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孤児のTS転生  作者: シキ
スラムの孤児
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「ようやく仕事が終わった…」


そう呟いた。

今の時間は、深夜の0時。

俺は残業という名の地獄の所業を終え一息ついた。

外は暗くなり車の数も少なくなりつつある。


あと数時間もすれば日が上り明るくなるその前に家に帰り飯を食って布団につきたいものだ。


そんなふうに考えていた。


俺は重くなった腰を上げ会社から出た。

街灯は明るくなっており家の電気は消えており静かな雰囲気をしている。

ふと昔のことを思い出した。

こんな暗くまで仕事はせず定時には上がり家で自由にラノベや飯を食っていた頃を思い出した。

今では年齢が重なるにつれて会社での役割を与えられて仕事量も増え自由な時間も無くなり自由に食っていた飯は今では胃もたれをするほどになっている。

年齢を重ねるというのは怖い物だ。

いつも帰っているこの道も日に日に長くなっているように感じられる。


『ガンッ』


物音がしたような気がしてふと前を見る。

どうやら電柱の所に誰かいるようだ。

身長は…190cmぐらいの長身の男性だろうか?

目も悪くなっているのでよく顔が見えないが右手に『何か』を持っていると言うのはわかる。


そしてその男性がくるりと俺の顔を見た。

その顔は酷く歪んだ笑顔を見せていた。

何故か分からないが逃げたくなるような顔だ。


長身の男が俺の方へと走ってくる。

酷く歪んだ笑顔で「アハハハハハハ」と言いながら全速力で走ってくる。


俺は咄嗟に嫌な予感がして横へ転がった。


長身の男は右手に持った『何か』を突き刺すように前へ振りかざした。

危機一髪だった。

もし俺が横へ転がっていなかったら当たる所だった。

俺はその男に向かって「危ないだろう!」と言おうとしたがその言葉は喉につっかかったまま出なくなった。

理由は俺が見たその光景だ。


街灯に男の持った『何か』がようやくその姿を見せた。

それは鋭利な形をした『包丁』だった。


俺はそれを見て必死に逃げようとした。

立ち上がり全速力で逃げようと足を前に出す。


…しかしやはり年齢には勝てないようだ。


足に力を入れ足を前に出した瞬間、バランスを崩しその場に倒れる。

長身の男はこちらへとゆっくり近づいてきて『ナイフ』を上へと振り上げる。


助けを呼ぼうとするが恐怖で声が出ない。


そんな俺を嘲笑うかのように笑いながら右手に持った『ナイフ』を俺の心臓へと突き刺した。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


そんな二つの感情が俺を支配する。

長身の男はそんな俺を構わず突き刺す。

その度赤い血が宙へと舞う。


今までやってきた記憶が頭の中に浮かび消えていく。

これが走馬灯という物だろうか?

もうこんな痛い思いや怖い思いはしたくない。


そう思い息を止め出来るだけ早く死ねるよう願った。


何時間?いや何分経っただろうか?

あの長身の通り魔はどこかに行ったようだ。

身体が冷たくなるような感覚はあるが死にたいのになかなか死なない。

大量出血で死ねるかと思ったが意識だけが残っている。


…今は何時だろうか?

もう痛いという感覚も無くなった。

朝日も段々と出てきて明るくなっていく。


ようやくか。


ようやく視界が暗くなっていく感覚に襲われる。

待ち望んでいた『死』がそこまできている事を知り嬉しくなった。

もう俺は生きていく希望は無い。

思い出されるこの記憶も、もういらなくなると思うと少し寂しいが俺はこれで良いと思う。

どうせ意味のなくなる記憶だ。

持っていても意味はないだろう。


だが…

もしも来世というものがあって人間として生きていけるんだったら…

この記憶と俺という自我を有効活用したいものだ。

なんてな


そんな事ラノベじゃないんだしあるわけないか。


もう視界には何も映らない。

俺はもう疲れた。

仕事帰りなのだからもう寝る時間だろう。


そう思い俺は寝る様に意識を失った。


こうして晩年40歳という他の人からしたら短い人生を終えた。


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