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豪華な装飾が施された黄金の船が港に止まると周りにいた魚人族は一斉に走り出してその船のそばへと近寄っていく。
そうして船からは魚面の魚人族が降り天に向かって手に持つ輝く宝玉を掲げると青白い光を放ち周りの海を更に透明にしていく。
「我らが同族よ…今から時代は我らに幕が明けることになるだろうッ！我らが…父にして母である海を統べるのだッ！」
魚面の王女はその青白い宝玉を身長以上の長さがある王笏の先端に取り付けるとそれを魚人族に向けた。
その瞬間青白い光は更に輝きを増していき光を浴びた魚人族の姿がみるみるうちに変わる。
深い青色の鱗しか見えなかったのに光を浴びるとその鱗はそれぞれ赤や緑に変わり肉体はより筋肉質になる。
正に進化したといえるだろう。
確かに今まで見てきた魚人族は結界前と変わって青色の鱗をしたやつしかいなかったが…ふむこうして色んな色をした鱗を持つ魚人が生まれたのか。
魚人族の鱗というのはその者の持つ属性を示すんだったか？
魚人族はそれぞれが水属性のエキスパートであるがそこに鱗の色に対応した生まれた時からの得意な属性であるとされているとのこと。
「我らが同族よ…奮起せよッ！我らは海と共にあるのだから…我らこそが海の意志であるッ！」
未だ船に乗る王女が叫び船底から水が吹き上げてきて船が噴射された水により空へと浮かぶ。
浮かんだ船は建築されたばかりの建物の上に降り立ち周りからは悲鳴に似た歓声が上がる。
「同族よ…人と魔物に奪われし海を取り戻す為…今こそ立ち上がる時なり！」
そう王女がまるで自害しろとでもいうような言葉に更に民衆は盛り上がりを見せ我先にと海へと飛び込んでいく。
それぞれが手にはトライデントを持ち海へ海へと飛び込む。
それは皆が狂人になったかのように…そして場面は変わるその時が来る。
魚人族が飛び込むと海の向こうから白い霧が近づいてくるのが見えるのだ。
場面が進んでいる証拠と言えるのだが…ここシーヒルズを今にも包み込もうとする速度に少し慌ててしまいそうになる。
この物語の行き先というのを私は知らないがこのままこの話が終わるなんてことにはならないだろう。
演説が終わるとまた船は浮かび上がり何処かへと飛んでいく。
あの方向には…確か私が津波に襲われた光の玉が浮かぶ以外何もない岩の孤島がある場所だったか？
あそこにもやはり意味があったのだろうか？
「ん？…なんだ？空が」
そうして船が空を飛び岩の孤島へといったのを見て私もそれについて行こうとし飛翔の魔術を身体に付与した時だった。
太陽が沈もうとし星が顔を見せたその時だった…光が満ち声が聞こえてきた。
それは男とも女とも言えない声で何処から聞こえているのかも分からない声。
それは怒っているようで落ち着いているようにも聞こえる。
奇妙でいて複数の声が重なっているようで金属音であって…頭がぐちゃぐちゃになるようなそんな声。
『…誰だ？️$°#☆+〆の秘術を無断で使用する者は？代償すら払わぬ愚か者は何処にいる？』
宇宙に切れ目が入りひびが入り破れる。
隙間から蛸のような吸盤のついた軟体の腕が顔を出す。
腕だけで異様かつ異常な威圧を感じ周りにいた王女の演説で今にも人を殺しそうな勢いを見せていた魚人族もコレには恐れ慄き膝を地につける。
『ふむ…異様な存在がこの$°#☆+〆を呼び寄せたか…ならば貴様らの王女から代償をもらわなければな』
その言葉に魚人族達はざわつきを見せる。
恐らくこいつがこの物語中の…なんだったか海上国家の神にして英雄のクトゥルゥだったか？
クトゥルゥは確か宙から降りてきたとか王女をもらうため海より這い出てきたとか…実は人族だったとか歴史書には書かれていたがこの物語だと空間を切り裂いて出てきたとでも表現しているのだろうかな？
どの歴史書でも最終的に王女と共に居なくなったと書かれていたからこの先の展開はおそらく王女を連れ去るって感じで物語は終了するはずだ。
…なら私がやることなくないか？
別にこのままにしておけば物語は自然と終わる筈だし…。
「クトゥルゥだ…アイツがクトゥルゥだッ！クトゥルゥを殺せッ！我らが王女の為にッ！」
そんな言葉が聞こえてくる…そんな言葉を発したのは体格の良い魚人族だ。
アイツは…もしかして物語に巻き込まれたやつか？
なんで神と崇拝しているクトゥルゥを殺そうとしているのか分からないが…なんかやばいことになりそうってのは感じる。
そんなクトゥルゥを殺せコールに周りもそれに合わせて声を発し出してトライデントを手に持つ。
そうして魔法を放ちクトゥルゥに攻撃するがその攻撃は届かない…何故なら同族の魚人族がその攻撃を防ぐからだ。
一方はクトゥルゥに恨みがあるように攻撃をしもう一方はまるで何かに操られているように身体を動かしその攻撃を身をもって防ぐ。
『ふむ…$°#☆+〆の意に従わない者がいるとはな珍しいこともあるものだ。だが貴様らには興味がないそろそろ$°#☆+〆の秘術を使った者の元へ行くとしよう』
そうクトゥルゥが呟くとパリパリと空間に異常な音を響かせ王女が行った岩の孤島の方へと空間を破りながら移動していく。
