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『飛翔』によって海を飛んでいくこと数分遠くの方に一つの岩場を見つけ私はそこへ降りることとした。
先ほどより遠くにきたためトライデントの能力が及んでいない…ここからだったら落ち着いて移動ができるってものだ。
「…ところであの魚人族達はどこへ行ったんだ?」
適当に移動してきたが今のところ姿も影も見えない。
ここが異常な空間であるということは分かっている…こういう結界の幻術を発生させているやつをぶっ飛ばせば良いと思ったから主人公になりきっているあの魚人族さえどうにかすれば元に戻るんじゃないか?
「いや…それだったら海に巻き込まれるアレを追うべきだったか」
まぁ…そんなことはどうでも良い。
私は今まで飛んできた方向を向く。
確かあの魚人族が去った時に音と共に白い霧が向かってきた。
何となくやばいやつだと思って逃げてきたわけだが…ここまで迫ってきてないのを見るに
この近くに魚人族がいるのは確定だろう。
「にしても主人公みたくねぇ…なんかしっくりくるしここは何かモチーフにして作られた舞台なのか?」
だとすると尚更あの魚人族はこの結界の発動者に違いない。
いきなり出会って魔術発射ってのも何か違うし事情を調べる?…いやいや私には出来そうに無い。
というか本当にこの空間には生きてるのは私しかいないのだろうか?
この結界が作られた場所はシーヒルズだ。
巻き込まれたのは数百を超える魚人族の民衆だっているはず…その中にはあのアルキアンもいるはずだ。
「それだったらまずは合流が先なのかな?」
事情も知らず介入するってのもアレだしここがどういう経緯で作られたのかもわからないもんな。
とりあえず方針はアルキアンを見つけることから始めよう。
そんなことを思っていると遠くから「パプー…パプー」という甲高い音が聞こえてくる。
この舞台のシーンチェンジが起こったということなのだろう…主人公が離れれば当然そこの空間も要らなくなるし。
「魔力的にはまだまだ飛べそうだが…出来れば近いたところにコレみたいな岩場があると良いなぁ」
私は呟きながら後ろから迫ってくる白い霧を背にして地を蹴り海を滑る。
…こんなことなら虚空庫に組み立てられる船の一台でも載せるべきだったと後悔をしながら。
…少女飛翔中…
海を滑りながら途中で岩場を見つけては休みを繰り返し私がとある岩場に腰掛け次の移動はいつになるのかと思い悩んでいた。
そんな時少し遠くに見える一つの大陸のような孤島が見え「次はあそこに飛ぶかなぁ」とか考えていると…海を高速で泳いでくる存在が見えた。
ここまで来るのに結界の中だからか魔物には遭遇していない…だからこそその存在に目を惹く。
私は口に含んでいた魚の肉塊を飲み込むと手をその存在の方向へと向け魔法陣を展開する。
結界内で近づいてくる存在…仲間かそれとも敵か?
どう考えてもこの舞台で人族は敵に見られるってのは分かっている。
ここは大人しくメタモルフォーゼをすべきなのだろうが多分私の存在がここにいると分かって移動しているのを見る限り人族であるというのは知っているはずだ。
そうして魔法陣を私の前に展開し終わるとこちらへと近づいてくる存在はその移動を止める。
その存在は顔にびっしりと鱗が生えているが人族のように金色の髪が生えている…何と言って良いか目がデメキンのように飛び出ているから生理的に受け付けない見た目をしていた。
「ギョエーッ!ギョエーッ!ーーーーッ!」
そんな風貌に驚いていると突然その魚人族は奇妙な声を出し最後に声にならない甲高い音を響かせる。
その時思った…そういえばエコーロケーションってのは超高音の人の耳には聞こえないぐらいの超音波からくるものだと。
んじゃコイツが出している高音の声は何だ?
ただの奇声…には思えない。
だとすると増援を呼ぶ声に違いない…ここが人族から追い出され行き着いた地だとすると人の言語から魚人族特有の言語であるエコーロケーションに成り代わっている最中と理解できる。
「チッ…魔法陣展開『魔星砲』発射ァ!」
あらかじめ設置してある魔法陣は光を増しその中心から魔力の塊が大砲のようにして発射される。
そうしてそのギョロ目の魚人族に当たるギリギリで魚人族は海を走るようにその場から高速で移動し始める。
あんなギョロ目でもやはり海を支配する魚人族…海の中がホームグラウンドの彼らは海の中では一人一人が一騎当千の実力を持つようになる。
傭兵に海賊をするような奴らだ…海の中での実力はヤバいほど耳にする。
水と共にある魚人族はその全員が水の魔法に特化しており海を操る種族とまで言われている…。
「ギョエーッ!ーーーッ!」
未だ私が放つ『魔星砲』を避けながら増援を呼ぶ魚人族。
そんな奴らがここに集結したらどうなる…まぁ一網打尽だわな。
今はまだこうして逃げているだけだが海の水を操るように水の弾丸を撃つことだって可能なはずだ。
「となれば…逃げに徹するか魔法陣展開…」
アイツは声を出し私を警戒するために水面より上にいるそれだったら…魔法陣のシンボルは雷。
魔力の粒である魔素が空へと集まり形を成す。
発動すると共に逃げるとしよう。
この足場から離れるとあっちの大陸に行けなくなるのがすこーし気に食わないが…。
「感電しちまえ…落ちろッ『サンダーレイン』!」
その声と共に空に一つの大きな魔法陣が形成され輝つ。
黒い雲がその魔法陣から生成されると次の瞬間それは閃光を放ち下に轟音と共に降り注ぐ。
魚人は慌てて水の中に身を潜めようとするが…私から視線を外した。
私は高速で魔法陣をもう一つ作り出し自分に付与するとその場から飛び去った。




