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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と大罪を背負う英雄
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屋根から屋根へと飛び移りながら移動して騒ぎがあるところの近くに来ることができた。

近くといっても屋根の上なんだが…話をしてる奴らがかなーり大きな声で喋っているからここからでも聞こえる…んだが一斉に喋っているせいで内容が聞き取りづらい。


「まぁ私は聖徳太子でも無いしなぁ…とりあえず耳を傾けておこう」


ここから見えるのは魚人族とそれに対立した位置にいる人族の集団。

魚人族はその頭が完全に魚でシーヒルズでは確か海底街に住む奴らだったはず。

その魚人族の奥には色鮮やかな衣を纏って腹を大きくした魚面の女?と目が虚な見た目が見る人が見れば王子様と呼称できるような短髪の少年。


対して人族の集団はその全てとはいかないが手には銛を持っておりその人族の先頭にその目が虚な少年の父親だろうか…多分髪の色も同じだし合ってるだろう。

まぁその父親は手に水色の見るからにアーティファクトの類であろうトライデントを持ち激昂した態度が見られた。


「魚人に人に…漁村?…何処かでそんなのを見た気がするな?」


はて…どこでそんな特徴があるのを見たんだったか?

あの孤島にそんな模様もあったように思えるがそれ以外にも見た気がする。


そんなことを思っているとついに堪忍袋の緒が切れたような態度を取りながら暫定少年の父親がトライデントを構えると一瞬にして海が荒れ狂い水面に大きな渦が巻き起こり不規則な高波が押し寄せる。

その構えた状況に集まっていた魚面の魚人族は奥にいる腹を大きくした魚人を守るように立ち塞がる。


その魚人族の行動に更に激昂の様子を見せる父親はトライデント魚人族に向かって放つように閃光の速度に届くが如く突き出す。

その瞬間だった…突き出したトライデントの3本の刃は水を纏い突き出されると共に3本の刃の水は蠢き地上であるのにも関わらず高波を作り出して魚人族を押し流す。


戦場に出れば一騎当千の力になりうるそんな力が顕現したことによって騒いでいた双方に静寂が訪れる。

そして父親はそのトライデントを次は腰を縮め力を貯めるようにして構え出すと魚人族の左右に高波が作り出されいつでも押し寄せることができると言わんばかりにその場で静止。


正に海神の権能を操るようなその姿に誰も彼もが畏怖を顔に表す。

だがその威圧を放たれる魚人族の奥にいる腹を大きくした魚人族は恍惚とした表情を浮かべながらその隣にいる目が虚な少年の腕を組み夢心地といった風に父親には目もくれない。


「魚面…あが子を返してもうかッ!ならぬなら海と共に捨てれ…ッ!」


その言葉にようやく腹を大きくした魚人は父親の方を見る…そしてその腹を撫でつつ言葉を発する。


「あらぁ?義父様ぁ…もーかして私達のことをお祝いにいらして?」


「このぉ魚面がぁ!海よ…大いなる生命の根源よ…あが子の為荒れ狂えッ!」


腹を大きくした魚人が全くの的外れな言葉を発すると父親はその手に持つトライデントを振り回して波を指揮する。

左右にあった高波は大きく脈動すると共に生物のように動き出し魚人族のみを飲み込み海へと連れ出した。

そしてその魚人族を飲み込んだ波は形を段々と変形させ全体像を最終的には蛇のようにして荒れ狂う。


…だがそれでも海に飲み込まれながらも腹を大きくした魚人族は嗤い言葉を発する。


「あぁなんてこと…義父様が私と王子様を引き離すなんて…でもいつか絶対に迎えに行きますね待っててくださいこの試練を乗り越えてみますからッ!」


そんな言葉と共に海に沈んでいく。

まるで自分が悲劇のヒロインのように…自分が夢物語の主人公であると誇示するように最後に大言壮語を並べて散っていく。

残されたのはトライデントを持ちながら未だ目を虚にしながら何かを探す少年を見る父親の姿のみだった。


「いっそ…楽になれあが子よ」


そう小さな声だったが言葉が風に乗り聞こえてくる。

父親は諦めた顔で手に持つトライデントを少年の頭に置き…貫いた。


「…………」


何とも言えない時間が続き…そして気づく。

いつまで経ってもトライデントを抜かない父親に数分経っても黙祷を続ける村人達。

草木も風で揺れずただ海の波だけが動く。

村の全ての時間が止まったのだ…役目が終わったように動かない。


「やはりこの空間は異常だな…」


結界が貼ってあったからこそわかることだがやはりこの空間は誰かによって操作されている。

幻覚か…いやそれだったらこんな屋根を登る時の感覚がするはずがない。

どうやってこんな結界を作り出したのか気になるところだがそろそろ行動しないと不味そうだ。


「パプー…パプー」


そんな音が遠くから聞こえてくる。

何処かで聞いたことがあるような音に何故だか危機感を感じ聞こえてきた方を見ると白い霧ようなのがゆっくりと街に向かってくるのが見えた。

あれは普通の霧ではない…それだけが分かる。


とりあえず私は屋根から降り少年とその父親の方へと近づいた。

軽く父親の方を叩いてみるが何も反応を示さない。

となると…彼の持っているトライデントそれも持っていけるのでは?


「いっせーので…ふんッ!」


勢いをつけてその手を動かそうとするが…びくともしない。

それどころかトライデントに触った所がぼろぼろと砂になっていく。


「とりあえず持っていけない…か」


となると次にやることはここからの脱出だ。

船…はこの荒れ狂う波の中動かすことは叶わないどころか海の上に浮かべたら真っ先にひっくり返ることだろう。


私は魔法陣を展開し『飛翔』を発動すると海に向けて飛び出した。

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