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次の日の朝私とアルキアンは準備を終えこの国の西に位置する港へと足を運んでいた。
何でも昨日で教皇との対談は終わったのことで今日は実際に原因と思われる場所へ赴き調査を行うとのこと。
因みにだが港には数名の貴族が今か今かと船の方を見ているがどうやらこの国の塩の紙のことを知りこの国に来た有識を持つ者らしい。
だが、その全員がいい者ばかりではなく中には貴族の間で国家転覆を企てるだろうと推測されている噂の種となっている人やイードラ王国の公爵閣下がいたりと様々だ。
何処かの派閥にも属していない中立という立ち位置のアマガル家からしたらこの集まりで唯一はぶられた存在とのこと。
そう思えば貴族は二つの集団に分かれている様にも見える。
確か…親王派だったか?
決闘でも王様を神格化していた派閥だったと記憶しているが…んでもう一つの派閥は革命派とか言ったっけか。
革命派は自国の守護神は風の属性神イードラのみとし今の王に否定的…前王の王弟が派閥のトップでその王弟を王にしようとしているんだったか?
まぁ私には革命が起こったところでどうとも思わないが…まぁせめて国が残ってくれればどうでもいいかな。
後は民間の派閥もあった気がするが忘れたな。
そんなこんなで船が到着する。
教皇からそれぞれの派閥ごとに船が貸し出されたのだが…親王派の船は黄金の装飾が施された豪華な客船で革命派の船は赤色を基調とした装飾がされている目立つ海賊船って感じの船である。
対して我々中立派の船はというと普通の船である…うんTHE普通って感じ。
でもコレで良かったのかもしれない。
何せ海には海突牛というナメクジの様なあのウミウシではなくジュゴンなどの人魚のモデルとなった動物でもない正に海に生きる牛がいるのだから。
住んでいる水域は判明していないが海で血を見ると他の魚を突き飛ばして海の中を駆けてくる非常に危険な魔物だと記憶している。
だから…まぁ革命派はこの時点でご愁傷様というわけだな。
「レナ…僕たちの船に乗ろう?」
手を合わせて「南無ー」っと拝んでいるとアルキアンからそんな言葉をかけられ自分達を鼓舞している革命派を一瞥した後乗り込むこととした。
私たちの船は他のと比べて小型だし頼りない様に見える…まぁあちらと比べてだいぶマシなことには変わりない。
パプ~といった音が響き私たちの船は出発する。
何でもこの船には音を出すような機関は取り付けていないがこの国では船が発進するときは必ずといっていいほど何処からともなくこの気の抜けるような音が響くそうだ。
それはもう何世代前の船乗りがいた頃と同じようで魚人族の中で一番長生きしている爺が子供の頃もこの音は鳴っていたそうだ。
青緑とも表現される色を持つ透き通るように綺麗な海原に少しの白い泡が立って船は進む。
下を向けば海底すらはっきりと目視でき海底街に住んでいる魚人達の風景を見ることができる。
目標は海底街の深奥の海底神殿とのことだがその海底神殿は海上国家からかなり北の方にあるようだ。
何でも街の大きさで言えば海底街の方が大きく教会の下に神殿を建てると上にある教会が崩れてしまうとのことで海底街の奥の方に設けられたとのこと。
ここらの海域は北に行くほど水深は深くなる。
だからこそ神殿は深海の神殿と呼ばれているのだろう。
北に進み水深が深くなるごとに透き通る海は濁り青緑の美しい海は凛々しいとも表現できる瑠璃色に染まる。
やはりここでも気配察知がエコーロケーションによってぶれてしまうためあんまり機能こそしないがそれでもここら辺にはナニカがいるってことだけは分かる。
魚人達もその気配を察してか日々の生活への感謝を口々に放ちまともに機能している魚人族はこの船からいなくなってしまった。
誰も彼もが先ほどまで真面目に船の舵を取っていたはずなのに今じゃその仕事を放棄して祈りを捧げる信者と化している。
「どうやら船で来れるのはここまでらしいね…レナ、コレを」
私が戸惑っているとアルキアンから声をかけられマスクのようなものを手渡される。
コレは…めちゃくちゃ高価な呼吸装置とか冒険者の中で買うやつは馬鹿だとか言われていた魔道具?
あぁ忘れてた…確かに海ではコレ有効だよな。
冒険者の中でも馬鹿にされていた魔道具だったからすっかり忘れていたよ。
私はアルキアンに「ありがとう」と言いつつ仮面を外し口にマスクをつける。
仮面が使えなくなってしまう欠点はあるものの…メタモルフォーゼするよりかはいいかと思う。
正直言ってメタモルフォーゼをした姿なんて人外そのものだからね…他人に見られたくないねそれも知人になんて。
マスクを口につけ魔道具の横についてあるスイッチらしき物を起動すると口の周りに風が吹いているかのような感じがしてくる。
コレは実際に風がこのマスクから出ている…原理としてはイードラ王国の鉱山で産出された風属性の魔石を使ってるんだったか。
一定の大きさに高品質じゃないとまともに機能すらしないとされるから収入が安定しなくて陸地の方が依頼が多い冒険者からするとこの魔道具は…まぁゴミだわな。
「さてそれじゃあ行くよ?」
そう言いながらアルキアンは海に飛び込んだ。
…いや待てそういえばこの世界に水着なんてなかったな。
え、まじで服着たまま海に飛び込むの?
そう戸惑っている間にもアルキアンの姿は海の中に消えていく…とりあえず私はローブと仮面とナイフを虚空庫に押し込んで躊躇しながらもアルキアンを見習って海へと飛び込んだ。




