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7話 炎の精霊イフリート

「まずはどこに行くんだ?」

「そうねぇ、ここからだと一番近いのは王都ガンガルディアかしら」


「それじゃ、そこに行こう」

「分かりました」


「でも、その前に」

「え?」

「お腹が空いたわ」

「おいおい、今はそれどころじゃないだろ」

「だってぇ~」

「はぁ、しょうがないな」


俺は馬車を止めて、近くの店でサンドイッチを買ってきた。金は少しだけダイナから貰ったからな。


「ほらよ!」

「ありがと、ハイネ!」


アリルはサンドイッチを受け取った。


「マナ、お前の分だ」

「ハイネさん、私は大丈夫です」

「食っとけ、長旅になるかもしれないんだから」

「マナがいらないなら私が貰うわよ?」

「え?あ、いえ……食べます、頂きます!!」


「慌てるなって」

「いただきます!」

「ゆっくり食えよー」

「美味しいですね」

「だろ?こっちのハムサンドなんて絶品だぜ」

「ほんと、このパンとハムの相性が最高ね」


俺たちはサンドイッチを食べながら馬車の中で今後の事を話していた。


しかし、俺はこの先の事が不安でしょうがなかった。

この先、無事に生き抜く事ができるのか? そして、いつまで生きていられるのか…… そんな事を考えてしまう。


本当に俺は生きている価値があるのか? そんな事を思ってしまう。

いや、考えるだけ無駄か……俺は諦めていた。

普通に生きる事に……


次の日俺が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。

周りを見渡すと、そこにはアリルとマナの姿があった。

そういえば、王都ガンガルディアの近くにある小さな宿屋に昨日泊まったんだった。


体を起こしてみると、まだ少し体が痛む。

俺はベッドから起き上がり、服を着替えた。


すると、扉をノックする音が聞こえた。

俺は扉を開けると、目の前には一人の女がいた。


膝あたりまで伸びた燃えるような赤髪で、かなり美人の部類に入るだろう。

見た目はアリルよりも結構年上に見える。

身長は俺と変わらないくらい高い。

しかし、俺は見覚えのない顔だ。


俺はそいつに話しかける。

すると、そいつはこう言った。


「問おう。お前がハイネか?」


「……誰だ?」

「私はレイラ!アルベイン騎士団の一員だ」


「何ですって?」

「もう来たんですかぁ!?」


アリルとマナ後ろで声を上げた。

赤髪の女の名前はレイラ。

アルベイン騎士団の人間らしい。

はぁ、もうガンガルディアまで追ってきやがったのか。


「……それで、なんの用だ?」

「お前に決闘を申し込む!」

「は?」


いきなり何を言い出すんだ、こいつは。


「ちょっと待て、いきなり何言ってんだ?」

「お前はアルベイン様を侮辱した。だから、私が直々に成敗してやるのだ!」

「え、ちょ、待てよ!」

「問答無用!」

「ぐっ!」


俺はいきなり殴りかかってきたそいつの拳をなんとか受け止める。


「いきなり殴ってくるな!危ないだろ!」

「うるさい!お前が悪いんだ」


こうなったらやけだ。


「怒ると可愛い顔が台無しだぞ?レイラさん」

「な、ななな、何を言っているんだ!」

「あれ、怒った?」

「お、怒ってなどいない!」


「ふーん、まあいいけどさ」

「とにかく、私に挑んだことを後悔させてやる!」


そう言うと、今度は俺に向かって蹴りを繰り出してきた。

俺はその蹴りをかわす。


「おっと、脚も長くて綺麗だな?」

「な、ななな、な、な!」

「おお、真っ赤になってる、可愛いね」

「貴様~!馬鹿にしてるのか!」

「いやいや、褒めてるんだよ」

「もう許さないぞ!覚悟しろ!」

「はいはい、どうぞ。綺麗で可憐なレイラさん」


俺は更にレイラを女として褒めちぎった。

女扱いに慣れていないらしくレイラは動揺しまくりだ。

後ろでアリルとマナが呆れているのが少し気にはなるが。


「な、な……なんだかよく分からないが!も、もう我慢の限界だ!」


そう叫ぶと、剣を抜いて本気で俺に襲いかかってきた。


「神速と言われた我が剣をくらえ!」

「……甘いぜ」


俺はその攻撃を軽く避け、逆にカウンターの様に顔面に拳をお見舞いする。


「グハッ!」

「どうだい、俺の作戦勝ちだ!」


レイラは鼻血を吹き出しながら床に倒れこむと、そのまま気を失ってしまった。俺は気絶しているレイラを見下ろしながら呟く。


「ふん、口ほどにもねえ奴だぜ」

「あの、ハイネ……」


アリルが恐る恐る話しかけてきた。

マナは後ろの方で震えている。


「やりすぎじゃない?下手したら死んじゃうわよ?」

「大丈夫だよ。死んではいないさ」

「いや、そういう問題じゃなくて」

「安心してくれ。殺してはいないから」

「……もういいわ」


「にしても、こいつもバカだなぁ。よりによって単独で追ってくるとはな」

「それは同感ね」


「てか、俺達の正体がバレたよな?」

「まあ、ルザークはその目的で私達に近づいた訳だし」


俺はアリルに小さな声で耳打ちした。


「それにしても綺麗な女の人ね、私には敵わないけど」

「ああ、確かに、アリルには負けるけどな」

「ありがと、ハイネには言われたくないけど」

「おい、どういう意味だ?」

「そのままの意味よ」


アリルと他愛もない話をしていると、先程気絶させたはずのレイラが立ち上がってきた。

しかも、その鎧は真っ赤に燃え上がっている。

その姿を見た俺は驚く。


そして、レイラは言った。

自分の本当の正体を……


「私の正体は四大精霊のうちの一人、イフリートだ」


四大精霊のうちの一体、イフリートだと!?


四大精霊ってのは、火の精霊イフリート、水の精霊ウンディーネ、風の精霊シルフ、地の精霊ノームの四体の事だ。

なんで、こんな所に!?

まさか、ただの虚言か?


「急にどうしたの、レイラ?」


アリルが驚きながら尋ねる。


「私は、レイラではない」

「ええっ!?」


レイラがそう言うと、彼女の体が光りだす。

光が消えると、そこに現れたのは本物の四大精霊イフリートだった。

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