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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と大罪を背負う英雄
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…アルキアン side…


視界が真っ暗に染まり次の瞬間眩い光が走り反射的に目を閉じてしまう。

ガラガラガラと何かが回る音や周りから「パプー」という汽笛のような音や「ブー」という音が聞こえる。

そうして数分の眩い光が生じた後に瞼の裏からでも柔らかな光になったところで僕はようやく自分の目を開くことができた。


「こ、ここは…?」


目を開くと眼前に広がっていたのは漁村…だろうか?

周りには魚を釣っていたりその釣った魚を持つ村人で溢れていた。

そういえば教皇達はどうなったのだろうと周りを見渡すと見知った顔を見かけることができた。


「マルコフ子爵ッ!無事だったのですね!」


マルコフ子爵はうちの領土より少し離れた場所に位置し僕の家と少なからず関係を持っている。

派閥こそ違うがこの状況なら協力関係を結べるのではないか…と思い言葉にしながら近づく。


だが僕が聞こえるほどの声で話しかけるも何故か僕を一瞥した後隣の人と話しながらそこから離れていく。

無視された…のだろうか?

僕の言葉に反応こそしていたが一回僕のことを見てそのまま行ってしまった。


「…無視か…いや似た人だったのかもな」


確かにマルコフ子爵の服装が貴族服ではなく庶民風の服だった。

マルコフ子爵は新王派でありヒエラルキーを重視する人物だから庶民風の服は死んでも着ないと豪語しているほどだ。

そんな向上心の塊とも言える人があぁやって目下の人と笑いながら歩くなんてありえない…か。


「それにしてもここは…見た感じ漁村だが僕がいたのはシーヒルズだったよな?」


空気や光それに建物も何か違和感がある。

それに周りで歩いている一部の人にも何か違和感を感じる…そういやマルコフ子爵似のあの人には違和感を感じなかったな。


とりあえずここらを歩き回ることとした。

歩いていて分かったことはここに居る人々は僕のことを見ていない。

いや一応見えてはいるらしいが言葉をかけても無視される…全員にだ。

コレには普段無視されない僕には結構くるものがあった。


今の所僕みたいに周りから無視される人は見てない。

にしてもこの漁村には僕の知り合いに似た人が多数いるようだ。

先日見かけた男爵位を持つゴツいメイド姿の男性や煌びやかな装飾が施された鎧を着ている騎士や港で船を護衛していた特徴的な武器を持つ傭兵達だって見かけた。


そのどれも顔が特徴的だったから覚えていたが…ここにはそっくりな人が多い。

というよりかは多分…巻き込まれた人が演じているというのが正しいと見た。


「嫉妬の権能…ねぇ」


大罪…それは人が持てば希望に魔物が持てば絶望に変わる大いなる力の塊。

僕が持つ『憤怒』にレナの持つ『暴食』…それにゴーント=デトラトが持っていた『嫉妬』そのほかにも『傲慢』『強欲』『色欲』『怠惰』とある。

悪人に持たせてもこうやって絶望の力となる…力ってのは難しいものだね。


おそらく僕がこうやって免れたのは『憤怒』の力を持っていたからだろうか。

実際どうなのかは分からないが…『嫉妬』の能力は確か文献によると黒を白に物理的に変えたとか言われてる不可思議な能力だったはず。

その力を使ってゴーント司教は信仰されている神を殺し殺されたシーヒルズの初代女王が生きていたというのに書き換えようとしているのか。


「そうなったら…色んな未来が変わるな」


神が存在するからという理由で侵攻されシーヒルズの戦力を大きく損なった第五次聖戦というアレとの戦争もなかっただろうし。

戦力を大きく損なったからこそ生まれたイードラ王国との国交や協定も結ぶ理由がないからなくなるだろう。


シーヒルズがあったからこそ生まれた物も全てなくなる…過去が変わったらそれに倣って全てが変わっていく。

もしかしたら僕も存在ごとなくなるかもしれない。


「過去を変えられる能力か…阻止しないと大変なことになってしまうな」


そうやっていくあてもなく歩いていると見知った顔を見かけた。

全身異常に分厚い鱗で覆われ腕は4本、筋肉隆々の身体付きで顔は目が6つ付いており口からは触手が見え隠れする…『海底教皇』がそこにはいた。


「『海底教皇』オトゥルム=ヴェーダ・シーパ様…」


ついその言葉が出るとそのゴツい身体はぐりんとこちらへと向き目がキラリと光った後ズンズンと一歩ごとに小さな地震が起こる音を立てながら彼の方はこちらへと向かってくる。

こういってはなんだが…それは魔物のような脅威すら感じる一歩である。


「おぉーッ!コレはコレはアルキアン・アマガル・フォン・レインバード伯爵子息殿…やはり吾の予想通り貴公は司教の術にはかからなかったか」

「これは…『海底教皇』様…無事だったのですね」


そう僕が言うと教皇様はその身体でポージングしながら「効くはずがない」と表してくる。

そうして社交会話をある程度した後本格的な話に取り掛かることとした。


「さて、アルキアン殿…貴公は『海神物語』というのを知っているかな?ここはどうやらその物語の中のようでね」


『海神物語』…それはこの国に伝わる古い文献。

内容を掻い摘むと人から追い出された魚人が国を作り出し空から海の神が現れその神を信奉し荒れ狂う海に平和を齎すという神話のような物語だ。

多くの人がこの物語を絵本という形で知っており神と魚が恋に堕ちるという身分差の物語として貴族淑女から庶民の少女まで人気のある物語だ。


「彼の権能は…多くの人が知る常識や感情のこもった物の媒体に潜りその常識を思い通りに舞台設定を書き換える。…まぁ周りにこうやって格上の存在がいればその書き換えの最中を邪魔できるらしいがな」


そう言うとその口の見えない顔が笑う。


「となれば…どうだアルキアン殿?司教が書き換えている物語に少しばかりの邪魔を施してみないか?現実を守るため手を合わせようではないか」

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