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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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ロンフェールの中へ入り馬車を置く駐屯地へと着く間に中の窓から街並みを見ていた。

どうやらここでは人族そのものが珍しいらしく奇異の目で…いや珍獣でも観察するかのような目で見られていた。

こちら側としては頭や尻から凹凸とした毛の塊が生えている姿の方が珍しいのだがなぁ。


殆どの視線は珍しい物を見るかのような目つきだったが…中にはやはりというべきか敵意を感じる視線もあった。

気配に敏感になってしまった弊害だろうか視線だけでこういうのもわかってしまうようになった。


コレを知った時は「なぬ…コレは殺気」とか厨二的なことを独り言で言ってたが何回もこうも殺気が送られると身体が急に震えたりで大変だ。

いや実際には震えてはないんだが何というか静電気が走ったかのような感覚が走るからコレはコレでキツいものがある。


この国が作られたきっかけというのが噛み砕いて言うと人族の奴隷から逃れて作り出された国だからなぁ。

そりゃ反発や憎らしく思う奴がいたっておかしくないってものだ。

アレもコレも全て聖国とかほざくあの国が悪い…それに未だに侵略行為がされているってのも要因なのだろうな。


そんなこんなしながらも駐屯地へと私達はやってきたわけだが…私の目の前では人が右往左往している所を眺めているだけだ。

とは言っても駐屯地にいたのは一瞬の出来事。

我々貴族とその付き添いであり来賓ですからそれ相応の所へと案内されましたとも。

まぁ当主様は他国から来た貴族との交流へと向かってしまったしアルキアンはその貴族の子との交流をしている。


「貴方の国では〇〇が有名なんですね!」


「いやいやそれを言うならそちらこそ××が有名ではありませんか!」


何というか当たり障りなく話しているって印象が強い。

コレだけ人がいるのだからそんなつまらない話になるのも分からなくはないがもう少し面白い話をして欲しいものだ。

こうやって側付き人をしている奴らに配慮をして欲しいというものだ。


あまりにもつまらなさそうにしていた私を見かねて当主様が特別に側付き人にしてくださったのだが…つまらん。

コレだったらこの国の図書館にでも赴いて書物を読み耽っていたほうが有意義だったかもしれん。


そんなことを考えていると前からアルキアンが歩いてきた。

…その横に何人か見たことのない人物を連れてという言葉が着くが。


「やぁレナ…何というか面白くないっていう顔してるね?そろそろ場所移動するよ?」


そう言いながら私の手を掴み歩き出す。

何というかアルキアンは前よりもスキンシップが増えたというか何かにつけて触ってくることが多くなった気がする。

こうやって歩く時も休憩の時やそばにいる時は何かと手を繋いでくる。


まぁ友達感覚といった感じだろう…私もこの歳だったら友達と手を繋いでいた…はずだ。

知らんけど。

何年前だよって話だからなぁそこまで遡ると覚えとらんなぁ。

コレが老いってやつだな。


アルキアンと手を繋ぎ歩きながらそういえば横に誰かいたなと思いながら首を回しその人物に目を向ける。

そこには水色っぽい何というか銀色に近い色をした髪を持つアルキアンと同じ背丈の男の子と対照的に金色の髪を持つ女の子が私のことをじっと見ていた。


…何というかコレこそが奇異の視線というのだろう。

驚きながら私のことを見ている。

その男の子と女の子の横に付け歩く甲冑を着込んだ付き人を何故か私のことを見ているようだ。


「あ、あのさッ!アルキアン…その子は君の付き人かい?」


「そうですわよ…何と可愛い貴方…もしかしてそういう趣味でしたの?」


「……えッ!?…あ、いやレナはいやそのさ」


何というか驚愕と疑問が含まれたその言葉を投げかけられアルキアンが弁明する。

にしてもそういう趣味…やはり身長が伸びないからか私は幼く見られがちのようだ。

そんな幼い子を側付き人にする…側から見ればそんな奴はやべー方の子供好きか虐待が趣味な奴だと見られるだろうなぁ。


何せ側付き人ってのは所謂濡れたタオルで主人の身体を拭いたり服を着せたり脱がせたりする役だ。

まぁアルキアンは全て自分でやってるから私がやる必要がないんだが一般的にはそういう仕事だ。


その側付き人の仕事で一番辛いのがまぁ頻繁にあるわけでもないし絶対にあるってわけでもないが代理戦ってのがある。

主人の代わりに賭け事や戦争、そして魔物退治までこなしその功績を全て主人に献上する…コレも側付き人の仕事。

いやぁ普通の側付き人ってのは辛いものよ私なら一生やりたくない仕事だね。


とりあえずアルキアンが話す時は大袈裟に手を振りながら表現するので両手でそっとアルキアンのてから逃れるといつの間にか後ろに下がっている銀髪と金髪の奴の側付き人の側へと寄る。

とりあえず仲良くしましょうやという念を込めて頭を下げるとあちらも深々と頭を下げてくれる。


あっちでは更にヒートアップしたようで高速でしゃべっている。

それでも聞き取れる言葉は所々あり中々面白い。

まぁそんな漫才のようなものを眺めながら私は久々に裁縫をやって作ったポケットからビスケットを取り出し口へと運ぶ。

食べていると視線を感じ金髪の方の側付き人さんが私の方を眺めていたので少し違うが同じ側付き人のよしみでビスケットを手渡すと喜んで口に入れる動作をした。


「コンッ」


甲冑にビスケットが当たり音を鳴らす。

金色の側付き人さん…合格だよ。

君のことは今度から天然と呼ぶことにしよう。

そして笑い声を隠せてない銀色の側付き人さん…君は今日からゲラと呼ぼう。

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