4話 精霊の宝玉
「ワイの名前はダイナ。この村で一番の占い師や」
「………………」
「ちなみに年齢は30歳や」
「……」
「好きなタイプは巨乳のねえちゃんや」
「……」
「趣味は酒を飲む事や」
「……おい、それだけか?真面目に言え」
「いやいや、まだあるで。ワイは占い師や」
「だからそれは何回も聞いた」
「だからワイはこの村の未来も見えるんや、この村は近い内に崩壊する」
「えらく大袈裟な占いだな」
「そうよ、皆平和に過ごしてるじゃない?」
俺とアリルは真面目に聞いたことを後悔して、話半分でダイナの話を聞くことにした。
「この村にはな、この村だけの特別な力があるんや」
「特別の力?」
「ああ、この村ではな、精霊の力が宿った宝玉が受け継がれているんや」
「それがどうかしたのか?」
「その精霊の宝玉はな、名前の通り精霊の力を秘めているんや」
「精霊の力?」
「その精霊の力はな、人々に恵みを与えてくれるんや」
「なるほどな」
「その力でな、この村は栄えてきたんや」
「その話は嘘ね、そんな話聞いたこともないわ」
アリルはきっぱりと言い放った。
「いや、本当や。実はワイはこっそり見たことがあるんや。精霊の宝玉が光り輝いて、その力が村に降り注がれているところを」
「ふーん、私はあまり信じられないわ」
アリルはダイナの言葉をしきりに否定する。
「あのっ!ちょっといいですか?」
マナが話に割って入った。
「何やねん?」
「えっと、精霊の宝玉とはなんですか?」
「精霊の宝玉はな、この村に代々伝わる家宝や。昔この村出身の勇者が持ち帰ったらしいで」
「へぇ~、そうなんですね!」
マナは感心しながらダイナの話を聞いている。
「そうなんですね。あ、もう一つ聞きたい事があるんですけど」
「なんや?」
「精霊の宝玉って、今は誰が持っているんですか?」
「ああ、それはな。この村の村長や」
「村長ってこの村の山奥にいるっていう老竜の事よね」
「せや。あれはな、宝玉の守り神でもあるんや」
「守り神ですか?」
「せや。あの竜にはな、宝玉を守り続ける使命があったんや」
「精霊の宝玉を、守る?」
「せや。しかしある日、突如何者かに宝玉を奪われてしまったらしいんや」
「なんでまたそんな事になったの?」
「分からへん。ただ、宝玉はもう二度と戻ってこえへん。そう言う噂も巷じゃされとる」
「守り神である竜がいるのに奪われたんですか?」
「そうや」
「そのせいで、この村では最近災害が多くなっとる。おそらく近いうちに崩壊する」
「だったら早く取り戻さないとな」
「もちろんそうしたいんやけど、ワイ一人じゃどうしようもあらへん。じゃせめて仲間がおらんとな」
「おいおい、まさか俺達に協力しろって話じゃねーだろうな?」
嫌な予感がした俺はすぐに尋ねた。
そんな面倒事を任せられるのはまっぴらだ。
「まあそう言わずにさ、頼むわ」
ダイナは両手を合わせて頼み込んでくる。
「やだね。俺達は底辺冒険者、お前みたいな暇人と違って忙しいんだ」
「まあまあ、そう言わないでさ。この通り!」
「くどいぞ、俺達はこの村の出身でもない」
「このとおーり!」
ダイナは公衆の目の前で土下座をして頼んできた。
正直こいつの話はまだ半信半疑だ。
「はぁ……分かった、考えてやるよ。ただし、条件がある」
「な、なんやねん?何でも言ってくれや!」
「時間は無期限、俺達だけでやる、金だけ置いていけ」
「え~、それじゃあただの強盗やんけ」
「俺達は今金がなくて飯食ってねーんだよ」
「はいはい、分かりましたよ。宝玉取り戻したら飯くらい奢ったるわ」
「いや、先払いだ、早速今から食べに行くぞ」
「ひーん、あんまりや〜」
「うっさい、早く歩け」
俺はダイナの襟首を掴んで引きずりながら歩き出した。
とりあえず今日の飯代にはなるだろ。
「わ、わかったわ、ワイは先に行っとくで」
「ほら、アリルも行くぞ」
「え、え……ほんとに行くの?」
アリルも戸惑いながらついて来る。
俺は冒険者ギルドが開いている飲食店に向かった。
すると道中、マナが静かに口を開いた。
「あの、ハイネさん、アリルさん……」
「ん、どうした?」
少し寂しそうに目線を落とすマナの顔を覗き込みながら俺は尋ねた。
「ここから先は……私は一緒に……」
「一緒に?」
マナの煮え切らない態度にアリルも首を傾げて尋ねた。
「私、お二人の旅について行く事は出来ないです」