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私が召喚した天使と悪魔は対価によってそれぞれ思い思いに行動していく。
その数おおよそ五十を超える小隊がこの戦場に突如姿を現した。
理性こそあるが倫理は無く自らの肉体が穿たれようとも魔物の肉体を象る魔力の塊には痛覚すらない為私と同じ…いやそれ以上のゾンビ戦法を取れている。
天使はその身体の中心にあるコアの周りを飛ぶ無数の目玉が眩く光ったと思えば次の瞬間にはその全ての目玉が前へと集まりレーザーを放つ。
触れれば極楽浄土へ駆り出されることとなる高出力さだ。
前に作った私が扱いきれない光の魔術にも似た性質だ…あんなもん直接食らったら一瞬で肉体など溶解してしまうだろう。
それを横薙ぎに放って空を炎より更に焦がしまた目玉が分離し魔素を空気中から集める。
そして魔素が集まりコアが眩く光を放つとまた先ほどの動作をしてレーザーを放つ…倫理がないだけで上級の天使と差があまりない様にも見える。
一方の悪魔は…圧倒的フィジカルで宇宙を制圧して行っている。
宙を支配するのは今までは聖獣だったが今この時だけは急に現れた悪魔に部があるようで暴れ回っている。
魔法すら使わずその何にでも変形する身体を駆使して時にその身体に無数の触手を作り出し時にそれは棘へと変形し血が宙を舞う。
「いたぞ…あの小娘を殺せッ!」
「もう見つかったか…こんな瓦礫の中に身を潜めてたのによく見つけれるな」
幾ら嗅覚や聴覚に優れた獣人といえどこんな血塗れの戦場ではそれも性能は半分以下になると思っていたが中々それでも効果は発揮するらしい。
いやこの場合世界特有の何かしらのスキルが作用したというべきだろうか?
その先頭には長髪の赤髪をはためかせた娘…確かトゥランベル嬢だったか?
ということはやはりこの戦場での敵は『百獣軍』か…色々混じってたから分からんかったが敵がこの国の最高戦力ともなると面倒だな。
「あら…貴女は確かあの大罪人のお側付きのお人でしたわね?」
「お嬢様お下がりください此奴の首は俺が掻き切ってやりましょう」
「………まぁ最後に慈悲ぐらいはかけてやりなさいな?この宇宙を飛ぶ蝿…消してくれないかしら?とっても邪魔なのよね」
瓦礫の下で一方的にそんな言葉が飛び込んでくる。
天使と悪魔に任せて体力やら魔力を回復させようと思った矢先にコレとはなんとも運がついていないんだろうか。
のそのそと瓦礫の隙間から這い出て一息吐く。
「なんて優しいんだろうね…私がこうやって無防備に出てきても何もしないなんて」
「……貴女その歳で側付き人なんて大変でしょう?だから同情したのよ…大罪人から離れ我々と共に楽園へ導く足掛かりになりませんこと?」
目の前でくっちゃべっているがそんなの気にせず頭の中をぶん回す。
コレほど慈悲をかけてくれているんだ…時間を作ってくれているんだからそれ相応の舞台は整えてあげないといけない。
果たして魔力に匂いや音はあるのだろうか?
「まぁ口に出せば聴こえるかもしれんが?」
「それどうゆう意味でしょうか…ところでいつ蝿を消してくださいます?」
琥珀色のナイフが輝けば一目で意思があるとして狙われそうだし…ここは普通に発動させるとしよう。
あぁ魔力の節約のためにコレを作ったのに結局こういう大事なところで使えないとなるとなんか残念だ。
「答えなんぞ勿論Noだ…魔法陣展開ッ自らの手で対処してきな『ライジングゲイル』ッ!」
「なッ…全隊防御態勢の陣を!」
この瓦礫の山に渡り巡らせ踏み行く死体を辿り作った魔力の経路が輝き出す。
空中に漂う魔素を点々とさせて紡ぐ…発動させる時間は一瞬のみ。
その分威力やら効力、その魔法陣に込められたものは分散されて本来の力を発揮出来ないがその一瞬の爆発力のみを利用する魔術には最適だ。
地に青白い魔素が浮かび上がると次に黄緑色の粒子へとそれが変わり線となる。
隠れたって防御していたとしても無駄…何せそこは爆心地、魔術の発動される中心なのだから。
「ほぉら…さっさと吹き飛びなッ」
私の掛け声と共に緑の軌跡が漏れ出して風となる。
それは目に見える上昇気流へと変貌し範囲にある全てを上へと投げ出した。
重厚な鉄の鎧を着た大男も盾を地に叩きつけめり込ませ此処から離れないと意気込んだ奴も魔術を発生させている魔法陣を壊そうとしている奴らも一瞬の出来事で全てが宇宙へと旅立つ。
「ふぅ…危ない危ない」
流石にこんな近くで魔法陣を壊されるのは私でも困る。
魔力が乱れたことによる爆破もしても良かったが此方まで爆破に飲まれるのは頂けない。
だからこそのそのそと出てきた瓦礫の中にまた戻ったんだが。
宇宙には鎧を纏った騎士が浮かび上がり聖獣はそれを餌かと思ったのか咥え、悪魔はその無様な姿を微笑うように掴んで聖獣の身体へと叩きつけ天使はただ傍観する。
そして風が止み外へと出て目で周りを見渡す…一瞬の風のみを作り出したが中々良い結果をもたらしたらしくさっきまで吠えてた獣は全員宇宙へと飛び立ったらしい…?
もう一度周りを見渡してもあいつが見当たらない。
あの甲冑のヘルムの隙間から溢れ出していた真っ赤な髪はこういった場面だと映えると思ったんだが意外と見つからない。
そう思いながら周りを見渡していると前方から熱気を感じ直様そこからバックステップをして背後の瓦礫の山の上に立った。
瓦礫の側面は爪の跡をつけて燃えて溶け出し形を変える。
「…まさかあの風で吹き飛ばないとはな」
「よ…よくもやってくれたな…この小娘ガァァァァッ!」
そこには赤髪を逆立て此方を威嚇するトゥランベル・ターナの姿があった。




