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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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ばら撒かれたプログラム通りに親善試合は進んでいき周囲には熱狂の渦が巻き起こっていた。

貴族達と獣人族はそれぞれ自分達の権威を示す様に魔法や剣術を駆使して戦う姿を見せて勝敗を競い合う。


中には騎士が代理で出たりそれこそ戦えなさそうな奴が出たりと様々な出場者がいるが…何というか人族側はどれもこれも戦い方に面白みがないってのが正直なところだ。

剣術に関してはそこそこ種類があるから見栄えがあるが魔法はどれも似たり寄ったりといったところ。

まぁそれは戦う相手が獣人族だからってのもありそうだが。


獣人族の戦い方は大体が間を開けず肉弾戦を仕掛ける戦い方。

だからこそ魔法を詠唱している時間なんてあるわけもなくもし詠唱できたとしても短い文章に限る。

だからこそ似たり寄ったりの低級魔法しか撃てないのだろう。


その分獣人族の戦い方は目を惹くものがあった。

鳥の獣人ならば空を飛び弓を撃ち、滑空してから投げナイフ、急接近して斬りかかり一撃離脱し空へと帰る。

鼠の獣人は小さい身体を駆使し前進姿勢で駆け回り闇夜に紛れ相手が見失った所で急所へと飛び掛かる戦略を見せた。


中でも目を一番惹いたのはあの宰相と同じ狐の獣人達だ。

誰も彼も皆宰相と同じく狐の面を付け特徴的な尻尾を持っていてキューティクルな見た目だが戦い方は面白い。

魔法の様に詠唱や魔術の様な魔法陣を介さずに宙に火を浮かべたり土塊を浮かべたりしそれを用いて攻撃を行う。


時に爪での攻撃もしていたがほとんどがその奇怪な術での攻撃をしており狐の獣人族の戦いだけは楽しかった。

そんなこんなでトーナメントが進んで行き次はアルキアンの番となった。


「さぁ次なる相手は王国の伯爵子息…アルキアン・アマガル選手の登場です!アルキアン選手は何と獣王様と同じく大罪の力を手にしているとのことですッ!」


貴族側からは拍手喝采といった感じの雰囲気で応援しているが獣人族側は子供だからと侮っている様で「子供ならもう寝る時間だぞ~」やら色んな野次が送られる。

そんな中でもアルキアンは堂々と歩いて行き腰には剣を携え炎は隠す。


「さぁてそれではそんな大罪に打ち勝つ相手を紹介致しましょう…我々獣国が誇る全てを薙ぎ倒す『百獣軍』の長のご子女様…『烈風爪』のトゥランベル・ターナ選手の登場です!」


その瞬間獣人族側の方からは咆哮とも言える喝采が送られ会場は大きく盛り上がりを見せた。

この国のことはあまり知識がないのだがその『百獣軍』ってのがこの国の守護を行う要となっている軍なのだろうか?


アルキアンと対になる様な方向からご子息とはいえないであろう体躯を持つ獣人族が姿を見せた。

顔は普通の人族だし腕も人族っぽい…だけど尻尾と耳があるから獣人族なんだろうけどそれだけだと何の獣人族なのか分からないなぁ。

ここからじゃちゃんとした顔が見えないから分からないが赤い髪が背中までかかっているから恐らくは女性なのだろう。


「それではどちらの炎が打ち勝つのか実物ですが…それは戦えば分かることですのでコレより開始を宣言いたします……開始ッ!」


開始と同時に銅鑼の音が響くと共にトゥランベルが弾け飛ぶ様に地を駆け出し爪を振り下ろす。

それにアルキアンもワンテンポ遅れて気づき腰の剣を抜剣し振り下ろされた爪を受け流すともう片方の爪での攻撃を続けアルキアンは防戦一方となってしまう。


速度で言うとトゥランベルの方が速く身軽に動き時に蹴り技を入れているからかなり戦闘慣れはしている様に見える。

…だが戦闘慣れという面で言えばアルキアンも同じ、否アルキアンの方が上手である。

先程まで防戦一方だったのが段々と反撃を合間合間に入れて行き実践の経験を活かした攻撃を繰り出す。


トゥランベルの手と足や膝には灰色に鈍く光っているからそこに金属を纏っているのだろう。

それに手の先には金属の爪…アレに肉を抉られたら一気に不利になるだろう。

幾ら身体強化を施していたとしてもガリッとやられたら重症になる。


「食らえ…『烈風爪』ッ!」


アルキアンが剣で脚技を大きく避け半歩ほど下がった時だった。

トゥランベルもそれと同時に下がると片方の脚を後ろに…膝を地につけ手をクラウチングスタートをするかの様なフォームにしここまで聞こえる声で叫んだ。


ここからでも鈍く光って見えた金属の爪は赤熱し腕全体が炎を纏う。

その纏った炎は毛の様に纏わりつき風に煽られ火花が宙に舞う。

そして瞬きをしたその時またしても弾け飛ぶ様に前進し爪を振るった。


先程より速く鋭く爪を振るう度に舞い散る火花が視界を隠す。

普通ならばその火花さえも高温で当たる度に痛みが走るほどの攻撃なのだろう。

だがアルキアンは憤怒の大罪で仮にも憤怒の炎を操る者…炎への耐性は常人よりも高いおかげかそんな火花ではダメージも入らないといった感じだ。


だが速度にはどうやってもついていけない様で大きく交わすことが多くなっていく。

そして…アルキアンがまたしても大きく後ろに下がった時だった。

トゥランベルは両手を天へ大きく振りかぶると爪が白く輝きそれを地面へと叩きつける様に振り下ろした。


そのまだ子供とは思えない大きな体躯で振り下ろされた爪の速度は尋常じゃないほどで地面に叩きつける様な速度は地面の土を宙へ舞わせる。

火花は大きく宙へ舞い粉塵爆発を起こしたかのよう。

正に速度と相まって烈風…トゥランベルの周囲には火花が散り白い炎がその場へと残る。


「決まったーッ!赤獅子の族長きっての大技を受け継ぎ極めた『烈風爪』が決まりました!コレにはアルキアン選手も受け止めることは出来なかったご様子…コレは勝負ありかぁぁッ?」

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