ちていく。
頭の中の何かが千切れて激しい怒りに苛まれる。
近づく敵を吹き飛ばし炎で焼き尽くしてただその着地点へと近づくためだけに剣を振う。
「邪魔だぁぁァァァァッ!」
飛んでくる攻撃は気にせず身体には矢が突き刺さろうとするが激しく燃える炎がそれを防ぎ僕を前へと推し進める。
絶叫し父上の方すら見ずにただ周りも考えず炎を撒き散らして手に持つ大きな剣を振り回した。
そして…ただただ剣を振り回し前へと進み見据えた遠くから突如爆発音がし衝撃波が響く。
それと共に白の火柱が天を衝くように立ち上った。
何故だかは知らないが背には不快感のある汗が流れる。
僕の気持ちをより一層焦らせた。
…アルキアン side end…




