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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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『烈風爪』という技名と共に赤熱した爪と身体は白に染まりレーザービームの様に私へ目掛け飛んでくる。

その場にいては行けないという野生の感が足を動かし横にずれる様に走り出すとその横を熱風が通り抜ける。

顔には火の粉がかかり思わず熱から逃れる為足を止めて顔に手をやってしまう。


「獅子の一族であるワタシから逃げられると思わない事ね…愚かなる小娘」


獣に転じたトゥランベル嬢は足が止まった私の周りを囲み白炎の輪を作りだして捕らえてくる。

さっきまで仲間を殺されて怒り狂っていたのに一転して私を勧誘して逆ギレして…コイツの感情ってのはどうなっているのだろうか?


「コレで終わりだッ!」


白炎の輪が縮まり熱風が竜巻になり火の粉が散らばり視界を奪う。

爪が頬を撫で削ぎ落とされる瞬間身体を捻り無理矢理避けると目の前には赤と白に染まり此方を見つめる獣の姿があった。

瞬きする間もなく目も止まらぬ速さで繰り出される追撃が眼前に迫りそれから逃れる為後ろへと下がると獣は嗤う。


此方がピンチになり狩られる運命にあると見定めた相手にその口を裂かせるように上へと上げた。

爪が振るわれる度に衝撃波が起きては大地を燃やす。

私のようなアーティファクトのローブでもなきゃ簡単に布は燃やされて焦がし尽くされてその肌は火傷より酷いこととなるだろう。


「手も足も出ない…何と矮小なことかッ!このまま嬲り殺してやろう」


「いや…コレも作戦の内なのさ」


こちらを嘲笑う声が聞こえたが私には避けている間にも並列思考で構築された魔法陣がある。

それをどのような順番で展開させて当てるか思考する…相手がどうすれば私が思う行動をしてくれるのかただそれだけを考える。

その過程にある自分の身の損失などは最低限考えない。

どちらにしろ生きてさえいれば『回生』で生きていられるのだから。


「グルルルッ!良い強がり方だ…何の作戦もなくただこちらを揺さぶるだけの正に弱者にしか出来ない強がり方…本当に虫唾が走るッ!」


目を見開いた…一瞬のタメと同時に目の前にあった二つの腕に付いた爪が八つに見えた。

コレは幻覚かそれとも本当に腕が八つに増えたのかそう考えている間に爪は振るわれた。

上下左右に斜め横から同時に迫り来る爪が私の心臓目掛けて襲いかかる。


コレを喰らえば死ぬ、そう思い咄嗟に腕を心臓の前へと出していつも使っている虚空庫とは違う空虚な空間の入り口を作り出した。

それは異次元と定められた何も無い所にして何もかもが入ることができる所。

腕一本分しか入らないがこの爪全てが私の心臓を狙うなら好都合…このまま呑み込む。


「魔法陣展開…『異次元庫』ッ」


「チィッ…余計な真似を!」


心臓に収束するように襲いかかってきた爪はその直前でばらけると人体の次なる弱点へと襲いかかる。

頭・首・四肢・腹にへとそれぞれ爪が突き刺さり抉り削ぎ落とされた。

白く染まる炎はそれと共に肉体を焼き痛覚をなくした私にも幻痛が脳へ伝わり頭を揺らす。


直後に熱風…片目は爪で抉り取られた為よくわからなかったが『烈風爪』というだけあってタメを作って放たれた一撃の後には視界は白へと染まり身体が何かに打ち付けられる。

身体は浮き地を転がりそれでも止まらず石や瓦礫が柔肌に突き刺さった。

そしてローブから露出してしまった顔や肌が火傷を負いそれを追い越し炭化しボロボロと崩れ骨が顔を出す。


「ゲホッ…ァァァゴボッ」


すぐ立ち上がらねばと思い立ち身体を起こそうとすると口からは熱い血が漏れ出す。

肌はピリピリとして痛いのか痒いのか分からないほどだ…いやコレは炭化して崩れているからか?

こんなことになるんだったら最初から仮面をして顔をガードしといた方が良かったのだろう。

息をしずらかったから外していたがこんな所でそれが仇になるとは思わなかった、


「グルルルル…全く折角痛みすら感じさせず一撃で仕留めてあげようと思いましたのに」


目の先に巨体となった獣がその身体をゆっくりとこちらへと歩んでくるのが見えた。

その目は獲物である私から離さずどこか悲しげにすら見える。

爪は未だ赤熱しているが白から赤へと変わり明らかにその熱は冷めてきている。


ゆっくりと身体を起こし心で『回生』を唱えるとこの身は全てが巻き戻るように回復していく。

穴が空き焼かれて血すら流れない腹は火傷から治り血が滴り更に時間が巻き戻り全てがあるべきところへ戻りどこからともなく皮膚がそこに作られる。

そして開いた穴は戻り砕けた頭蓋骨や目も全てが魔力とは違うナニカを代償に『回生』によって巻き戻る。


「あーあー…うぅッうん喉も治ってるねぇ」


「…貴女狂ってるわね!あのままだったら苦しまずに死ねたのに何が貴女をそこまで生かそうとするのかしらッ!?」


喉を摩り喉の状態が良くなっているのを確認していると獣がそう吠えた。

かと思うと首に圧迫感を感じ持ち上げられる…目の前には毛を逆立て此方を見つめるトゥランベルの姿が見えた。


「ハハットゥランベル嬢…君は優しいねこんな敵にも慈悲をくれて断ったのにまだ慈悲を与えようとするなんて」


「フンッ…この世は弱肉強食だからこそ未来の強き者は仲間に引き入れないと行けないのよ」


持ち上げられた首が上を向き宇宙を見つめる。

宇宙ではこうなっている私のことすら気にしない天使と悪魔が暴れている…天使と悪魔一体に対して聖獣は三匹で殺し合う。

敵の指示はやはり的確で急な敵襲にも順調に攻略している。


「生まれる国や時代、世界が違えば君は慈悲を与え皆を率いる聖女に相応しかったかもな」


だがコレもそれも全て私の計画通り。

…まぁ実際にはこうなるとは思わなかったがこうやって近づくことはできたのだ結果は上々というべきだろう。


「グルルッ…たらし文句?全く…それが遺言で良いか?」


「いや最後に一つ…魔法陣展開『星涙炎』…どうせならこのまま一緒に吹き飛ばされようッ」


自爆覚悟の私の上部を起点とした一撃…あの傲慢野郎でさえコレには目をひん剥いたほどの威力だ。

頭に掴まれた爪を離さないよう強化した手で掴み離さない。

どちらの炎がより激しく燃えるか比べようでは無いか。


目の前の全ての魔素を呑み込んで一つの燃える玉が作られる。

頭の中でただ生き残る為の思考と共に「カチッ」というスイッチ音が響く。

玉が私の頭の上へと落ちてくる。


…そうしてまたしても視界の全てが白へと染まり全てを焼き尽くす熱風が吹き荒れた。

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