37話 シルフの戦い②
目の前に現れた大量の敵。
仮面の男の配下だろうか。
シルフはそれを確認すると同時に、魔力を解き放つ。
すると、シルフを中心に強風が吹き荒れる。
マーリンも剣を構えた。
そして、大勢の男達が一斉に襲い掛かる。
「これでもくらいな!!」
マーリンは魔力を込めた一撃を放つ。
その威力に敵は次々と倒れていく。
「ウインド・カッター」
シルフも風の精霊術で敵を切り裂き、攻撃する。
二人の猛攻に仮面の男の部下達はどんどん倒されていく。
だが、倒れた男達はゾンビのように立ち上がり、無限のように湧いてくる。
「ちっ、キリがないね!」
「そうだねぇ、でも、この人数を相手にするのはちょっと面倒かもぉ。それに仮面の男はどこだろぉ?」
シルフは辺りを見渡すが、仮面の男の姿はない。
マーリンは敵の数を数えながら言った。
「どう見ても百人以上はいるぞ。あいつの事だ。どこかに隠れているのは間違いないだろうね」
「じゃあ、探さないといけないねぇ」
「ああ、だけど、これだけの数だし。どうするか……」
二人は考え込む。
その時だった。
突然、突風に煽られる。
シルフは咄嵯に飛ばされないように木にしがみついた。
「ひゃあ!?なにこれぇ!?」
「くそ!なんだってんだ!?」
シルフは風の精霊術で自分の体を浮かせて、空中に留まる。
一方、マーリンも地面に転がりながらも何とか体勢を立て直す。
シルフとマーリンの前に現れたのはまさに仮面の男。
彼は無機質な仮面越しに笑いを浮かべた。
「これはこれは……、まさかこんな所で会うとは思いませんでしたよ、シルフ様」
仮面の男はわざとらしい敬語で話す。
そして、剣の先に魔力を集め攻撃してきた。
「ダークネス・ブレイド」
闇の刃がシルフに向かってくる。
シルフは風の精霊術でなんとか防ごうとする。
しかし、あまりの勢いに体勢が崩れた。
そこにマーリンが追いつき、攻撃を弾く。
「大丈夫か!?」
「う、うん……。ありがとぉ……」
「お礼を言う暇があったら早く立ちな!逃げるよ!」
マーリンはシルフの手を引いて逃げようとするが、目の前には仮面の男が立ち塞がる。
マーリンは仮面の男を睨みつけた。
「そこを退け、女」
「うぐっ……」
仮面の男はマーリンの顔を蹴り飛ばした。
マーリンの顔からサングラスが吹き飛んだ。
仮面の男はそのまま地面に倒れるマーリンの腹を踏みつける。
「シルフは後回しだ。まずは貴様に消えてもらう」
「させないよぉ!」
「ふん、愚かな……」
シルフは仮面の男に攻撃を仕掛けるが、簡単に避けられてしまう。
仮面の男はシルフの背後に回り込み、首筋に手刀を放った。
「く……はっ……」
シルフはその衝撃に耐えきれず意識を失った。
マーリンの目に映るのは仮面の男。
「近寄るな!……き、斬るぞ!!」
「やってみろよ。できるものならばな」
仮面の男は剣を構える。
次の瞬間、マーリンは残像を残して姿を消した。
そして、仮面の男の背後を取る。
「神速とも言われるアタイの剣、受けてみな!」
マーリンは剣を振り下ろすが、仮面の男の剣によって阻まれる。
「……遅い」
仮面の男はマーリンの首を掴み上げる。
「くっ……」
「このまま握り潰してやってもいいが……」
仮面の男は手を離した。
「げほッ……うぐ……」
マーリンは咳き込む。
「……それはこいつらに任せよう」
マーリンの周りに敵の部下がぞろぞろと集まってくる。
どうやら彼女を襲うつもりだ。
「……さ、させないよぉ!」
意識を戻したシルフは風の精霊術で部下達を吹き飛ばす。
しかし、敵はまだまだいる。
シルフは風の精霊術で竜巻を起こし、次々と敵を吸い込んでいく。
その隙にマーリンは仮面の男の後ろに回り込んだ。
「隙ありだよ、仮面野郎!」
仮面の男が振り向くと同時にマーリンは姿を消す。
マーリンは仮面の男の足元に移動し、剣を構えた。
「もらったぁ!」
マーリンは剣を振り上げたが、手応えがない。
斬ったのは残像だった。
「どこを狙っている?」
「くそ、当たらないっ……!」
マーリンは何度も斬りかかるが、全て空を切る。
仮面の男はマーリンの攻撃を全てかわす。
マーリンの動きを完璧に見切って避けていた。
「無駄だと分かっただろう、諦めるか?」
仮面の男は挑発するが、マーリンは気にせず走り続ける。
「だったらこれで終わりにしてやる」
仮面の男は剣に魔力を込めて、闇属性の魔力刃を放つ。
闇の刃はシルフに向かって飛んでくる。
シルフは風の精霊術で防ごうとしたが、闇の刃の威力が強く、風の精霊術が打ち消される。
シルフに闇の刃が命中しそうになったその時、マーリンが間に割って入り、闇の刃を受け止めた。
「ふんぬぅぅぅぅっ!」
マーリンは気合で闇の刃を押し返した。
「ほう、俺のダークネス・ブレイドを防ぐとはな。少しはできるようだな」
「アンタこそ、大したことないじゃないか」
「減らず口を叩けるのも今のうちだけだ」
仮面の男は再びダークネス・ブレイドを放った。
マーリンは闇の刃を受け止めようとしたが、闇の刃は急にマーリンを避け、背後のシルフを狙う。
「な、なにぃ!?」
シルフは気づき、咄嵯に風の結界を張って防御したが、闇の刃の威力が高く、風の結界を打ち破り、シルフに直撃した。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
シルフは悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。
シルフに襲いかかったのはそれだけではない。
仮面の男の部下達が一斉にシルフに襲い掛かった。
シルフはすぐに起き上がろうとするが、身体中に激痛が走る。
(……あぁ、これはまずいかも)
仮面の男の手下達は容赦なく攻撃を仕掛けてきた。