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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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トゥランベル・ターナは騎士団長に連れられ会場内へと登場した。

拍手喝采が巻き起こりイードラ王国貴族は苦笑いを浮かべた。

その当人は笑顔を振りまき拍手に応えるように空いている手を大きく振る…普通の貴族じゃ考えられないだろうがここは他国、やはり国が違えば貴族の在り方や立ち振る舞いも変わってくるのだろう。


ふとあのトゥランベルのことはどうなったんだろうと思いアルキアンの方を向く。

こんな状況だし苦笑いでも浮かべてんのかなと思っていたんだがそれは違いアルキアンは私のことを見ており何故か心配するかのような視線が向けられていた。


「今日というこの日に我々クソなあの国からの脱却…そして重なり勇者王たる俺の誕生を記念するこの時に感謝を込めて……乾杯ッ!」


その場にいた誰もが手に持つ杯を掲げそれを呷る。

それを真似をしようとした…色は赤色匂いは血の匂いが少々するが薬草でも入れているのだろうかミントっぽいスッとするような爽快感のある匂いもする。

何故か懐かしい匂いだと感じながらも口にした。


「ゴフッ…オゥアッ……」


口の内側いっぱいにドロドロとした液体が流れると共に血と薬草の味が広がった。

ついそれを吐き出してしまいそうになるがここで失態をして仕舞えば何か言われるかもと思い無理やり喉に通した。

喉にへばりつき不快感が頭によぎりミントの爽快感のある味が味覚と頭をバグらせる。


「ガァァァァッ!相変わらず不味いッ!死線の中にある苦渋より不味い…だがコレが我々獣人族の舐めてきた苦渋そのものだ。忘れないよう語り継がなければな…さぁ食えッ!呑んで溺れろッ!今夜は祭りだッ!」


皆んなが口を窄めたり顔を顰めている中で獣人王と言われる席についたライオットが咆哮を上げて苦言を言い表してパーティの開始を言い放つ。

それと同時に貴族達も歓声を上げる。

それはライオットのような咆哮を上げたような苦味や不味さを吹き飛ばすような大きな声だった。


人と人が話を始めライオットはそれに混ざるように玉座から飛び降りてその話し合いに混ざるように駆け出し挨拶をしていく。

自分から話題になるように自分を大きく見せ子供のいるところには獣の姿になり怖がらせに行き存在を示す。

正にそれは愚か者を魅せ踊る道化のように大衆に対して自己顕示欲を曝け出し王という立場から下を見て行動し続ける『傲慢の王』と表せる。


当主様の方を向くと多くの獣人貴族に囲まれてその中心で苦笑いを浮かべている姿が見えた。

さっきまでカルメア嬢とダルク坊の父達と話していた時はその顔には笑顔が浮かんでいたが今は無く獣人貴族達の勢いに追いやられ当主様のみが孤立してしまった。


「あの…アマガル家のご子息であられるアルキアン様ですよね?『憤怒』を持つとされ昨日にはトゥランベルお嬢様にお目掛けしてもらったという。もしよろしければお話をお聞かせくださいッ!」


「是非ッ!是非に私共にもお聞かせ下さいッ!昨夜に行われた当人同士の会合ではどの様なお話をなされたのですか!?」


獣人族や人族の各国の貴族が押し寄せては手を惹き私を追い出した。

そうしてあっという間にアルキアンは声も出せずに囲まれてしまい私との距離も離れていく。

貴族達はアルキアンが何かを言う前に質問を始めているため答えが出て来ず一方的な押し問答が繰り出され時間が過ぎていく。


何というか…既視感所謂デジャブを感じながらも机の上に乗った料理を口にする。

やはり主役が獅子の獣人王だからだろうか肉料理が大量に置かれている。

味としては香辛料や調味料があんま使われていないようで素材本来の味がしてコレはコレでアリだなと感じた。


「ご機嫌よう…貴女が彼がおっしゃっていた平民のお側にいらっしゃる付き人さんでしょうか?」


手に皿を持ち取り分けた肉を食べているとそんな声が聞こえてきたのでその皿を机に置いてから振り向いた。

視線の先には話題となっているトゥランベル・ターナその人の顔が目の前にあった。

目の前に顔がありびっくりしてその場で固まっているとトゥランベルは私の顔をまじまじと見てくる。


「…ふーんなるほどね。全然ワタシより強そうには見えないけど本当にワタシより強いのかしら?」


私の顔を見るなりそんなことを呟き手をこちらへと差し出してくる。

「あぁ…これは」と思いながらこちらも手を差し出し握手する。


「フンッ!……顔色ひとつ変えないか」


コレまたテンプレな展開だなと思いながら手を握られた瞬間に力を入れられて握りつぶそうとしてくる。

だが生憎と私は痛みに鈍くなっているため何と無く握りつぶされているなと思うことしかできない…そんな風に平然とした態度をしてるとトゥランベルは面白くないという顔をした。

そうして離された手は赤くなっておりテレビが砂嵐になったかのような痺れが襲う。


そうしてトゥランベルは「では、また」と私に言い放つと人混みを掻き分けアルキアンの側へと歩き出す。

彼女がそうやって歩くことで貴族はどよめき誰もが会話に耳を傾ける。

その状況が何故か嫌になり私はそこから離れるように足を前へと出した。

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