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鼻歌をしながら船を動かす…あれから数日が経った。
魚人族側は天敵である人族である私を見つけたから警戒状態だと思った為少し機会を伺って移動している。
正直こんな慎重に行かなくてもいいんじゃないかなと思うのだが…まぁ念には念をといった感じだ。
「にしても暇…っとアレだな」
そうこうしながら船で移動していくとシーヒルズが見えてきた。
発展が早いようでもう住宅街のような建物が見える。
後は…思い出す限りだと象徴となっていた教会が出来れば完全にシーヒルズとなるだろう。
いや、この場合は王城が出来上がるっていった方がいいのかな?
兎にも角にも行ってみるしかない。
私はこの先の物語を知らない…あぁアルキアンとかならこういう時博識だから良いアドバイスとかくれるんだろうけど。
にしても巻き込まれたんだったらここの何処かにはいるんだよな…どこに行ったんだろう?
そう思いながら私は船着場に着くことができた。
特に検問とかは無い何せ普通の船着場だしな簡単に侵入することができた…警戒もされていないところを見ると私の見た目も完全に魚人族だと思われているのだろう。
「じゃあ…この物語を終わらせる為行動するとしよう」
そう言いながら上空に魔法陣を描く。
…私が今からやろうとしていることはこの街に対する実験だ。
もし外部との干渉を絶たれたらこの街にいる登場人物はどうなってしまうのだろう?
まるで私がサスペンスとかSFの悪役のようだが…まぁ仕方がないことだ精々ここの登場人物にもなれないモブの魚人族には犠牲になってもらうとしよう。
どうせ最悪の場合犠牲になったところでこの結界の魔力によってまた復活を遂げることとなるだろう。
「だからこそ…私は私の全ての力を用いてこの結界を解き明かそう」
魔法陣に魔力が流れ光を帯びる。
コレから行われるのは無慈悲な惨劇…私は私の為行動するとしよう。
何十何百との人が死のうとも私には関係ないことだ。
そう私は私に言い聞かせてありもしない罪悪感を断つ。
魔法陣が空を覆い街全体を包囲する。
結界から切り離す為簡易的な結界を張り一部分の上書きを行う。
「「「「「「ざわざわ…ざわざわ」」」」」」
私の結界にようやく魚人族も気づいたようで周りでは今まで動いていなかったや機械のような繰り返しの行動しかしていなかった者たちが自分の意思を取り返したかのように騒ぎ出す。
まるでここから逃げるかのように私の張った結界を叩き逃れようとする。
「王女がいない時になんでこんなことに…!しかも結界を遮る結界だと!?」
「あの侵入者がここにいるのか!?何処に…この物語を邪魔するのは何処の何奴だ?」
「あぁぁぁぁぁぁぁ」
「物語…物語を進めないと」
「早く壊せッ!」
そんな呪怨がこもったような耳に響くような会話が聞こえてくる。
…こいつらはこの物語を進める結界の主人の下僕だというのだろうか?
結界ができたことで物語を進めることが不可能となることで本性を表したようだな。
「ん…あれここは何処?…おとーさん、おかーさん何処に行ったの?」
「えぇーん…ここ何処なの?暗い…暗いよぉ」
「あひゃひゃひゃひゃ…あぁ神様神様万歳万歳」
「ふむ…ここは何処じゃったかの?」
それとは逆に子供や年寄りの声も聞こえてくるが…コレはこの物語の結界に巻き込まれた者達の声だろうか?
その全てが何もないところから聞こえてくるところを見ると…どうなってんだ?
だがこの結界があることで物語が進まないようにはなったってことはわかった。
となるとだ…この結界内では物語の結界が意味をなさないということはわかったわけだしこの中で主人公を殺せば物語に致命傷を与えることができるんじゃないか?
幸いこの結界の発動者が誰というのは知られていない…となれば私がやるべきことは重要な場面で結界を張るってことだろう。
「じゃあこの結界はもういらないか」
そう呟きながら私は結界を解除する。
結界を解除した瞬間何処からともなくまた『パプー』という音が響き渡り呪怨のような声もざわつきが無くなる。
「結界がなくなったからコレで大丈夫」
「王女が帰ってきたしあの結界もなくなったから物語は進むな」
「あの結界も物語の一部だったっけ…?」
そんな言葉が響いてついには聞こえなくなった。
話している内容的には結界を張った奴でなさそうだが…となると結界を張った奴の協力者っていう線もあるか。
コレでわかったことはどうやらここにいる魚人族とかは巻き込まれた奴らの意思とか…最悪魂とかが巻き込まれている。
となれば簡単にここにいる奴らを犠牲にもできない。
「はぁ……どうせなら何の意思もない人形のような奴らだったら」
元々善人だろうと悪人だろうと無慈悲…とは言えないが殺すことが私はできるだろうけど。
何というかそこの線引きしたところを超えてしまったら何というかな…まるで殺人鬼と変わらないというか。
「どれだけ楽だったか」
海の向こうから豪華な黄金を纏った船が近づいてくる。
船が通った後には透き通った水色の海となりそれは未来この国の象徴になるだろうと誰もが錯覚するそんな船だ。
王女が乗り海を導く…この国の秘宝を乗せ王女がこの国へと帰還してきたことを知らす汽笛が海に『パプー』と鳴らしてやってきた。




