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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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目の前で赤い長髪を靡かせたトゥランベル・ターナ嬢がこちらを睨む。

地面はトゥランベル嬢が発する熱によって溶け出しており上から降り注ぐ獣人族の血肉によって赤く染まった。


「あの風の中で良く生きれたな…」


「グルルゥゥ…我々の同胞が命を繋ぐため庇ってくれたからなッ!だからこそ、その命同法のために貰うぞ」


ご自慢の爪が赤熱し身体の節々から火の粉が舞い出してこの場を灼熱の熱風が襲う。

先ほどの『ライジングゲイル』によって崩れた瓦礫の粉が舞いその粉塵に火がついたことでただここにいるだけで呼吸がしづらい。


「もはや逃しはしない…子供だからと侮らないワタシの名はこの国を守護し背負う元女王近衛騎士が一人トゥランベル・ターナであるッ!行くぞ…疾くと死に晒せッ」


その身体は燃え上がると共に一瞬の閃光が上がり音を置き去りにし駆ける。

私は突然のそれに焦りながらも身体強化を施した身体で地を踏み込み瓦礫をひっくり返し盾のようにしその直線上から避ける。

ただ嫌な予感がするその一心で動きその直後炎の塊が通り過ぎた。


私がひっくり返した瓦礫は炎で人型の型を抜いたように溶けている。

正面を見ると通り過ぎた炎の塊が私を見つめ口が裂けてしまわんばかりに引き攣っている。

いやこの引き攣っているのは…私の顔だろうか?


瞬きをすれば目の前に熱気を感じ鋭い爪が襲ってくる。

使う魔術を考えて構築する暇もなく身体のみを後ろに下がると逃さんとばかりに連撃を繰り出す。

なんとか目で追えるぐらいだがコレは身体強化を目に重点的にやっているからこその芸当だ。


「グルルッ…どうしたんですの!その程度か!?」


「ハハッ…馬鹿を言うなよコレが本気なわけないだろッ!ご自慢のお嬢様口調はどうした乱れて来てんぞ!」


「フフッ…貴女の前でこんな口調もういらないでしょう?どうせここで死ぬのですだしなぁ…そんなに減らず口叩くのなら耐えて見せなさいな」


もはや乱暴な口調とお嬢様口調がごちゃごちゃになりめちゃくちゃな言葉が投げかけられる。

そして連撃が止まると身体を捻りトゥランベル嬢は瓦礫の山の上へと登り獣のように地に四肢を付けてこちらを見た。


一息つける休息…実際あの連撃をされ続けていたら私のスタミナ負けで何処かしらダメージを負っていたことだろう。

やはり会話は大事だと考えながら頭で今の状況で大切な魔術を構築する。


並列思考で考え考えた側からその思考を凍結させる…ナイフだけ使っていてもどうやってもすぐさま考えなければいけない工程が必要となる。

ただ持っているだけでは意味がなくなるからこそこうやって魔術のストックを作り出す。

魔素なら空気中にある…それを辿り誰も知られることのない魔術を準備する。


「この爪が見えるかしら…この鎧が見えるかしら?コレこそワタシ達をこの国一番と示した聖なる国の産物よ!産出された設計図より最も適した形へと成った最高の武器…さぁこの素晴らしさを知ったのならワタシ達の武力に降りなさい」


「…何を言いたいんだ?そんな武器を渡されたからなんだってんだ?」


「……貴女って意外と馬鹿なのかしら?この世は弱肉強食よッ!時に強き者に頼りそしてッ強くなり更に強いものを喰らい付いて蹴落とす…ワタシ達と共に来たのならばより良い世界を見せてあげると言っているのよ…貴女は強いからこその本当に最後の慈悲よ」


こちらを覗くその顔は穏やかであり私がトゥランベル嬢の騎士達を殺したのにも関わらず本当に慈悲をかけるようだ。

獣人族の価値観に宗教の価値観がごちゃ混ぜとなり生まれたそれは私にはどうにも合わない。


確かに私は強くなりたい…が何かが違う気がしてならない。

私の夢・目標・希望・今までの努力その全てが強くなるための手段で構成されたものだ。

彼女についていけばその全てが達されることだろう。

思考の隅ではそれも正解、コレも正解とは言っているが何故か気に入らないのだ。


「はぁ…残念だわ…貴女は愚かね?歯向かうなんて」


何故か、何故かは分からないが今彼女が言っていた全てが私にとって理想で正解であるのに関わらず私は虚空庫から出したナイフを彼女に向けた。

意味がわからないほどの正解だったのにも関わらず気に入らないしそれじゃあアルキアンの為にならないという言い訳にもならない言葉が頭を巡り矛先を向ける。

だがコレでいいとだけ言葉にして言えるぐらいには自信を持っている…何故か笑えてくる。


赤く染まる宇宙の下で彼女の身体が更に赤く染まる。

鎧の下に見えた肌色は燃え盛る炎を象徴するような色へ変わり銀色の爪はその成長する身体と共に大きく変形しその爪の一つ一つが鎌のようになる。

目は黄金色へ輝き大きく見開かれ牙が開かれる。


獣に転じたがその人族のようだった面影は残した。

クラウチングスタートを決めるように姿勢は低くしそれでもなおこちらへ慈悲を投げかけるような顔をしてくる。

火の粉が彼女に応えるように集まり塵が集まって鎧の上から毛皮のように覆い被さる。

光を放つその姿は正に夜に顕現する没したはずのもう一つの太陽にしてその化身…神獣と言ってもいい姿をしていた。


「さぁ小娘準備はできたか?慈悲を無視する愚か者よ…今度こそ疾くと死に晒せワタシが父上…そして赤き母なる王女より受け継いだ一つのみの神授奥義『烈風爪』」


それはたった一瞬の出来事…一筋の赤くそして白く輝いた線が宇宙より飛来した。

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