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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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足が地につかずじたばたするしかない状況だったからか笑われ私達は食事処へと着くことができた。

子が仲がいいのなら親も仲が良いようで当主様達は酒をグラスで飲みながら笑い合う。


そしてどうやら此処では無礼講の状態のようで私みたいな側付き人でも一緒に食事を取れるとのこと。

…私はいつもみんなと一緒に食事をとっているからこれが普通なんじゃと思ったのだが天然甲冑さんとゲラ甲冑さんがこんな風に一緒になって食べるのは久々と言っていたから今日は無礼講なのだろう。

とはいえ私以外は皆貴族…テーブルマナーがきっちりしてるようで堅っ苦しい食べ方だ。


というか天然甲冑さんもゲラ甲冑さんも騎士爵とかだったのが驚きだ。

一応私もテーブルマナーぐらいは…本とか昔の知識で少しは出来るぐらいだが本物のマナーと比べると出来てないなぁと実感できる。


「レナ、これとこれも美味しいよ!食べてみな」


そう隣に座るアルキアンが私の皿に食べ物を取り分ける。

提供されている食べ物はどれも此処に来てからは見たことが無い野性味溢れるものばかり。

獣人の国の特産品が使われた独自の郷土料理だ。


発酵酒に輪切りにされたビートルートのような野菜。

そして何と言っても丸焼きにされた肉塊。

獣人の国は世界の敵ともいえる魔獣が何故か多く出没する地域でもありこういった肉類が名物とのこと。


周りが談笑をしているが私としては目の前の食事に夢中になり肉汁を噛み締め咀嚼していく。

この国にパンやお米が無いことが残念だがそれ無しにしても美味しい。

煮崩れするまで煮られた肉がここまで美味しいのは何故なのだろうか?


「レナちゃんは本当に美味しそうに食べるわね~…その身体の何処にそんなに入るのかしら?」


「そうだね…本当にアルキアンが言っていた通りの美食家だ」


他二人にもそんなことを言われながらも食べ続け時間が経つ。

暴食のせいで食べても食べてもお腹はいっぱいにならないのがここに来て役立つとは思わなかった。

そして会話的にこのパーティもお開きになろうとした時だった…扉が急に開かれ漆黒の獣毛に覆われたこの国の王様が飛び出してきた。


「おいちびっ子ども今から親善試合を行うぞッ!今すぐ中庭に集まれッ!」


そう言うと部屋を出ていき違う部屋に行ってしまう。

当主様の方を見ると当主様にも聞かされていないようで鳩に豆鉄砲をくらわせたような顔をしていた。


…少年少女達移動中…


そんなこんなでご機嫌を損なわせては後々困ったことになるとのことで渋々言われた通りに中庭へと移動した。

そこでは臣下の獣人族達がせっせと中庭に観客席や何やらを準備しており屋台も出ている。

正にお祭り状態だ…獣人族達はこういった催しが好きなのだろうか?


王城には誰もが入れるようになっているから誰もが手伝い準備をしている。

屋台では私が先程食べた煮崩れしている肉も売っておりそれに釣られ買いに行こうとしたらアルキアンとカルメア嬢に手を引かれ阻止された。


「そろそろ食べるのはお休みにしたらどうだい…流石に食べ過ぎだよ?」


そう言われて抵抗しようとしたら口に飴をカルメア嬢に入れられたのでとりあえず諦めることとした。

ふと思う…なんというか私の自制心が年々衰えているように思えてならない。

身体に精神が引っ張られているのだろうか?


そんな風に考えていると中庭でせっせと作られていた観客席が完成したようで歓声が巻き起こる。

私達は招かれた側の人だからか今日に集まった来賓の席へと座った。

遠く離れた正面にはこの国の重鎮である貴族の獣人族が座っている。

中庭の中心には威風堂々とした様子で獣王が仁王立ちしておりその横では狐の面をつけた奇妙な獣人族の方が立っていた。


「あーあー…よしそれじゃあ毎年恒例の第…何回獣闘技親善大会を行うッ!」


日が暮れ松明の灯りが輝く中銅鑼の音が夜空に響き遠吠えや拍手が観客席から聞こえる。

この暗闇の中で催しを行うのが獣人族の中では普通なのだろうか?

獣王と戦った時だって夜だったし祭りも夜に行っていた…獣人族って意外と夜行性が多いのか?


「それでは獣王様に変わりまして私この国の宰相を務めているカゲミツが親善試合について説明いたします…」


またしても獣王がふんぞり返りながら仁王立ちというポーズを決めたところで横にいた狐の面を被った宰相を名乗った人物が話し始めた。

どうやら親善試合とはその名前の通り人族とこの国の貴族の子息や大人が戦う行事とのこと。

今日は子供の部とのことでアルキアンに聞くと自分も出るから是非見ていて欲しいと念押しされた。


「さて、こんな説明毎年するのも面倒なのでさっさと始めてしまいましょう…細かい説明は親族の方に聞いてみてください」


その言葉で締めて話を終わらせ下がっていってしまった。

上から鳥の獣人族がトーナメント表のような物が書かれた紙をばら撒きそれぞれがそれを拾い目を通す。

初戦を飾るのは名も知らない貴族と名も知らない獣人の戦いだそうで…全く興味がない。


私としては貴族とか興味がないからねしょうがない。

だがアルキアンとしてはこの戦いに興味津々といった感じなので大人しくその横で親善試合を観察することとした。

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